2023年06月21日

レビュー:ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム


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[本記事にはゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダムのネタバレがほんのり含まれます]

ゲームを心から楽しむためには仕事をしてお金を稼がねばならない。2023年5月12日金曜日も朝から仕事である。数年に一度のゼルダ新作発売日という大事な日に外せない予定を入れた上司を恨みつつ、木曜の仕事を終え、発売日に備えて食事を取り、風呂で体を清め、仮眠を取った。

そして、午前0時を迎えた。ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダムが発売された。
あらかじめSwitch本体にダウンロードされていたソフトを起動すると、ネットワーク越しに認証が始まり、プレイが解禁される。

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……。
………。
…………。


気づけば午前4時。ほどよい疲労感を味わいながら再びベッドに入った。
金曜の仕事を終えてすぐにハイラルに潜り、寝て、起きて、土曜の朝にハイラルに戻り、祠を開放し続け、夕方に約束していた友人との食事会を完全に忘れていてすっぽかした(本当にごめんなさい)

こうやってわりとダメな感じで幕を開けたハイラル探訪は、他の趣味の時間や睡眠時間を大量に蝕みつつ1ヶ月ほどでエンディングを迎え、祠解放を終え一区切りがついて今レビューを書いている。

発売日以降、週末はほぼハイラルで過ごしていて「これもしゴールデンウィーク前に発売されてたら連休全部取られてたなあ」と思うと、連休明けの発売は正解だったのかもしれない。マリオ映画も観に行けなかった可能性がある(ゼルダ発売前に3回観に行った)

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出来の良いチュートリアル島

前作のエンディング後の世界でなんやかんやあって、ゼルダは行方不明になり、リンクは装備を剥奪され半裸で空中に浮かぶ始まりの空島(通称チュートリアル島)に飛ばされる。

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地下遺跡で興奮するおひい様、めちゃくちゃかわいい。

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またしても脱がされる勇者様。不憫だ…。
チュートリアル島では、適切なルート誘導が施されており、次に何をすればいいのかがわかりやすい。場面転換のたびに次に向かうべき方向に自然に目が向くようにできている。
しかし、ゼルダの伝説は初代から攻略順をあえて無視する行為「シーケンスブレイク」が可能な作品であり、チュートリアル島でもそれなりに自由度が高い。

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次に進むべき場所はわかっているのだが、隠し要素を見逃したくないので寄り道をしまくる。そのうち本来の目的地がわからなくなり迷う。そして、装備が乏しくてライフも少なく、着地ダメージを緩和するパラセールももっていないので、チュートリアル島ではリンクの命が頻繁に散っていく。何度ゲームオーバーの画面を見たことか。
ゲーム中には強いボスキャラや過酷な地形もあるけど、一番死んだのはこの島かもしれない。

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おそらく、ゼルダシリーズを初めてプレイするユーザは素直に指示に従うので、そこまで酷いことにはならないだろう。
前作ブレスオブザワイルドをクリアした人は、新要素で戸惑うことはあるものの、どう突破すればいいか把握しているのでおおむね大丈夫なはず。
いちばん苦労するのは、ゼルダシリーズを遊んできたけど前作には触れてなかった人かもしれない。

自由度の高さゆえに不親切と感じる部分はあるものの、開発に時間をかけてきただけあって完成度が高い。今回の記事のためにSwitchの新ユーザを作って、チュートリアルクリアまで再プレイしたが、細かい配慮に満ち溢れていた。初回プレイ時は新作が遊べることに興奮しすぎてだいぶ見落としていたが、序盤からいい感じの伏線も結構仕込んでるのでクリアした人には再プレイをお勧めしたい(セーブデータが上書きされるので、必ず別のSwitchユーザを作成してプレイすること)

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特殊なアクションが初めて必要になる場面では本編にはない特別なUIが一時的に表示されたりするし、スタート地点から外に出るまでの間に少しずつ高くなる飛び込み台から池にジャンプさせ、着水であれば高所落下ダメージを受けないことを自然に学習させる。

