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2015年07月31日

ドラゴンクエストXIはなぜプレステ4と3DS、そしてNXで発売するのか

スクウェアエニックスは、ドラゴンクエストシリーズ最新作「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて」をプレイステーション4とニンテンドー3DSおよび任天堂の次世代ハードNXで発売すると発表した。発売日は未定だが、ドラクエ30周年(2016年5月27日から1年)内の発売を目指す。

ネットゲームだったドラゴンクエストXとは異なり、スタンドアロンの従来型RPGとなっている。いずれのプラットフォームでもゲーム内容は同じだが、見た目が異なる。
PS4版ではリッチなグラフィックを、3DS版では上画面で3D版、下画面ではドット絵の見下ろし2D型の両方を楽しむことができる。

同じ場面をPS4、3DS(3D)、3DS(2D)の3種類で体験できるわけで、相当面倒な仕様になっているわけだが、スクウェアエニックスはいったいどうしてこのような選択をしたのだろうか。

まず、前提としてドラゴンクエストシリーズの発売プラットフォームの条件は「最も売れているハード」といわれている。過去のゲーム機を含めてもしょうがないので、「現時点でもっとも稼働率が高いハード」と言い換えることもできる。

今、その条件でいえば、Android+iOS、要するにスマホ/タブレットが最有力になるのだが、そちらはすでに派生ソフトや過去のリメイクを山のようにリリースしているので本編はゲーム専用機ということになる。

発売時期は未定だが、来年末と想定すれば国内でのシェアから考えるとPS4と3DSのどちらかということになりそうである。だが、どちらでリリースしたとしても過去のナンバリングタイトルを超える売り上げになるような本数は確保できそうにない。PS4の普及台数はまだまだ発展途上だし、3DSもドラクエIX発売当時のニンテンドーDSと比べるとかなり見劣りする。そこで「じゃあ両方で出せばいいじゃん」と判断したスクエニの判断がすごい。

基本的にマルチプラットフォームのソフトの場合、同程度の性能を持つハード間で行うことが多い。もしくは、据え置き型の1世代前のものと同時にリリースしてグラフィックに差を出すやり方、いわゆる「縦マルチ」もある。今回のPS4と3DSは据え置き型と携帯型で性能差も特性もまるで違う、いうなれば「斜めマルチ」だ。

PS4では据え置き型最新ハードの性能を生かした高品位のグラフィックをテレビ画面で楽しむことができ、3DS版ではいつでも楽しめるポータブルなハードで、クラシカルな2Dグラフィックと裸眼立体視可能な3Dグラフィックを同時に出力するという、両方のハードの特性を生かした内容となっている。どちらかが優れているという比較を完全に拒絶した画期的なやり方だ。

この方式を取ることでスクエニは、一つは両方のハードのユーザを対象にソフトを販売することで売り上げを伸ばせるし、ユーザは自分の持っているハードで遊べるし、両方持っている人は好きなタイプの画面を選ぶことができる。場合によっては両方を買うという選択肢も選べる。メーカーとユーザの双方にメリットがある販売方式だ。

まもなく30周年を迎える伝統のあるタイトルなので、どういう内容の新作を出しても不満を漏らす人たちが出てくる。最新鋭の3Dグラフィックを用意すれば「昔のドット絵のほうが好きだ」「いつでも遊べるポータブル機の方がいい」と言われるし、携帯ゲーム機でリリースすれば「いまどきこのグラフィックは古臭い」「大きなテレビで遊びたい」と言われる。不満を解消し、なおかつ売り上げも伸ばせる。さらにいえば、過去のプラットフォーム選びで業界シェアに影響を与え、遺恨を残しているソニーと任天堂の両方の顔を立てている。今回の「斜めマルチ」はこれらの複数の問題を一気に解決する、すばらしいアイデアだ。

さて、今回のドラクエでもう一つ重要なのは、NXでリリースされることが発表された点にある。
NXは任天堂が次に発売予定の新型ゲーム機のコードネームで、現時点では何一つ情報が明らかになっていないハードだ。驚くことに、任天堂がNX対応ソフトを一本も発表していない段階で、ドラクエXIがNXでもリリースされることが発表されたことになる。

NXに関する情報があまりにも不足しているため「ドラクエ最新作がNXでリリースされる」というシンプルな情報だけで、様々な推測ができる。

3DS版と同等のものを新ハードで出す必要性はほとんどないので、NX版ではPS4版がベースになることが予想される。おそらくは同等の性能を持ち、少なくとも明らかに見劣りするような性能ではないはずだ。
そもそもNXが据え置きハードか、携帯ハードか発表されていない。もしかするとPS4版と3DS版の両方の特徴を兼ね備えたバージョンになる可能性すらある。
発売時期も、あまり遅らせることはないだろうと考えると、NXの発売は2016年内、遅くとも2017年になるのではないだろうか。
ある程度普及していてドラクエXもリリースされているWii UではなくNXを選んだのであれば、Wii Uは早々にソフトのリリースを止めてNXへの移行を進めている最中ではないだろうか。
NXの発売が想定よりも早く、Wii Uを畳む準備をしているのであれば発売延期したオープンワールドゼルダの発売ハードは本当にWii Uなのかという疑問も出てくる。
任天堂自身が情報公開を控えている中で、独断でスクエニがNXソフトのリリース情報を流すとは考えにくいので、水面下で今回の発表に任天堂が関与していたはずでは。そうなると、トップの人間がかかわっているのは間違いないわけで、本来であれば今回の発表会に岩田さんも出てきていておかしくなかったのかもしれない。

あれこれ考えていくと妄想がとまらない感じだ。わくわくする。

それにしても、複数のグラフィックで同一のシナリオを展開する今回の仕様は開発側の負荷が大きいのではないだろうか。
とくに3DS版はリアルタイムに2種類の画面を出して、戦闘画面も両タイプ選べるようになっている特殊すぎる仕様だ。
本当にこの仕様のまま発売するのだろうか?

