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2015年05月12日

"Splatoon完成披露試射会"で見せた任天堂の新しい広告戦略

5月28日にWii Uで任天堂の新作ソフト「Splatoon」が発売される。約1年前にE3で突然発表された新作タイトルだ。詳細は発表当時に妙に気合の入った記事を書いたので一読して欲しい。E3で発表されたWii Uの新作「Splatoon」に見る、任天堂のアイデア
ゲームの内容はSplatoon Directの映像を見ればだいたい分かる。

発売に先だって先週末に「完成披露試""会」が行われた。

Splatoon_promo2.png

要するに対戦プレイの体験版なのだけれども、かなり変わった手法で配信された。

・プレイ可能なのは操作説明と4vs4のオンライン対戦のみ
・プレイ可能時間は特定の1時間×3回
・世界同時配信

プレイ可能時間以外はエラーが出て、タイトル画面以外表示されないという仕様だ。
その、時間は日本時間で土曜日の12時、20時、翌日曜朝4時からの1時間ずつ。全世界共通なので、早朝4〜5時というとんでもない時間も含まれている。

20時から試射会は都合により参加できなかったが、12時と4時の試射会は1時間フルで参戦した。
1年前の発表当時から、プレイ動画やプロモーション映像を繰り返し見ていたおかげで、ルールや基本的な戦術は把握しており、脳内シミュレーションとの誤差を補正するだけでスムーズに馴染むことが出来た。
発表当時『面白そうとかそういうのじゃなくて、感覚でわかる、これ面白い。これ絶対面白い。断言する。間違いなく面白い』と興奮しながら書いたとおり、実際にプレイすると最高に面白かった。面白いものを見つける嗅覚が完璧に働いていたようだ。

敵を排除するKill重視のプレイをしても、ガチのFPS/TPSプレイヤには到底敵わないことはわかっているので、なるべく殺されないよう敵のいない場所を自分チームの色に染めるプレイで勝利に貢献することを専念した。
4種類の武器を選べるが、陣取り優先プレイの場合は広い面積で色を変えられる"ローラー"が強い。だが、途中からプレイヤのローラー使用率が高まり、ローラー同士で正面衝突するようなシーンが頻発したので、わかばシューターに切り替えた。

ローラーは、通った道を染めることは適しているが、これから進む前方に道を作ることができない。シューターであれば、前方にインクを射出して道を作り、イカになってその道を進むことで、一気に前線を押し上げることができる。
そういった戦術で中立地帯をチームカラーに染めて、遅れてやってきた敵のローラー部隊を高台や物陰から撃ちぬく戦略を取った。
他のプレイヤも自分なりの戦略を1時間の間に練っていって、だんだんと手強くなっていく。FPS系のゲームの慣れ不慣れの違いはあるが、ほぼ全員初プレイという同じスタート地点からの対戦なので、成長曲線を肌で感じられて非常に楽しかった。
とにかく楽しくて、楽しくてしょうがなくて、発売まで待ちきれないという思いがより一層強くなった。まるでドラッグだ。
時間制限がなければ、発売日まで毎日何時間も遊んでいたに違いない。

世界中から接続しているのにもかかわらず、タイムラグを感じさせることはほとんどなかった。朝4時の回で1度だけ、撃ったあと地面の色が変わるまでワンテンポ遅れる瞬間があった以外は、オンライン対戦とは思えないスムーズさでラグを感じずにプレイできた。
また、プレイヤが8人揃うまでに、おおむね10数秒程度しかかからなかったのでサクサクと連戦できたのも嬉しい。
プレイ時間を限定したのは、このマッチング待ち時間を短くする効果を期待したという部分もあるのだろう。

発売日までの飢餓感を煽る、スムーズなマッチングを実現するという2点において、時間制限は非常にうまく働いていたといえる。

すでにテレビCMも放送されているが、ネットでのプロモーションを最大化するために、時間制限を設けたという側面もあるだろう。
時間を限ったことで、話題になる時間が集中し、SNSにおける盛り上がりを促進させることに成功している。
下の画像は、Yahoo!リアルタイム検索で3回めの試射会のあとに「Splatoon」と検索した時に表示されたグラフである。

http://realtime.search.yahoo.co.jp/search?fr=top_ga1_sa&ei=utf-8&p=Splatoon
Splatoon_promo.png