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たぶん、最初にこの高さを見せたら別ルートを探したくなる。

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学習させた上でどう考えても無理だろと思わせる高さから飛び込まザルを得ない状況にもちこんで、ダイブさせ、その落下時間にめちゃくちゃかっこいいタイトル画面を表示する。すごい。

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チュートリアル島でOJTを受けたリンクは、ハイラルの大地に降り立つのだが、ここからの自由度が爆発する。リンクは前作以上にほったらかしにされる。世界を救った勇者なのに、ハイラル軍は同行兵の1人もつけないのか…。

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出会った人たちに話しかけるうちに次にやるべきミッションが次々と降ってきて、メニュー画面にずらずらと並ぶ。何をやっていいのかわからないのではなく、やることが多すぎてどうしたらいいのか分からない感じだ。とりあえずパラセールを手に入れないと高所から落下もできないし、移動が困難になるので最初はメインミッションに従った方がいい。

ゾナウ文明は開発者に滅ぼされた

前作ブレスオブザワイルドと今作ティアーズオブザキングダムの最大の違いは、ゾナウ文明がシステムに大きく組み込まれたことだろう。前作でもフィローネ地方に「ゾナウ遺跡群」があり、存在は示唆されていた。

リンクは、チュートリアルの過程でゾナウ文明の能力、ウルトラハンド・スクラビルド・トーレルーフ・モドレコを得る。これがとんでもないものだった。

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いろんな意味でとんでもないのだが、リンクにとってとんでもなく力になる以上に、プログラマーをとんでもなく苦しめ、テスターにとんでもない労働時間を強いて、デバッガーからとんでもない呪いの言葉を浴びせられただろう。ゾナウ文明はすでに滅んでいるが、おそらく任天堂の開発者に滅ぼされたに違いない。

ウルトラハンドはウルトラやばい

ウルトラハンドは、マップ上に落ちている木や石、武器、食物、ゾナウ文明のアイテム(ゾナウギア)などをなんでも遠隔で掴める。前作で金属限定で掴むことができた「マグネキャッチ」の進化系だ。
つかめるだけではなく、接着ができるようになってる。その結果、あらゆる乗り物や武器、謎のロボなどを組み上げることが可能となる。ティアーズ オブ ザ キングダム発売後にTwitter上に流れまくったトンチキマシン動画はこの能力のせいだ。

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この能力がとんでもなくて、こいつのせいであらゆる謎解きに「力技で解く」という選択肢が生まれてしまった。
例えば、ウルトラハンドが使えるようになってすぐに、レールが設置された崖をクリアする場面がある。頭上を、フックと板を組み合わせたロープウェイのような乗り物が通過し、その材料となるフックと板が目の前に転がってる。

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それを完全に無視して、手前に落ちてた板をかきあつめて接着して橋を作ってもいいのだ。

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もちろん、都合よく板が落ちているわけもなく、これも想定解の一つであるわけだが、どこまで想定しているのかわからない場面も多い。祠の謎一つに対し、多くのケースで、よく考えて閃けば分かる「正規ルート」、よく考えずに手間やテクニックでなんとかする「力技ルート」、突飛な発想で解く「トンチルート」ぐらいの3ルートは用意されていて、そのほかにバグに近い「ガチの想定外ルート」が結構出てくる。
それでも破綻なくプレイできているわけだから、デバッグ工数どうなってんだと心配になる。

くわしくは後述するが『ウルトラハンドと他の能力が同時使用できる』という真に恐ろしい側面がある。本当にやばい。マジでヤバい。

組合せ爆発スクラビルド

前作ブレスオブザワイルドには「火炎の大剣」「氷雪の剣」などの"属性武器"が存在した。火や氷の属性を備えた剣だ。同じく矢にも「炎の矢」等が存在した。今回は、属性を持つアイテムと武器を分離し、好きに結合できるようにした。
これだけ聞くと、大したことないなと思いそうになるが『すべての武器や盾にほぼ全てのアイテム"など"を結合できる』というとんでもない性質を持っている。特にアイテム"など"の部分が明らかにおかしいので、組み合わせがとんでもない数になっている。