スクエニはドラクエ9の発表時に「Wi-Fiで4人同時プレイに対応したオンラインアクションRPG」と説明して、実際の発売時には仕様が大きく変えてしまった前例がある。
今回もそういうことにならなければいいのだが。

2015年07月14日

岩田社長、ありがとう。おつかれさま。

7月11日、任天堂の岩田社長がお亡くなりになりました。55歳、早すぎる最期でした。
昨年の株主総会は体調不良で欠席され、その後、現場復帰してからは回復したというものの見るからにやせ細っていました。
今年の株主総会でもやつれた印象は受けましたが、長い時間立って話し続けて、声もはっきりしていて、まだまだ社長を続けていくのだなと感じました。私以外の株主も、その様子から安心感が得られたのか、質疑応答の時間に社長交代論や後任人事に関する質問は一切ありませんでした。

訃報を知ってから丸一日経過しても、心が落ち着きません。
任天堂からの公式発表は13日の朝でした。東証一部上場企業のトップの急逝は、市場への影響を考慮する必要があるのでしょう。

岩田さんが亡くなった翌日、発表される前日にあたる12日は、自宅に友達を呼んでSplatoonをしていました。テレビを2台並べての対戦です。

任天堂が縁となって知り合った友達ですが、初めて会ったのは20年近く前です。
今でも、会うたびに任天堂の話をします。
先日行った株主総会の話、これから出てくるゲームの話、Splatoonの感想など、おっさんと呼ばれるような年齢の男が顔を突き合わせてクソ真面目に勤め先でも取引先でもない会社の話ばっかりしてるのです。

少し前は、思い出話をすることが多かった気がします。
でも、その日は未来について多く話しました。スマートデバイスへの進出のこと、NXのこと、オープンワールドゼルダのこと。
最近20年で、今が一番任天堂の未来を語るのが楽しい時期なのかもしれません。不安と期待が入り混じった、次の任天堂の一手に年甲斐もなく、わくわくするのです。

先代の山内社長が亡くなった時に書いた文章は「山内社長、ありがとう。さようなら。」とタイトルを付けました。
今回は「さようなら」とは言いません。言えません。まだ、お別れを言いたくないのです。
だって、まだ途中じゃないですか。これからじゃないですか。

Splatoonがヒットして安心されたのでしょうか。
岩田さんは、株主総会の質疑応答の時間に最後の質問者が軽くSplatoonについて触れたときに、すごく嬉しそうでした。質問はSplatoonに関するものではなかったのに、待ってましたという感じでSplatoonの紹介ビデオを流しましたね。

若手が結集して作り上げたSplatoonは、次の任天堂を象徴するソフトだと思います。
開発時期に他社との提携や体調不良もあったことですし、Splatoonは岩田さんはあまり関わっていないでしょう。
バルーンファイトや、マザー2といった、岩田さんが直接手がけたソフトは、岩田さんの子供です。
それに対して、Splatoonは岩田さんや宮本さんが育てた若い開発者が作ったソフトです。つまり孫です。
孫がかわいくないわけないですよね。

訃報が流れてから、ハイカラシティは岩田さんへのコメントで満ち溢れていました。
Twitterなどでも岩田さんへの哀悼のツイートが絶え間なく流れています。
岩田さんに関する超人的なエピソードを語りたい人たちがたくさんいました。

山内さん、岩田さんと公私ともに付き合いあった糸井重里さんが、山内さんの葬儀でこういったことをおっしゃっていました。「どういう人生がいいかと聞かれたときに"お通夜の賑やかな人になりたい"と答えている。社会への貢献度よりも、周りの人たちが思い出話をしたり、些細なエピソードをだしあって、いつまでも終わらないようなお別れがしたい」と。

岩田さん、世界中からあなたの思い出話が出てきて止まりませんよ。

10年ほど前、ゲーム開発者会議(GDC 2005)において、岩田さんはこうおっしゃいました。「名刺の上では私は社長です。頭の中では私はゲーム開発者です。でも、心の中では私はゲーマーです」と。
社長の肩書がついてからも、ゲームの開発をやりたがっていたと聞きます。
ようやく社長の肩書が取れたので、これからは山内さんのもとで、一緒に新しいゲームを開発していくのでしょうか。

しばらくは、エグゼクティブプロデューサーとして、ゲームソフトの最後に社長としての顔を見せてくれるでしょう。
もう少しだけ、岩田社長の名前の入ったソフトを楽しませてください。

7月17日追記
岩田さんの葬儀に参列いたしました。非常に天候の悪い中、多くの方々が列を作って岩田さんの死を悼んでいました。
棺の上に大きく飾られた素敵な笑顔の遺影を拝見し、ああ本当に亡くなったのだなと実感いたしました。
改めて、岩田さん、今までありがとうございました。そして、さようなら。


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