軽い気持ちで買ってみたルービックキューブが深い沼だった
11月に「ルービックキューブ スピードキューブアドバンス」という商品が発売された。
ルービックキューブは幼い頃に少しだけ触った記憶があるが、おそらく当時は1面すら完成できていないだろう。要は完全なる初心者である。
世界記録更新のニュースなどを見て、ものすごいスピードでキューブを揃えるのがかっこいいなと思ったことはあるが、手を出そうとしたことはなく、たまたまPVを見て「ちょっとだけやってみようかな」と購入したのである。
それから2ヶ月ほど経過して今はご覧の有様である。
なお、1月現在完成までのタイムは平均で50秒台。自己ベストは単発32秒台、5回平均(AO5※)だと46秒がベスト。
※5回挑戦して上下1回ずつは除いた中央の3回の平均
始めて2ヶ月にしてはそこそこ頑張ってると思うが、ガチ勢は20秒を平気で切るので中級者レベルだと思う。
今回はルービックキューブという沼について、初心者から中級者にレベルアップした程度の素人が解説していきたいと思う。
スピードキュービングとは
ルービックキューブがどういうものかについてはいまさらくわしく説明する必要はないだろう。9分割された6色6面の立方体をぐるぐる回転させて再び元の状態に戻すパズルだ。
単純に完成を目指すだけでなく、タイムを競うスピードキュービングという概念がある。
完成までの手順は複数のステップがあり、状況に応じて適切な操作を行う必要があるが、初期状態がランダムなので状況把握能力とその状況に応じた操作手順をどれだけ把握しているか、どれだけ早く回せるかがタイムに強く影響する。
ゲーマー的な表現をすると、スピードキュービングは「ローグライト系アクションゲームの100%クリアRTA」的な競技だ。
盤面を読む能力や、記憶する手順の量は経験の蓄積で強化していくしかないが、回転の速さに関してはハードウェア依存の部分がそこそこ大きい。つまり、軽くて、回しやすくて、適切な角度でピタッと止まるキューブを買えば確実にタイムが縮む。
そして、戦績がイマイチなゲーマーがゲーミングデバイスに金を突っ込むのと同じ現象がルービックキューブでも発生するのである。
高性能キューブはやばい
2ヶ月の鍛錬の結果、たどり着いたのが『GAN15 Maglev UV』だ。約1万円のフラグシップモデルである。
めちゃ軽いし、なめらかに回転し、磁力の力でピタッと止まるし、表面もツルツルして触り心地が良い。とてもいい買い物をした。大量についているカスタマイズ用のパーツは使わずデフォルト設定で使っている。
最初に買った『ルービックキューブ スピードキューブアドバンス』は、ルービックキューブの公式ライセンス品なので「ルービックキューブ」の名称がついている。一方、GAN15は非ライセンス品なので商品説明でも単に「キューブ」と称している。
非ライセンス品とはいえ、GANCUBEは長年改良を重ねており、先日10周年モデルが発売されたぐらいの歴史がある。近年の世界記録もGANCUBEで達成されたものが数多くある。
60g足らずのキューブに1万円分の価値を盛り込んでいるだけあって、わりととんでもない技術が使われている。回転の軽さを調整する機構の洗練されっぷりとか半端ない。
非ライセンスメーカーがスピードキューバーと向きあい、技術の更新に勤しんでいる間、公式ルービックキューブはスピードキュービングから目を背けていたが、ようやく競技にも使えるキューブを出してきたという状況のようだ。
ただ、高性能モデルを出すまでには至らず、4000円という中途半端なモデルになっている。使われている技術としては3000円代の廉価版競技用キューブと同等のようだ。公式ロゴがある分少し割高といえる(値引きされて今は3,000円以下で売られているが)
いいキューブを使えばいいタイムが出るかというと、キューブの質が影響するのはせいぜい1−2割程度で基本的な技術を身につけるべくひたすら練習する日々を過ごしている。
覚えることが多すぎる
いま、私は一般的な『CFOP』という手法でキューブを回している。
ざっくり説明すると、CFOPでは以下の4つの手順を踏む。
[CROSS]手に持った時に一番下になる層の辺の部分と2層目の中央を揃える
[F2L]1層目の角を揃えながら2層目の側面を揃える
[OLL]3層目の上面を揃える
[PLL]3層目の側面を整える
CFOPの習得レベルで操作法は異なり、今の私はOLLとPLLを一発で解くことができず、それぞれ2回ずつの操作に分けている。1回の操作で完結しないので手数が増えて時間がかかるが、覚えることが少なくて簡単だからだ。
以前は4−5回操作していたのでこれでもだいぶ頑張ったつもりだ。
タイムを短縮するために必要な要素は以下の3つに集約される。