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そもそも武器の数がかなり多い。木の枝も武器だし、鍋の蓋も盾である。付けられるアイテムも、石・木・キノコ・種子・敵のドロップ素材・ゾナウギア・一部の料理・氷・弓・他の武器・他の盾など異常に数が多い。槍に槍を付けて長い槍を作ったり、盾に看板をつけて宣伝して飛び回ることもできる。

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矢の方は武器より制約が厳しいのだが、前作の炎・氷・電気など数種類しかなかったことと比べると、異様に多い。
なお、スクラビルドした武器ですら、ウルトラハンドの素材になる。

フールプルーフの効いたトーレルーフ

トーレルーフは「天井に飛び上がって、そのまま貫通して上のフロアまで移動できる」というシンプルな能力だ。ウルトラハンドやスクラビルドよりはおとなしいと思える。

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いや、これもだいぶやばい。
すべての地形において「トーレルーフが存在すること」を前提にデザインする必要がある。
天井が高すぎたり、角度が悪いとトーレルーフは使えないことを考えるとトーレルーフで破綻する地形が容易に思いつく。ドアの外の謎を解いたら中に入れる密室が2階にあり、2階の天井が吹き抜けでトーレルーフができないとする。1階からその密室に入ると、ドアを開けるための謎解きは外にあるし、3階がないから脱出不可能になる。
脱出不可能は回避しても、想定外の攻略ルートやぶりで進行不能になる可能性は十分にある。「何も考えずにトーレルーフを使ったら手詰まりになりました」という場面は避けたい。

さらに恐ろしいことに、ウルトラハンドの存在がある。
ある程度プレイすればわかるが、ウルトラハンドはあらゆる場所で「天井を作り出す」ことができる。それを前提とした謎解きも用意されている。いくら自由度が高いといってもルートを限定しないといけない場面は多い。ウルトラハンド+トーレルーフでのルート破りをある程度の自由度を担保しつつ適切に排除しなくてはならないし、リンクを脱出不能の袋小路に入れてもいけない。
これは相当きつい仕事だっただろう。

もはや意味がわからないモドレコ

「対象物に対し、辿ってきた軌跡を一定時間戻せる能力」がモドレコだ。
実際に使うシーンを列挙するとこんな感じ。
・空から降ってくる遺跡に乗ってモドレコを使って上空に移動
・敵が投げてきた岩にモドレコを使い、投げ返す
・流れてきたイカダに乗ってモドレコを使い上流に移動
・一定方向に回るギミックの回転方向を反転させる

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まあ、便利だねぐらいの印象を受けるが、他の3能力と比べて格段におかしい。

敵や村人などを除いたウルトラハンドで干渉可能な動くものは基本的にモドレコの対象となる。リンクがモドレコを発動した時点で、対象物が一定時間の過去に移動したルートを元に戻せる。ということは、リンクの周囲にある干渉可能な全ての物体は、その移動ルートをモドレコ発動に備えてメモリ上に記録していることになる。…やばい。どういう実装してるんだろう。

この時点でも恐ろしいのだが、さらに「リンクがウルトラハンドで動かしたもの」もモドレコの対象だ。
そうするとどういうことができるか。

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リンクが足場となる物をいったん持ち上げて、しばらくして下ろす。モドレコを発動すると、足場が宙に浮く。リンクは下に回ってトーレルーフで貫通して上に登る。
もっと悪どいこともできる。
もはやなんでもありだ。

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これらの能力を組み合わせて出来ることは果てしなく多く、毎日のように奇抜なプレイを収めた動画がSNSでシェアされている。それでいてゲームを破壊するような極端なバグ技はほぼ見られない(ないわけではない)

