任天堂の決算情報と初動売上から、Switch2が普通に買える時期を予測する
Switch2が発売され、一つ前の記事で書いたように私は運よく購入することができ、この1週間毎日楽しんでいる。
Switch2発売に寄せて:信頼の延長線上にある静かな革命 | N-Styles
だが、多くの人が入手できずに悔しい思いをした。
いつになったらSwitch2が普通に買えるようになるだろうか。
過去の販売傾向や初動売上、決算資料などから予測してみよう。
数字が多く、分かりづらい記事になりそうだがご容赦いただきたい。
!注意!
本記事における数字は、幅のある予測値と幅のある予測値を複数回かけ合わせたものなので、実際のものと大幅に乖離している可能性があります。
まず、前提条件としていくつかの数字を挙げていこう。
発売4日間の世界売上:350万台(任天堂プレスリリース)
発売4日間の国内売上(推定値):94万7931台(ファミ通調べ)
初年度(2026年3月末まで)売上見込:1500万台(決算説明資料)
2025年3月末時点の棚卸資産:4,864億円(決算短信)
4日間で350万台はすごい数字だし、推定値とはいえ国内の約95万台もとんでもない数字だ。
これでもなお、欲しい人たちの手元には行き渡っていないわけで、はやく普通に店頭で買えるようになって欲しいものだ。
いつごろ店頭で普通に買えるのか、その予測をするに当たって、「棚卸資産」が重要な意味を持つ。
棚卸資産ってなんだ?
棚卸資産という言葉に聞き慣れない人も多いかもしれない。
企業が保有する売るための在庫の金額で、任天堂の場合は、ゲーム機本体やソフト、周辺機器などがこれに含まれる。完成品だけではなく、製造途中のものや原材料なども含まれる。
つまり、この数字が多ければ多いほど任天堂が在庫を多く抱えていることが分かり、それがSwitch2の製造・販売の傾向を読み解くヒントになるわけである。
2024年3月決算での棚卸資産は1560億であり、1年で+212%の増加(要するに1年で約3倍に増えている)という状態だった。
棚卸資産の中には、旧ハードや周辺機器、ソフト等も含まれるため、すべてがSwitch2本体のものとはならないが、明らかにSwitch2の在庫分で増えている。また、2024年度末と2025年度末を比較した際に販売台数が減少傾向にあるSwitch用の在庫は減少していると思われるので、Switch2およびその関連商品の在庫が多くを占めていることは間違いない。
3月末に何台の在庫があったのか?
4,864億円のどれくらいの割合がSwitch2本体になるのかの推測は難しいが、周辺機器は原価がそれほど高くないだろうし、量も少ないから、仮に本体が5-6割を占めると推測すると2500-3000億円ぐらいのSwitch2本体在庫が3月時点であったことになる。
それで、3000億円分のSwitch2って何台なの?という疑問が出てくるが、こちらも難しい。
1台あたりの製造原価で割れば良いのだけど、製造原価はトップシークレットだし、世に出回ってる予想も結構幅がある。
販売価格を超える製造原価(逆ザヤ)はない、国内版でも利益は出ている、という推測から5万円以下と予想し、4-4.5万円の幅を持って推測を行うこととする。
先程のSwitch2在庫の2500-3000億とかけ合わせると555万台~750万台の本体在庫を2025年3月時点で持った状態だったと予測される。
2500億円・1台あたり4.5万円の場合:555万台
3000億円・1台あたり4万円の場合:750万台
発売日には何台の在庫があったのか?
