「ムジュラの仮面」は当初、「外伝」と呼ばれていただけあってゼルダシリーズの王道の作品ではない。至る所でゼルダシリーズらしからぬ場面が見られる。前作「時のオカリナ」で使用された基本システムを継承して開発期間を短くする反面、3日間システムやお面システムなど画期的な手法でゲームを作り上げている。前作は大ヒットし、素晴らしいゲームだったがムジュラの仮面はどうだったのだろうか。

プレイしていて気になった点がいくつかある。まず、前作をプレイしていないと困難だと思われる仕掛けが随所で見られたこと。前作では初めての3Dゼルダということでゲームの序盤にプレイヤを導くような展開になっていたが、今回は前作をプレイしたことを前提としているように思えるほどヒントが少ない。また、前作に登場したキャラクターが多数出演し、初めてプレイする人には分からないネタが多数ちりばめられてる。しかし、これは必ずしもデメリットとは思わない。前作をクリアしていれば序盤から歯ごたえのあるイベントがこなせるし、前作から繋がるような感覚も楽しめる。ムジュラの仮面は前作から明らかに進化している。しかし、万人に勧められるものではない。前作をクリアした人ならば間違いなく楽しめるだろうが。

開発期間が比較的短かったためか作り込みの甘さも随所で見られた。特定のイベントで条件がそろうとフリーズしてしまうバグや、不親切すぎる仕掛け、時を操作することによる話の矛盾。ボス戦の難易度設定ももう少し改善するべきだと思う。また、何度も見ることになるムービーで、スキップできるものとスキップできないものがあるのもプレイ中にストレスがたまる。

また、苦労に対しての報酬も少ないように思える。やたらと難易度の高いサブイベントやミニゲームがあるが、それをクリアしても大した利益がない。いつまでも飽きさせないようにするためかもしれないがミニゲームが多すぎるようにも思える。これは前作のスタルチュラ集めでも感じた。達成感はあるだろうがそれで良かったのだろうか。

このゲームの根幹となる3日間システム、これは画期的で良いと思う。しかし、実際にプレイすると現実の時間で2時間ほど連続して遊ばなくてはならない。ちょっとした時間に少しずつクリアしていく事が出来ないのは苦しい。下手すれば難易度の高いダンジョンに何度も挑戦する羽目になる。もう少し気軽さが欲しかったが、このソフトのテーマである「怖さ」を考えるとしかたがないのかもしれない。迫り来る時間の中で謎を解いていく怖さはなかなか味わえるものではない。

前作をプレイしていることを前提としたゲーム内容、難易度の高いアクション、独特のシステム、完全クリア(アイテムコンプリート)までの長く苦しい道のり、どれをとってもこのソフトはマニアックだといえる。100点満点のソフトではない。ただし、楽しめる人には十分すぎるほど楽しめる。そんなソフトだ。

通常、大作シリーズの続編となるとシリーズのイメージを崩さないように、無難な作りになりがちだが前作の基本システムをそのまま受け継ぐことで開発期間を抑え、大幅なアレンジを加えるやり方も新しい手法として認められるべきだろう。100%のソフトを長い開発期間をかけて延期したりしながら発売するよりも、80%で良いからユーザーを待たせずに発売していくことも大切だと思う。そんな意味でムジュラの仮面は任天堂の新しい方向性を示した良いソフトだと言えるだろう。

2000/06/08