もともと多数の要素を詰め込んでおきながら緻密なチューニングが行われていたブレスオブザワイルドに、さらに突拍子も要素を追加トッピングしておいて、破綻していないのは意味がわからない。
開発にどれだけの人数と時間を注ぎ込んだらこんな化け物みたいなソフトができるのだろうか。その膨大なリソースを適切な方向に導いて完成に漕ぎつけたのは本当にすごい。開発に関わったすべての人たちに適切な給与と休暇が与えられていることを祈るばかりだ。

マップ流用だけど手抜きじゃない

これらの異常な能力を駆使して、リンクは前作と同じサイズのハイラルを旅する。
同じサイズ、いや違う。今回は空島からスタートした。
まばらながら、ハイラル上空にはダンジョンを含めた複数の空島がある。世界は大きく広がった。

いやいや、まだ先がある。
ハイラルの地下には地底世界があるのだ。

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地上に降りた後、地下世界の存在を示唆され、実際に地底に入りマップを見たときに本当に驚いた。
この地下世界、地上と全く同じ大きさなのである。マジか

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地下はどこに行っても似たような風景で、地上よりも単調な印象を受ける。NPCもほぼおらず、イベントもあまり発生しない。
退屈な追加要素かというと、そうでもない。地下は非常に暗く、アカリバナの種で灯しながら進みつつ、地上より強力な敵とバトルを繰り返すので非常にスリリングだ。

地下はほぼスルーしてもクリアにはそれほど影響しないものの、地下探索する事でゾナウギアを動かすためのバッテリーを拡張したり、素材や強力な武器が手に入るので繰り返し潜ることになる。

複数のマップを相互に行き来させたいと思わせる仕掛けが非常にうまくできている。

ある程度プレイすると自然とわかってくることだが地上の”祠”と、地下の闇を祓うための”根”は必ず同じ座標に存在する。祠の地下には根があり、根の上には祠がある。
ある程度地下探索が進むと、地図で暗い部分の中央に根があることがわかるので、新しい根を見つけるのは比較的容易だ。根を見つけると、その上に祠があるので祠探しのヒントになる。地下と地上を往復することになる。

ゾナウギアを活用しようとしたら地下で素材集めをして空島でガチャを引くことになる。地下と上空の往復だ。

地上には洞窟という新しい概念も追加されている。

その一方で地下ばかり探索していると、周りを明るくするためのアカリバナの種が枯渇する。アカリバナの種は地上の洞窟で大量に手に入る。


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上空からダイブすることで地上を広く見回せるから、祠はかなり探しやすくなった。その代わり、祠自体が洞窟内に隠れていることも多く、洞窟を訪れる機会は多い。祠では防具の強化などに使える貴重な鉱物も入手しやすい。

上空、地上、洞窟、地底これらの異なる場所を自然に行き来する仕組みがあり、飽きがこない。ストーリーを進めなくても延々と遊べる。
ただ、各地を行き来する際のファストトラベルでロード時間が長いのは気持ちが途切れる原因となる。ハァ…もっとサクサク遊びたいなァ。

コントローラ操作はもはや限界に近い

地底で、どこにガケがあるかわからない地形を突っ走る無謀なプレイはしないので、アカリバナの種で照らしながら進んでいく際にどうしても許せないことがある。

「アイテム投げ」操作の煩雑さだ。

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アカリバナの種は矢につけて飛ばすことができる。
ただ、矢がなくなるとバトルでかなり苦戦するので絶対に枯渇させたくない。
だから、できれば矢に装着せずにアカリバナの種だけを投げたい。

アイテムを投げるためには、以下のように操作する。

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『Rボタン長押しで武器投擲モードに入り、
 そのまま十字キー上を押してアイテム選択画面を開き、
 Rボタンと十字キー上を押したまま、
 右スティックでアカリバナの種を選び、
 Rボタンは押したまま十字キー上から指を離して、
 コントローラのモーションセンサーで角度を決めて、
 Rボタンを離す』