・判断する時間を短くする
・回転する回数(手数)を減らす
・1秒あたりの手数を増やす
例えば、左折機能しかないラジコンカーなら、左折の操作だけ覚えれば良くて3回左折すれば右折できる。右折機能を追加すると1回で右折できるが、右折か左折か判断する時間が必要になる。
スピードキュービングの恐ろしいところは、その機能追加が際限なく「右折したあと次の角で左折して加速する」専用ボタンみたいなのが数十個存在するのである。覚えることが数十倍に増え、どのボタンを押せばいいかの判断も一気に難しくなる。覚えることを増やしただけだと宝の持ち腐れで、状況判断能力も上げていかないとタイムは縮まらない。
一般的な基本手順としては、F2Lで41種類、OLLで57種類、PLLで21種類ある。さらに、その数に含まれない応用手順なども多数存在する。上級者はそれを瞬間的に適切に選択して記憶通りにキューブを回すのである。
格ゲーマーには「投げ抜けコマンドが57種類以上あって、それぞれのコマンドが4−6連コンボぐらいの複雑さ」といえばヤバさが伝わるだろうか。さらにOLLとPLLを1手順で処理する1LLLという超上級者向け劇ヤバテクニックもあって、こちらは3,915種類あるらしい。怖っ。
初心者キューバーを増やしたい
昭和の時代に大ブームを起こしたあとで、しばらく下火になっていたようだが、今はルービックキューブを趣味とするにはいい時代になっている。前述の性能の良いキューブの登場もあるが、ネット上にはルービックキューブの愛好家が多くいて、解説記事や動画が多数ある。習得レベルに応じたテクニックを選んで、少しずつ新しい技を覚えていくことで、記録を伸ばしていける。
ただ、情報を発信する人たちは10秒を切る上級者やその予備軍ばかりで、1分を切る程度の中級者やようやく6面完成できるようになった初心者の発信はほとんど見かけない。上級者たちの「これぐらいできて当然」のような雰囲気を感じ取ると心が折れそうだが、自分と同レベルの愛好家もそこそこいるだろうと思い、そういういった人達がもっと増えるように、今回の記事を書くことにした。
自分は買った初日に超初心者向けのシンプルな手順を覚えて、数時間後には何も見ずに3分で6面完成できるようになった。翌日には更に手順を覚えて2分を切ることができた。最初は目に見えて記録が伸びるので本当に楽しい。
高性能キューブは触っていて心地が良くて、少しでも暇があるとずっと触ってしまう。
普段はタイムも図らずに、Splatoonの合間のマッチング待ち時間などで中断を挟みながら6面揃えたり崩したりを繰り返している。
スマートキューブがすごい
GAN15を買う前は『GAN 356 iCarry S』を使っていた。GAN15より重く、回転も滑らかではないが、GAN15にはない大きな特徴がある。電池を内蔵していて、スマホと連動するスマートキューブなのだ。
GAN 356 iCarry S, 公式 競技用 3x3 スマートキューブ
スマートキューブは専用のアプリとBluetooth接続すると、各キューブの位置をアプリがリアルタイムに取得できる便利なキューブだ。
スピードキューブ用の計測アプリは画面をタップして計測を開始し、完成後に再度タップする仕様のものがほとんどだが、スマートキューブと連動すれば、回転し始めれば自動的にタイム計測が始まり、6面完成時点で自動的にタイマーストップする。
どのタイミングでどの向きに回転したかをすべて記録しているので、過去の記録を動画でリプレイ再生することもできてしまう。CFOPの各ステップで、それぞれ何秒ずつ、何ステップずつ回したかもわかる。便利すぎる。
週ごとに世界・アジア・日本でのランキングが集計されたり、同程度の実力者と対戦もできる。
とても便利だし楽しいのだが、スマートキューブを買って日本語対応していないアプリのランキングに毎週参戦するような国内の愛好家はほぼ上級者なので、国内ランキングでは毎回ほぼ最下位になってだいぶつらい。もっと初心者・中級者も参戦してほしい。
のんびり長く付き合っていこう
記録を伸ばすためにはこれから多くの手順を覚えていかなければいけないが、おそらく一気に覚えても定着しないだろう。少しずつ覚えてキューブの状態を見たら指が勝手に動くようにしていかねばいけない。
そのうち記録会にも参加してみたいし、高性能キューブの新製品が出たら買ってしまうだろうし、4x4x4などの別のキューブにも手を出すかもしれない。
数分のスキマ時間があれば楽しめる趣味だし、しばらくキューブを触っていないと手順を忘れそうなので毎日少しずつ遊んでいこうと思う。
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