2020年09月28日

「2.5次元の誘惑」がとにかく熱い


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この記事は、集英社のマンガ配信プラットフォームのジャンプ+で毎週土曜日に掲載されている「2.5次元の誘惑」が今最高に面白いのですぐに全話読めという内容であり、最新話までのネタバレが含まれる。できれば単行本を買った上でその後の連載分も全部読んでこの記事を読んで欲しいところではあるが、ネタバレによって面白さを大きく損うタイプの作品ではないので、どちらが先でもいい。

2.5次元の誘惑(リリサ)とは

この「2.5次元の誘惑」は橋本悠さんの初連載作品(※詳しくは後述)で、「誘惑」の部分には「リリサ」のルビがつく。高校2年生の主人公奥村が部長を務める所属一名の漫研に、エロいコスプレROMを作るのが夢だというヒロインの天乃リリサが訪れるところから始まる。

Webで冒頭2話が読めるから、まずは読んで欲しい…と言いたいところだが、先入観なしにこれを読むと間違いなく誤解されてしまう。サムネイルの時点でかなりアウトな感じだ。


ご覧の通り、お色気要素が強すぎるのだ。
ちなみに単行本ではWeb版での修正がなくなり隠された部分が見えていたりするのだが、iOS版アプリではWebより強い修正が入っていてエピソードによっては完全に真っ白のコマもあって何が起きているのかわからない場面もある。
22話あたりから明らかなお色気シーンが減り、最近のエピソードではiOS基準でOKの描写になっている。

修正についてわざわざ説明したのは意味があって、序盤はiOS基準のギリギリラインを狙ってお色気目的の読者を増やそうとしていたのに、最近はお色気要素を削っても十分読者を楽しめるように生まれ変わった作品なのだ。

単行本で言うと1-2巻がお色気要素多めで、3巻から大化けし、ラブコメハーレム系漫画からコスプレバトル漫画になる。コスプレバトルとは何だと言われても上手く説明できないが、むちゃくちゃ熱いバトルなのだからコスプレバトルとしか言いようがない。コスプレ四天王の一人753(なごみ)をリリサが打ち負かす4巻のクライマックスには何度も泣いた。

4巻の展開が好きすぎて、この作品で更に上を行く熱い展開になることはないだろうと思っていたのだが、裏切られた。最新58話(おそらく8巻収録)がめちゃくちゃ熱くて最高だったのだ。58話単体でも十分熱意は伝わるので、少しでも興味を覚えたのなら読んで欲しい。

58話の衝撃

46話から奥村たちに接触してきた新人コスプレイヤー喜咲アリアをめぐるエピソードが続いている。その中で、奥村がオタクになるきっかけとなった漫画と、その作者キサキヨウが登場する。紆余曲折を経て、夏コミ会場で奥村とキサキヨウが出会う。

自らダメな漫画と呼び、他の作品のパクリだと言われ、2巻で打ち切られ、ペンネームを捨て、10年間苦しんできた作者と、その作品のファンの対峙。「もう忘れたいんだ」と嘆く作者に奥村が啖呵を切る。

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2.5次元の誘惑(橋本悠) 58話12ページより

創作物は、世に出た時点で作者のものではなくなる。では、読者のものなのか?それも違う、作品は自立した世界だ。作品に対する感情は、ほかの誰にも干渉されるものではない。

創作に関わるすべての人に読んで欲しい。ネガティブな感想に心を悩ませることがあったとしても、それは作者ではなく生み出された世界に対する感想に過ぎないという救いの言葉だ。一方で、生み出した世界にどれだけ納得がいかなくても後から消し去ることはできないという残酷さも兼ね備えている。

創作者とそのファンの関係性だけでも十分熱いのだが、ずっとこの作品を読んできた人たちには、もう一つの熱さがある。

6巻まではコスプレイヤー同士でコスプレに関わる悩みをコスプレで解決する話で、コスプレイヤーではない奥村は、主人公でありながら、物語を円滑にすすめるための便利な舞台装置に過ぎなかった。