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いや、長いわ。
RボタンをZRボタンに変えればアイテム矢と同じ操作方法なのだけど、文字にするとめっちゃわかりづらい。
長押ししやすい形状のZRと比べるとRボタンは単押しのイメージが強い上に、操作をミスってアイテムを選ばずにRボタンを離すと貴重な武器を暗黒空間に投擲してしまうから緊張感がすごい。
おかげで貴重な鉱石を付けた朽ちてない武器を奈落の底や川底に落としたことがある。

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ポーズメニューを開かずに出来ることが多すぎて、操作方法はもはや限界に近い。全てのボタンに操作が割り当てられているだけでなく、ボタンを押したまま他のボタン操作を強要されることが多い。

毎日のようにプレイしている間はそれほど大きな問題にならないだろうが、週に一度しか遊ばなかったり、数ヶ月ぶりに再プレイするようになるときっと操作を忘れる。

例えば、Lを長押ししたまま左スティック上という操作でトーレルーフが起動するが「天井の上に行くから操作は上」みたいに雑なイメージで記憶しているせいで、トーレルーフしようとして十字キー上を押してアイテム欄を開くことが頻繁に起きる。
リンクが唐突に口笛を吹いたりもする。木のお玉に焼き魚を合成したかっただけなのに。

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まあ、この辺は便利さ・快適さとのトレードオフなので、頑張って体に叩き込むしかない。減点法でこのソフトを評価しようと思った場合、多くのレビュアーから操作の快適さという要素で点を引かれることだろう。

バズる仕組み

Switchに限らず最近のゲーム機には手軽にゲーム画面を保存してSNSでシェアする仕組みがある。
今作ではそれがうまく機能しているようだ。

祠の謎解きを綺麗に突破する動画より、大失敗する動画の方がバズるし、ボス敵を正攻法で倒す場面より、トンチキマシンで雑魚を蹂躙する動画のほうがウケがいい。

遊んでいない人たちには、珍妙なショートムービーばかり見せられてさぞかし奇妙なゲームと思われていることだろう。

登場キャラもスクショ映えする人たちが多くて画像シェアも捗る。
唐突だが、個人的ティアーズオブザキングダムNPC名言TOP3をあげたい。

3位:サラバードさん「サラバード!」
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別れの挨拶、サラバード。

この鳥はサラバードさんではないが、サラバードさんと呼んでる。周りの人たちもサラバードさんかサラバードくんと呼んでる。もう、サラバードさんでいいでしょ、こいつ。

ちなみにサラバードさんは英語版だと別れ際にSoar longと言う。
※Soar:(鳥などが)飛翔する so long:またね

2位:カバンダ「許されザル事!」

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ハイラル中に建築会社エノキダ工務店の社長看板を立てようとしているが一度も成功しておらず、毎回リンクの力を借りる上に手伝いに失敗するとキレるエノキダ社員のヤベー奴。社長自身もゲームに登場するが、同僚であるはずの社員含め全員カバンダに1ミリも言及しないので、こいつがエノキダ工務店社員という話も本当かどうか疑われている。

看板立て手伝いのお礼でおにぎりをくれるが、本人の素性があまりにも怪しいせいで「あいつが握った茶色いおにぎり食べるの無理…」と露骨な嫌悪感を表す勇者も一部に存在する。

1位:疲れたコログ「もう疲れちゃって 全然動けなくてェ…」

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言わずと知れたハイラルのアイドル、はぐれコログ。
仲間の元に運んで欲しいのだけど、はっきりと要求を言わずに疲れている、動けないと主張するだけの奥ゆかしい性格のためみんなから愛され、一部の勇者からはウルトラハンドで組み上げるトンチキマシンの部品としか思われていない。

運ぶのが地味に面倒だし、あとでなんか面白い用途があるかもしれないと思い、自分は彼らを見かけるたびにマップ上にスタンプを貼って放置している。

ゼルダ史上最高のストーリー

本作のストーリーはかなり良い。
前作をプレイしていることは前提としつつも、それほど大きなつながりはなく単体でも楽しめる。前提条件を踏まえたいなら、ネタバレ上等の公式ストーリー紹介動画を見るのも良い。

