2015年02月24日
熟成された濃密な辛口「ゼルダの伝説 ムジュラの仮面3D」レビュー
NINTENDO64ソフト「ゼルダの伝説 ムジュラの仮面」が発売されたのは2000年4月27日、いまから15年前だ。前作「ゼルダの伝説 時のオカリナ」が1998年11月21日に発売されて、わずか1年5ヶ月でのリリースである。
「社長が訊く」でも触れられているが、延期を繰り返して長時間待たせた時のオカリナの反省があり、わずか1年で開発するために時のオカリナの3Dモデルを流用して、このムジュラの仮面が開発された。
同じ3日間を何度も繰り返すという、この作品の最大の特徴は開発期間の短縮のために生まれた。独特のシステムゆえに、不具合も多く、開発期間の短さからか謎解きに不親切な部分が多く見られ、時のオカリナと比べて評価が分かれる作品となった。好きな人はとことん好き、嫌いな人は途中で投げ出してしまうゲームだった。
ムジュラの仮面は当然発売日に買ったし、当然クリアもしたが、何度も何度もクリアした時のオカリナと比べると一歩劣ると感じていた。ダンジョンの謎解きでどうしてもわからない部分が出てきて、タイムリミットが迫って最初からやり直しになるのが苦痛に思えたし、謎が解けても「あー、そういうことか」とスッキリするのではなく「そんなのわかんねーよ」と理不尽に感じることが多かった。だから、人に薦めるのは躊躇してしまう作品だと感じていた。「面白いけど、ちょっとしんどいよ」と。
それでも、独特の雰囲気と狂気に満ちた世界や、ゼルダシリーズにしては珍しい込み入った人間ドラマは大好きだし、理不尽さを取り去ったリメイクをずっと待ち望んでいた。
ニンテンドー3DS用のリメイク開発が始まったのは、同じくリメイクである「時のオカリナ3D」が発売された半年後の2011年末。1年ちょっとで作られた作品のリメイクに3年以上の開発期間を費やしているのである。
社長が訊くの中で、オリジナル版のダメな部分をリストアップし、それを一つ一つ潰していったことが語られている。
「理不尽さは取り除くけど、歯ごたえは取り除かない」という方針で、オリジナル版の倍以上の時間をかけられた丁寧なリメイクが作られた。
結論から言うと、この3DS版は間違いなくオススメだ。今まで敬遠していた人、クリアできなかった人、クリアしたけどそれ以降遊んでいない人、何度もクリアした人、全員にお勧めできる。
実際に遊んでみると「あれ?こんなに遊びやすかったっけ?」と思える場面が度々ある。
スムーズな視点移動で、次に行くべき場所が自然と示される。Newニンテンドー3DSではCスティックで視点変更が可能だが、どうしても周りを見回したいとき以外は使わないほうがプレイしやすい。基本的に、オートカメラに従って画面の奥に向かって進めば次のイベントが起きるようになっている。
特定の人物の行動を記録する「団員手帳」はハートのかけらが得られるミニゲームやサブイベントなどにも拡張され、あらゆるフラグが記録されるようになった。そのおかげで一度クリアしたミニゲームをうっかり再プレイすることもない。
細かい部分を上げていったらきりがないが、丁寧に丁寧に理不尽さを取り除き、プレイの密度を高め、より一層濃いゲーム体験が得られるようにアレンジされている。謎が解けるまでの時間が短くはなっているが、甘くなっているわけではない。謎解きは相変わらず辛口だ。答がわからずに無駄な行動を続ける部分がなくなっただけで、謎そのものと向き合う時間は変わらないのだ。
これは「リメイク」ではなく「熟成」と呼んでいいのではないだろうか?
別の機種で動作するようにアレンジする作業ではなく、核となるエッセンスを残しながら、丁寧に雑味を取り除き、面白さに深みを与えていく作業だ。
開発に費やした3年…いや、リメイクの開発が始まるまでの10年間以上の間、ディレクターの青沼氏が「あそこはこうしておくべきだった」と悩み続けた時間が、この人を選ぶ名作を熟成させて、万人が楽しめる至高のエンターテイメントに昇華させていったのだ。
青沼さん、あなたが本当に発売したかったムジュラの仮面は取り戻せましたか?
参考:ムジュラの仮面レビュー(15年前に書いたNINTENDO64版のレビュー)