当時のタイムラインを見ると、「Splatoon」という単語を含めずに投稿したツイートのほうが多かったので、実際の投稿数のごく一部を抽出したものではあるが、傾向はわかる。
投稿をランダムに見た感じだと、試射会はおおむね好評で、ネガティブなツイートは非常に少なかった。

3回の時間帯全てで、開始時間前に投稿が増え、プレイ中はゲームに専念するために投稿が減り、終了時刻から感想が溢れ出す様子が見てとれる。
日曜とはいえ、早朝5時のツイート数が21時台の1/3程度あるのは驚異的だ。

実際にプレイした人たち以外にも、その感想を見て興味をもった人、本体ごと買おうと決意する人のツイートも多数観測された。
今回のプロモーションは成功したといえるのではないだろうか。

今回のプロモーションだけではなく、発売後の無料大型アップデートを事前予告し、発売日時点ではゲームのすべてを遊ばせないという戦略も、一気に遊びつくして飽きさせず、話題を持続させるための施策といえるだろう。

また、今回の試射会版をダウンロードした人限定で、製品版を500円値引きするキャンペーンも実施された。公式eShopとamazonの両方で行われ、amazonではパッケージ版よりダウンロード版のほうがランキング上位になっていた。任天堂の利益率が高くなるダウンロード版に誘導することに成功している。今後も、ダウンロード版を優遇する販売方法が増えることだろう。

ただ、プロモーションがうまく働いてダウンロード版が売れていても、追加コスチュームや追加チャレンジを解禁するために必要なamiiboが、予約のみで売り切れて転売屋の独擅場になっているのはなんとか対応してほしいものだ。

2015年05月11日

人を選びすぎるゲーム。WiiU「ゼノブレイドクロス」クリア後レビュー

人々がイベントに参加したり旅行したりするたのしいたのしいゴールデンウィーク。
私は、惑星ミラ観光をしておりました。

…というわけで、貴重な連休を完全にひきこもって過ごすという多大な犠牲と引き換えに、「ゼノブレイドクロス」をクリアすることができた。
ゼノブレイドクロスは、Wiiで高い評価を受けた「ゼノブレイド」の続編である。
前作ゼノブレイドは、ゲーム内のプレイ時間表示の上限が99時間59分でありながら、多くの方が100時間以上プレイしているというボリュームたっぷりのRPGだ。
その続編ということで、よせばいいのにさらにボリュームアップを図っている。システムの難解さも上がって説明書の内容量はおそらくWii Uソフト最高レベルだろう。しかも説明書には書かれていない要素が山ほどある。

メインシナリオを重点的にプレイして、なんとか100時間以内にクリアができた。だが、サブクエストが山のように残っていて、さらに有料ダウンロードコンテンツで追加キャラや追加クエストまである。遊びつくすまでにまだまだ相当時間を取られそうだ。

ボリュームの話を見て「うへぇ…」と思った人は手を出さないほうがいい。無限に時間を吸われるので冗談抜きでおすすめできない。本当におすすめできない。
ダチョウ倶楽部のコントにある「やるなよ!絶対やるなよ!」という"実はやってほしい"という含みを持たせた表現ではなく、本当におすすめできない。

だが、「とてつもなく広い荒野を長時間かけて走り続けて、尋常ではない数のクエストを消化して、膨大な数の敵キャラが落とす多すぎる種類のドロップアイテムをかき集めて、数百種類の武器と防具に数百種類の強化パーツを組み合わせて最強の装備を探り、さらにドールというロボットにも同じぐらいの武器と防具と強化パーツがあって、そのうえ主人公以外の操作キャラでも同じカスタマイズをして、少しレベルが上がると使える武器防具が増えるので同じことを繰り返して、説明書を見てもさっぱり理解できないクソ面倒くさい難解なシステムをプレイしながら理解して、新しい大陸にたどり着いたらまた探索して、100時間かけてようやくメインシナリオをクリアしても、未消化の伏線をふんだんに残して変なところで終わってて、そこらへんにラスボスの何倍も強い敵がいてそいつらを倒すにはたぶんあと100時間は必要」というゲームを許せる方には全力でおすすめしたい。

そういう超絶面倒くさい要素を楽しめてシナリオはおまけ程度に考えている人には最高のゲームだ。今すぐ買ってプレイ時間を確保しよう。本体ごと買っても十分元が取れる面白さだ。