リリサのコスプレは読者の知らない架空の作品の登場人物で、そのコスプレがどれほどのものか全くわからないが、架空作品のファンである奥村のリアクションを通してコスプレやポーズのクオリティの高さを知ることができる。
コスプレを描く中で不必要な恋愛要素を減らすために奥村は(コスプレや一部のシーン除いて)女性に無関心で、まるで去勢されたような存在だ。
熱い言葉でほかのキャラクターを後押しする事はあっても全面に出てくることがない。主人公なのに。

その流れのなかでこの58話だ。

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2.5次元の誘惑(橋本悠) 58話11ページより

58話のサブタイトルは「主人公の物語」
いままで引き立て役だった奥村が、自分の人生の主人公として、人生を変えた相手に立ち向かった回にこれ以上のサブタイトルはないだろう。

今まで58話が最高と言ったが、59話も相当にやばそうだ。
58話の冒頭の柱にバッチリ書かれているのでネタバレするが、最後に出てきた女性はキサキ先生が離婚後にずっと会えていない娘だ。しかも、黒歴史だの忘れたいだの言っていた作品のヒロインのコスプレである。57話で母親から伝言を託される伏線まで用意されている。次回更新を楽しみにしたい。

せっかく2.5次元の誘惑の記事を書くので、ついでにお気に入りのシーンをいくつか紹介したい。

14話「目線の行方」

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2.5次元の誘惑(橋本悠) 14話10ページより

初めて人前でコスプレをするリリサを見たカメラマンのセリフ。作品のことはわからないが熱意はめちゃくちゃ伝わってくる。
大勢のカメラマンに囲まれて、カメラ目線ができず、撮影向きではないポーズで、モブには「初心者」「撮影に慣れていない」と言われる中で、彼だけがリリサの実力を把握するシーン。
この後、最高の笑顔で奥村に目線を送る。それで、このサブタイトル。

24話「コスプレを愛してる?」

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2.5次元の誘惑(橋本悠) 24話12ページより

企業からのオファーを受けてイベントでコスプレをするプロレイヤー753が、新作ゲームの知らないキャラのコスプレをすることに対し、純粋な興味で「知らないキャラのコスプレができるのか」と尋ねたリリサに対し、(煽りだと誤解して)返した返答。熱い。
この結果、コスプレバトルが始まるわけだ(バトルだと思ってるのは753だけ)
ちなみに753さんはかなり大胆なファッションをしているが、これはコスプレ前の普段着。単行本収録のおまけページで入浴中も白黒ヘアーなので地毛っぽい。やばい。

29話「ライバル」〜33話「三叉路」

好きなシーンをチョイスするつもりだったが、この辺は全ページが大好きなのでまとめて紹介。何度読んでも泣くし、思い出しただけでも泣ける。

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2.5次元の誘惑(橋本悠) 31話10ページより

コスプレを愛している753は、誹謗中傷からコスプレを楽しめなくなり、コスプレを楽しむレイヤーを憎らしく思うようになっていた。一方的にバトルをふっかけたリリサが仲間の助けを借りて完全復活し、全身でコスプレを楽しんでいる姿を見てコスプレの楽しさを思い出したシーン。
バトル漫画で言うと四天王の一人に致命傷を受けながらも、別の四天王や仲間の力で復活して打ち倒したシーンだ。バトル漫画なので当然この後仲間になる。

31話は見開きが最高なので電子書籍で読む人はスマホではなくPCかタブレットで見よう。
絵の力がものすごくて、30話まで大勢のカメラマンに囲まれてプロレイヤーとしての笑顔を振りまいていた753がリリサからの刺激を受けてプロレイヤーから過去の自分に戻った直後、めちゃくちゃ可愛い笑顔になる。その後のモノローグが「可愛くなった私を見て!!」だ。最高だ。