SNSでシェアされる珍妙な映像しか見ていない未プレイ勢には誤解されそうだが、本筋は非常にシリアスだ。

リンクの元から姿を消したゼルダ姫の捜索を主軸に、ガノンドルフの影響で荒廃した故郷を救う英傑たちの物語が絡み合う。

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正直なところ、プレイ時間に対してシナリオのボリュームはかなり少ない。数十分で読める短編小説レベルだ。

しかし、祠開放やコログ探しなどで長時間プレイして、その合間に少しずつ物語が進行していくのは連載漫画の最新話を待つ心境に近い。
その上、いくつかのムービーで綴られる過去のエピソードはプレイヤの攻略順によっては順番が無茶苦茶になる。…というか、よほどうまくやらないと順番は入れ替わる。

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ミッシングリンクが少しずつつながり、リンクと離別した後のゼルダがどのような運命を辿ったのか明らかになっていく。
バラバラに語られたのちに、最後に全てがつながり一つの物語になる。
プレイヤごとに印象が変わっていく。ゼルダシリーズを象徴するような仕掛けだ。

こういった見せ方をするためか、断片化された一つ一つのエピソードはかなり短い。
物語の複雑さや分量を増すためには、どうしても攻略順の自由度が犠牲になる。そういった物語を求める人たちには不向きなゲームだ。

今作で提供されるのは、自由度を保つためにコンパクトでシンプルだが、高い満足度が得られるインパクトの強い物語である。

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終盤には組み込まれた伏線が次々と繋がっていく。
自分は「マジか!!!!」と思わず声が出てしばらくコントローラが手につかなかった。
完全にやられた。

今まで、自分の中でゼルダシリーズの最高のシナリオはずっと「ゼルダの伝説 夢をみる島」だったが、夢をみる島は残念ながら2位になってしまった。

ゼルダはゼルダを超えられるか

正直、ブレスオブザワイルド続編の発表があった時に「前作のリソースを流用することで低コストで新作を作る」ものだと誤解していた。
実際に蓋を開けると、ティアーズオブザキングダムはコストが浮いたはずなのに、余った開発リソースをそのままゲームのブラッシュアップに使っているようだった。
普通のゲーム開発ではもう開発終了でいいでしょというレベルまで作り上げてから、さらに作り込みをつづけていたように感じる。
そうでないと、リンクの新能力がほとんど破綻せずに同時に使用できる気持ち悪いレベルの完成度の説明がつかない。

ゼルダシリーズ以外にも多彩なIPを持ち、ソフトとハードを一体化した体験を提供する唯一無二のゲーム会社だからできたソフトかもしれない。

単なるユーザがこれだけ衝撃を受けているのだから、同業者はこのソフトをプレイしてきっと想像もできないぐらい複雑な感情が芽生えているだろう。
心が折られているかもしれないし、もっとすごいものを作ってやると奮起しているかもしれない。

おそらく、一番衝撃を受けているのはコーエーテクモの無双チームだろう。
最近の流れからするとティアーズオブザキングダムをベースにしたゼルダ無双が水面下で開発されているに違いない。このソフトをプレイした人たちを満足させる無双を作るにはどうしたらいいか、いまごろ頭を抱えているかもしれない。

そして、任天堂の中でも次回作へのプランに頭を悩ませていることだろう。おそらく近いうちに姿を表すであろうSwitchの次世代期向けにゼルダ新作は絶対に必要だ。
どうやったらティアーズオブザキングダムを超えられるか。
どうやったらあの世界を味わった人たちを楽しませられるか。
ハイラルと同じ大きさの京都市の片隅で彼らが意見を出し合っている。

いったい次はどんなゼルダを見せてくれるのだろうか。
そう思いながら、コログを探しにハイラルに帰るとしよう。

サラバード!
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