なぜだか知らないが、昨年から産経新聞がやたらと昭和風の見出しで高齢犯罪者の逮捕を報道している。
新幹線のグリーン車内で男性の財布をすったとして、警視庁鉄道警察隊は窃盗の現行犯で広島県福山市鞆町後地、無職、水長和之容疑者(61)を逮捕した。同隊によると、水長容疑者は容疑を認め「警視庁の刑事はすごい。まさか福山まで来ているとは思わなかった」と供述している。
同隊によると、水長容疑者は昭和49年ごろから、新幹線のグリーン車の乗客を狙って財布などを盗み取る犯行を繰り返し、捜査員の間で通称「幹線の水さん」と呼ばれていたという。
「警視庁の刑事はすごい…」 “幹線の水さん”すりで御用2010.4.7
「幹線の水さん」というニックネームが渋い。
酒に酔って地下鉄のホームで眠っている会社員から財布をすったとして、警視庁捜査3課は窃盗の現行犯で、いずれも住所不定の無職、多崎正明(64)と工藤光雄(62)の両容疑者を逮捕した。
同課によると、2人は他のメンバーとともに週末の地下鉄の始発時間帯を狙ってスリを繰り返していたという。2人は約20年前にスリを始め、捜査員の間で通称「地下鉄のマサ」などと呼ばれていた。
「地下鉄のマサ」現行犯で逮捕 酔っぱらい狙いのスリ2010.4.27
「地下鉄のマサ」はおそらく多崎正明容疑者の方だろうが、工藤光雄容疑者にはニックネームは付けてもらえなかったのだろうか?
16日まで行われた江戸三大祭りの一つ、浅草神社(東京都台東区)の三社祭の会場周辺で、警視庁捜査3課は窃盗や窃盗未遂の現行犯で男女3人を逮捕した。このうち、男女2人はそれぞれ数十年、スリを繰り返しており、捜査員に「ケツパーの三ちゃん」「声掛けのタマちゃん」の通称で呼ばれていたという。
(中略)
同課によると、佐賀井容疑者の通称は犯行の特徴から「声掛けのタマちゃん」。祭りの警戒中に犯行を目撃した女性捜査員に「タマちゃん、ダメじゃない」ととがめられると、「今日はやらないつもりだったのに、私はばかだね」と素直に犯行を認めたという。
著名スリ「ケツパーの三ちゃん」御用 70歳「生活保護だけではやっていけない」…2010.5.17
「パー」が財布の隠語で「ケツパー」はズボンの後ろポケットに入れた財布のことを指すようだ。
ニックネームもインパクトが大きいが、会話の昭和風味が濃すぎて戦前の香りすら漂ってくる。
「同課によると」ということはこの記事を書いた記者は、「ねえ、記者さん、聞いてくださいよ。そこでアタシが声掛けのタマちゃんの腕を掴んでね、『タマちゃん、だめじゃない』って言ったわけよ。そしたらタマちゃんが『今日はやらないつもりだったのに、私はばかだね』ってションボリしてね、まあ、アタシだって仕事だから捕まえないわけにはいかないじゃない。ちょっと、記者さん、ちゃんとメモ取ってる?」みたいなことを捜査官に言われたのだろうか?