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2.5次元の誘惑(橋本悠) 33話4ページより

バトルを終えたあとのマネージャーと753の会話シーン。
すばらしい…。ちなみに、4巻おまけページにマネージャと753の日常が載ってるので単行本も読もう。

3巻番外編「激エロROMが作りたい」(単行本おまけページ)

単行本のみの収録部分なので、内容の紹介は避ける。 タイトルは最悪に近い。単行本限定なのでエロ要素もある。 だが、ある登場人物の秘密が描かれており、これを知っているか知らないかで本編の行動の意味が大きく変わってしまう。これを読んだ後だと33話がやばい。必読。

ほかにも、部活動の成果としてコスプレ写真を公表するかどうか葛藤する教師のエピソード35話「大人の覚悟」、人と話すことができずにコスプレをすることで他人と関わろうとしたノノアが勇気を振り絞る43話「ともだち」、タイトルでだいたい内容がわかる47話「アリアちゃんを沼に落とします!」など、珠玉のエピソードが盛り沢山で紹介しきれない。

橋本悠は誰なのか

さて、本記事の冒頭で「橋本悠さんの初連載作品(※詳しくは後述)」と書いたが、この問題に触れないわけにはいかないだろう。
すくなくとも橋本悠名義での雑誌連載、Web連載の漫画は見当たらず、読み切り作品もなさそうだ。本編や休載告知イラスト等で何度か触れられているがアシスタントもなしで、一人で週刊連載をしている。
その割には絵が安定しているし、話の作りも手慣れている。

そうなると当然「ほかの漫画家の別名義なのでは?」という話が出てくる。
実際、その噂は多く出回っていて、噂のほとんどで同じ漫画家名が出てくる。
高い確率で真実だろうが、自分は別の説を唱えたい。

橋本悠は複数人のユニットなのではないか?

具体的に言うと、作画担当とは別に、コスプレ経験ありもしくは現役レイヤーの女性が制作に大きく関わっているのではないだろうか。
コスプレ用品店やコスプレグッズ、衣装作成のノウハウなどのコスプレの描写が具体名の記述が多くて妙にリアルだし、1巻の巻末にはコスプレ講座が、2巻の巻末にはコスプレにまつわる怖い話がたくさん出てくる。男性レイヤーの可能性もなくはないが、描かれ方をみると女性レイヤーが制作に関わっていることは間違いないだろう。

アシスタントはいないということなのでレイヤー知識があるのは作者もしくは編集部ということになる。本誌ならともかくWeb連載で編集部からのアドバイスだけでここまでみっちり入るか?と考えると作者側の知識だろう。
製作者サイドに女性がいることはコスプレ描写以外にもう一つ理由があって、作中作品の描き方にある。リリエルが出てくるアッシュ戦記(+外伝)関連作品とは別に、753がハマっている「ドストライク☆プリンセス」(ドスプリ)という女性向けゲームが登場する。

ドスプリの主人公は冬歌(とうか)で愛称は冬(とう)ちゃん、753の推しは不人気キャラで青色のKAI様で、声優は○○○一。そして複数回リメイクされている。
女性ゲーマーならピンとくるだろう。うたの☆プリンスさまっ♪であり春歌であり聖川真斗(cv鈴村健一)だ。おそらく中の人の推しなのだろう。アニメ4期第8話色々ぶっ飛んでて好きです。あのピアノどうやって設置したんでしょうね。架空作品に対する表現とはいえファンの子が悲しむから不人気とか言わないで。

コスプレ事情の時代感とうたプリファンという部分から察するに女性スタッフは30代前半ぐらいかなあと推測。ネームや作画までガッツリ関わってるか監修的ポジションなのかは不明だが、おそらくメインの作業に関しては推測されている漫画家の仕事と見て正解なのだろう。過去作品は打ち切り的な終わり方もしている。

それを踏まえて、58話をもう一度読むとぐっと来るものがある。
これは、作者自身の救済の話なのだ。


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