実際は発売日までに2ヶ月が経過しているから、さらに在庫は増えているはずだ。そこも推測したい。
Switch2の本格的な製造を始めた時期を予想し、3月までの月数で割って2ヶ月をかければ増加分の数字が出る。
過去の傾向を見るために、最近3年ほどの棚卸資産の履歴を見てみる。
四半期 | 棚卸資産 | 前四半期比 |
---|---|---|
2022年06月 | 2562億 | +25.5% |
2022年09月 | 2953億 | +15.3% |
2022年12月 | 2038億 | -31% |
2023年03月 | 2586億 | +26.9% |
2023年06月 | 2628億 | +1.6% |
2023年09月 | 3173億 | +20.8% |
2023年12月 | 1736億 | -45.3% |
2024年03月 | 1560億 | -10.1% |
2024年06月 | 2129億 | +36.5% |
2024年09月 | 2642億 | +24.1% |
2024年12月 | 3265億 | +23.6% |
2025年03月 | 4864億 | +49% |
過去3年分の任天堂の棚卸資産の推移。青字は増加、赤字は減少を示している。
引用元:https://irbank.net/E02367/Inventories-Assets
過去データを見ると年末商戦で在庫を放出したあとの12月末は9月より数字を減らす傾向があるのに、今回は逆に増えている。
2024年末にはすでに製造ないしは部品調達を始めていたと思われる。
こちらも幅のある予想をするしかない。早めの製造として8月頭に製造を始めていたとすれば、8ヶ月で3月末までの在庫を作り上げたことになる。年末近くの10月開始ならば、6ヶ月だ。
8月製造開始と10月製造開始で予測するとこうなる。
8月製造開始の場合:694万台~938万台 (月産 69-94万台)
10月製造開始の場合:741万台~1000万台 (月産 93-125万台)
この予想の範囲内なら、700万台から1000万台ぐらいが6月5日の発売日に用意されていたことになる。
これは、製造開始からずっと毎月同じ数だけ生産した場合の予測であり、実際はそこまで単純ではないだろう。普通は段々と製造のペースが上がっていくものだし、製造ペースが上がるとその分在庫は増える。
初年度の出荷台数予測が1500万台なので、1年で生産すると1ヶ月あたり125万台となる。製造の限界ではなく増産も可能と決算後の質疑応答で答えているので、125万台/月以上の生産は可能だろう。
では、いつ買えるのか?
さて、Switch2は最初の4日間で350万台売れた。
それと比べると発売日時点で任天堂が抱える在庫(の推測値)は2倍以上ある。
発売初週は物流負荷や初期出荷分の販売戦略的制限など、複合要因により350万台にとどまった可能性があり、いきなり在庫を全部放出したわけではない。まだ初回出荷と同じぐらいか、それ以上の在庫があるはずだ。
在庫があるということは、しばらくは月産台数の限界を超えた出荷が可能ということになる。
ただ、年末商戦は発売日以上に売れる傾向にあるから、そのためにしばらく在庫を確保する可能性もあり、その場合は在庫数を維持したまま月産台数と同じぐらいの出荷台数となるだろう。
また、出荷前は作ったら作った分だけ倉庫を埋めることになり倉庫のキャパシティが製造数を抑える要因となりうる。
発売日以降は倉庫の在庫はどんどん出ていくので、製造ペースは上がることだろう。
現状で、150万台ぐらいは製造できるのではないだろうか。
世界販売台数の350万台に対して、日本国内で100万台が割り当てられていた。約29%の比率だ。
国内販売台数は正式発表がなく、ファミ通調べの"予想値”となので、実際は多少数字が前後すると思われる。ただ、過去の任天堂ハードの海外・国内の比率から大幅に乖離している数字ではないのである程度の妥当性はあるだろう。
国内に30%が割り当てられているとなると、月産150万台に対して45万台となる。
海外では国内ほどは熱狂的な品薄状態ではないと言われており、地域によっては予約なしで買えたという情報も見かける。そうなると、日本に向けた出荷比率は多少増えるかもしれない。
仮に発売日以降に毎月50万台ずつ国内出荷があるとすれば、6月末には150万人、7月には200万人、8月には250万人がSwitch2を手にすることになる。12月末には550万人だが、年末年始には出荷量を増やすだろうから、年内に600万台はいけるかもしれない。
さすがにこの段階まで来れば、初回申し込みに殺到したとされる約220万人全員の手元にSwitch2が届いているだろう。おそらく夏から秋にかけて220万人のほぼ全員に行き渡り、「プレイ時間50時間以上・有料会員1年以上」の制限は取り除かれるのではないだろうか。
いつか訪れる熱狂の終わり
ただ、Switch2を欲しがっている人たちは220万人だけではなく、その数倍いることだろう。
品薄が話題になれば、欲しがる人達も増えてくる。彼らの手元に届くのはどれくらい先になるだろうか。
先が見通せない話ではあるが、明るい材料もある。
Switch2の品薄は、半導体不足などの製造時の問題に起因するものではなく「需要が多いことを見込んで大規模生産体制を組んだにも関わらず、予想以上に需要があった」のが原因であることだ。
長く続いたPlayStation5の品薄とは異なり、十分に生産・出荷していけばかならず解消される問題なのである。
任天堂自身も「ハードウェアの販売価格も高く、仮に発売日付近で勢いがあったとしても、その勢いを今年の年末商戦以降も長期的に継続させることは容易ではないと考えています」といっている。
5万円のゲームハードを買える人はそう多くはない。かつてのSwitchやニンテンドーDSのように、品薄状態が長期化することはないだろう。
生産・出荷増と話題の沈静化に伴い、この熱狂は次第に収まっていく。おそらく1年以上続くことはないのではないかと思う。
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