同課によると、吉安容疑者は約60年間、同様のスリを繰り返していたといい、捜査員からは「ギャン(ギャンブル場)のヤッスさん」と呼ばれていた。昨年12月、別の場外馬券場でスリの現行犯で逮捕された「ギャンのあぶさん」と呼ばれる男とは30年来の知人で、スリグループの仲間だったという。
(中略)
同課によると、馬券は計7千円分だったが、いずれも的中しなかった。吉安容疑者は逮捕当時、現金約50万円を所持。捜査員に名前を問われると「調べれば分かる」と答えたが、「ヤッスさん、迷惑かけるなよ」とたしなめられると、ニヤリと笑ったという。
「ギャンのヤッスさん」逮捕 場外馬券場で馬券スリ疑い2010.6.1
またインパクトの強いニックネームだし、会話も演技がかってて昭和臭い。
東京・新宿の「アルタ」前で酒に酔って寝ていた男性から財布を抜き取ったとして、警視庁捜査3課は窃盗の現行犯で住所不定、無職、高橋秀行容疑者(62)ら4人を逮捕した。高橋容疑者は捜査員に「抜きのヒデ」と呼ばれ、「新宿ヒデグループ」のリーダーとして知られていた。
同課によると、他のメンバーは役割に応じて、盗品を現場で受け取る「吸いのブン」や、見張り役の「平場のスーさん」などと呼ばれていた。高橋容疑者らは「本庁のデカさんに捕まったので言い訳しない」などと容疑を認め、見張り役の2人は容疑を否認しているという。
新宿アルタ前で早朝スリ 「抜きのヒデ」「吸いのブン」ら4人逮捕 「本庁のデカさんに捕まったので言い訳しない」 2010.9.27
「本庁のデカさんに捕まったので言い訳しない」なんて、いまどき2時間刑事ドラマでもなかなか聞けないセリフだ。貴重。
東京都内の無施錠のマンションなどを狙った空き巣が相次ぎ、警視庁捜査3課と北沢署に窃盗容疑で逮捕された男が「100件以上やった。警視庁のデカ(刑事)さんに捕まったのなら仕方ない」と関与を認める供述をしていることが4日、捜査関係者への取材で分かった。
逮捕されたのは、住所不定の無職、辻賢次郎容疑者(60)。逮捕時は盗品の腕時計をはめ、「昨年8月に出所し、日雇いをやったが体がもたなかった」と素直に容疑を認めたという。
「警視庁のデカさんに捕まったのなら仕方ない…」 窃盗容疑で逮捕の男、空き巣100件関与認める2010.11.5
こっちも似たようなセリフ。
まあ、デカさんに捕まったら仕方が無いよね。捕まったことないからよくわからないけど。
警視庁によると、すりの被害者がJRの遺失物係やカード会社を装った男にキャッシュカードの暗証番号を聞き出されて現金を引き出されたり、クレジットカードを不正利用されたりする詐欺事件も発生。被害総額は400万円近くに及び、同庁と静岡県警は共同捜査本部を設置し、「謎のブランコすりを追え」を合言葉に犯人の行方を追っていた。
「謎のブランコすり」の男逮捕 窃盗+詐欺で荒稼ぎ?2010.10.1
容疑者がまだ40歳なのでニックネームはなかったが、捜査本部で合言葉を用意しているところが渋い。
同課によると、吉井容疑者は「明日、娘が上京するのを楽しみにしている状況で、すりなんてしません」と容疑を否認している。吉井容疑者は、午前5時半ごろに東京郊外から都内に向かう電車に乗り込み、満員電車内で、中高年の男性の尻ポケットに入っている財布を抜き取る犯行を繰り返しており、捜査員の間で、「ケツパーの吉」と呼ばれていたという。
尻ポケットからの財布すり師「ケツパーの吉」逮捕 警視庁2010.10.18
またケツパーがでた。
さらに言い訳が渋い。
電車内で壁のフックに掛けた上着から財布を抜き取る「ブランコすり」をしたとして、警視庁鉄道警察隊は窃盗容疑で、韓国籍の住所不定、無職、金寿一容疑者(82)を現行犯逮捕した。
同隊によると、金容疑者は約50年前からブランコすりを繰り返し、捜査員の間で「伝説のブランコすり 金さん」と呼ばれていた。金容疑者は「9月に刑務所を出たばかりで、金がなくなってすりをした」と容疑を認めている。
「ブランコすり」半世紀 伝説の82歳を逮捕2010.10.22
初公判で被告は「(ブランコすりは)もうできません。全然駄目ですわ。(体が)きついですわ」と話していた。
伝説の「ブランコすり」82歳男に懲役5年6月の実刑 これまで17回も… さすがに「体がきつい」2010.12.14
犯罪も半世紀続ければ、ニックネームに「伝説」を冠することも可能だ。
人生の半分以上塀の中じゃないだろうか?刑務所に長くいても更生することができないものなんだろうか。
東京・大島の自動車学校からレジスターを盗んだなどとして、警視庁少年事件課は窃盗と住居侵入などの疑いで、大島町のパチンコ店店員の少年(19)と無職少年(16)ら計3人を逮捕した。
同課によると、少年らは同じ同町出身の遊び仲間で、自らを人気漫画「名探偵コナン」の登場人物にちなんで「大島の怪盗キッド」と名付けていた。同課は平成20年に同町で窃盗事件を繰り返したとして逮捕された5人組「大島のルパン」の残党とみている。
自称「大島の怪盗キッド」の少年3人を窃盗容疑で逮捕 「大島のルパン」残党か2010.12.15
いままでのニックネームは捜査官がつけたものだが、今度は自称。しかもマンガが元ネタ。
まあ若いので仕方がない。
産経は明らかに調子にのっているが、これに便乗してWikipediaにまとめる人まで出てきた。
スリ師の通称一覧
じわじわくる。