メインシナリオに絡むクエストでどこに落ちているかわからないドロップアイテムを要求するなとか、ムービーシーンのカメラワークをプレイヤに任せるのはやめろとか、装備の変更でせめて武器種でフィルタリングさせろとか、オンライン要素が微妙とか、8つのユニオンの所属バランスが完全に崩壊しているとか、食材と間違えたと言って仲間であるタツを食おうとする行為(実際に下ごしらえまでしてしまう行為含む)を10回以上繰り返すリンはただの狂人にしかみえないとか、会話に絡んでこない主人公の存在が空気以下とか、シナリオのアレがソレでナニとか、サブクエストで胸糞わるくなるレベルのクズが出てくるとか、延々と聞き続けるBGMでボーカル入れると耳につくとか、耳といえば獣耳のセリカかわいいとか、セリカ超かわいいとか、セリカ最高かわいいとか、いろいろ言いたいことはあるが、「連休中ひきこもってゲームばっかりするのは嫌だけど、ちょっとだけ遊んでおくかと思って電源入れたら地球時間で3日経っていた」という現象が発生したという事実から考えても、ちょっとした不満点はぶっ飛ばすぐらいの面白さであることは理解してもらえるかと思う。

冒頭で「惑星ミラ観光」と書いたように、フィールドを歩き回るのが最高に楽しい。
目に見える地形はすべて到達可能なエリアで遠くに見える高い山も、上空に浮かぶ浮遊した大地も、水平線のかなたにかすむ島もいずれ足を踏み入れることができる。楽しい。
ドールを手に入れてからは到達可能なエリアが増えるが、入手までに20~30時間ぐらいはかかる。だが、足だけで相当な広さを探索できる。それが楽しい。
最終的にドールに飛行ユニットを付けられるようになればどこにでも高速で飛んでいけて世界が多少狭くなってしまうが、それもまた良い。最高に楽しい。
レベル的にギリギリの敵を工夫して倒すのもエキサイティングするし、低レベルの敵を蹂躙するのも愉快だ。敵をよけながら落ちているアイテムを拾い続けるのも面白い。うっかりレベルが30ぐらい上の化け物に蹂躙されるのもそれはそれでいい。大したペナルティもなくすぐに復活できるから楽だ。
歩き回りすぎて「あー、ここ後でなんかイベントあるんだろうなー」という特徴的な地形を見つけて、案の定、あとのメインシナリオでそこにたどり着くのもうれしい。散々歩き回って、このあたりのエリアはだいたい見たと思ったのに、見落としていた洞窟にクエストがらみで再訪問したときに気づかされるとまだ新しい場所があるんだと心が躍る。
迷子になったらゲームパッドで好きな場所に瞬間移動できるのは快適だし、あえて迷子のまま地図も見ずに目的地まで1時間ぐらい強敵におびえながらうろうろ探索し続けるのもワクワクする。
シナリオは前作で高まった期待感と比較するとそれ以下ではあったが、ツボを押さえたアツい展開はふんだんに盛り込んであって、そういうシーンになると興奮する。

これはゲームというより"異世界旅行"なのかもしれない。
触れるものすべてが楽しいのはそういうことなのだろう。
若干の遊びににくさや不親切さは"異世界だから"と思って納得するのもいいかもしれない。
まあ、それでもいくつかの不満点についてはちょっと手を加えればぐっと良くなりそうな部分があるので、アップデートで解消されることを期待しているが。

繰り返しになるが、プレイ時間はひたすら長いし、不親切な部分も多いし、はっきりいって万人におすすめしない。だが、それでも買う人に一つアドバイスしたい。
「説明書を読め」と。

プレイ前は理解できないので流し読みでいい。個々の内容が簡潔なくせにページ数が膨大なので、頭に内容が入ってこないと思うが、1章終わるごとに再読するとその都度新しい発見がある。
説明書を読むことで遊びにくさは半減するはずだ。
説明書はHOMEボタンを押すか、こちらのpdfで見られる。

…と、以上の文章を書いてせっかくだから記事に添えるスクリーンショットでも撮るかと、Wii Uを起動したら普通に遊び始めてしまって10時間経っていたし、満足のいくスクリーンショットが撮れてないので結局写真なしで掲載することにした。画面写真は公式サイトを見てください。

ロード時間の短いダウンロード版のほうがおすすめ。
ダウンロード版はeShopで直接買うより、amazonで買うほうが安い。


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