2014年06月12日

E3で発表されたWii Uの新作「Splatoon」に見る、任天堂のアイデア


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Splatoonやばい

だれが読むかわからないので、普段はE3の話をするときにE3が何の略でどういうイベントなのか説明するところから始まるのだが、今回ばかりはそういう面倒なことはおいといて、単刀直入にSplatoonへの期待が高まりすぎて頭がおかしくなりそうだということを表明したい。やばいよあれ。面白そうとかそういうのじゃなくて、感覚でわかる、これ面白い。これ絶対面白い。断言する。間違いなく面白い。衝撃的すぎて今年のE3で発表されたことはSplatoon以外全部忘れた。いや、ゼルダ無双のミドナだけは覚えてる。ミドナかわいい。スマブラにも出しやがれ。

Splatoonをものすごく簡単に説明すると、陣取りタイプのTPSだ。
TPSが何かって説明も省く。知りたければググれ。ググらなくても上の動画見ればだいたい分かるだろう。
普通のTPSとかFPSは銃(など)をガンガン撃ちまくって人が人を殺すか、人がソンビを殺して、主に殺した数を競うゲーム(そうではないものもある)だが、Splatoonはイカ人間がインク銃で壁やら床を自分のチームの色に染めて、ナワバリの広さを競うゲームだ。ちまちまと文章で説明してもしょうがないので動画を見て欲しい。1分でだいたい分かる。

FPSとかTPSはとにかく人気がある。ソニーやマイクロソフトのハードで発売される海外ソフトの半分以上[要出典]がその手のゲームだろう。
人気があるのは面白いからだ。しかし、同じジャンルで大量のゲームが出ると、ほとんど差がなくなってしまう。リアルなグラフィックになり、逆に個性を失っているようにも思える。

Splatoonはスクリーンショット1枚で伝わってくる圧倒的な個性がある。原色2色のインクがステージを彩り、愛嬌のあるキャラがいる。

任天堂における"アイデア"とは

任天堂の宮本茂はかつて「アイデアというのは複数の問題を一気に解決するものである」と言った。この言葉は頻繁に引用されている。
アイデアというのはなにか? - 1101.com
社長の代わりに糸井重里さんが訊く「スーパーマリオ25周年」
社長が訊く『New スーパーマリオブラザーズ Wii』

SplatoonがTPSの目的を「銃で敵を撃つ」から「インク銃でナワバリを奪い合う」に変えた。するとどうなるか。

「FPSやTPSは残酷で血なまぐさい」→カラフルなビジュアルで子供でも楽しめる
「どっちが優勢か数字の上でしか把握できない」→マップに塗られた色を一瞬見るだけで分かる
「戦況把握が難しい」→色が混ざり合っている場所が激戦区
「下手な人は上手い人のじゃまになる」→敵を倒せなくても、インクをばらまくだけでナワバリ拡大に貢献できる。
「隠れてスナイパーライフルで狙うだけの人がいる」→倒した数が重要視されないのでやる意味が少ない
「操作が複雑」→リロード、隠れる、高速移動、壁登り等を「イカになってインクに潜る」に一本化し、ボタン一つに集約

まだまだ他にもあるだろうが、FPS/TPSにおける複数の問題が一気に解決した。これが宮本茂の言う"アイデア"だ。
格闘ゲームの目的を「敵のライフを0にする」から「敵を画面外にふっとばす」に変えたスマッシュブラザーズに通じるものがある。

ツッコミがあったので、この部分は追記
もちろん、上記の問題点をそれぞれの工夫で個別に解消している既存のゲームも多数あるが、Splatoonは、シンプルなアイデアでまとめて解消し、数分のビデオを見るだけでその特徴を理解できるぐらいのわかりやすさが画期的なのである。
また、拠点占拠を目的としたゲームモードも既存ゲームに多数みられるが、それらは特定の場所の占有数などを競うものであり、フィールドの地面すべてが陣取りの対象となっているSplatoonとは発想の違いがみられる。

若いスタッフが生み出すアイデア

3年前に宮本茂の遺伝子がレベルを上げて物理で殴るという文章を書いた。(タイトルがわかりづらい。時事ネタを使うべきではないと反省。物理で殴るってなんだよ)
スーパーマリオ3Dランドやマリオカート7やとびだせどうぶつの森など膨大な数の3DSソフトが発表された3DSカンファレンス後に書いたものだ。
要するに宮本茂本人が開発に直接携わるのではなく、宮本茂のアイデアを実践できるプロデューサーやディレクターを育てており、それが実りつつあるという話なのだが、Splatoonのスタッフは実に見事な"アイデア"を披露してくれた。

今回、Splatoonは若いスタッフがアイデアを生み出している。3年前以上に、後継者が育ってきているようだ。
おそらく、相当な数のFPS/TPSを研究した結果生まれたアイデアだろう。岩田社長が頻繁に口にしている「ゲーム人口の拡大」という課題に「FPS/TPS人口の拡大」という具体性を持った回答を示している。FPS/TPSをプレイしたことのない人にも本体ごと買ってもいいかなと思わせるゲームデザインは見事だ。

もう一度言う。Splatoonやばい

プロモーションビデオや開発者トークからビンビンと伝わってくる面白さは、プレイ動画を見るとますます高まる。
この完成度を見ると、結構発売は近いように思えるが任天堂のサイトでは2015年とだけ記載されているのに対し、NOAのほうでは発売をFirst Half of 2015(2015年1〜6月)としている。海外先行という可能性もあるのでなんとも言えないが、あと1年は待つことになりそうだ。

E3来訪者のプレイなので、当然初心者同士の戦いなのだが、2ゲーム目が終了した瞬間にこのゲーム特有の面白さが伝わってくる。
プレイ中は、プレイヤー側の赤チームが敵陣奥までぐいぐい食い込んでいて、圧倒的勝利に終わったようにみえる。しかし、タイムアップの瞬間に画面に表示されるマップの色で一瞬にして敗北を思い知らされる。
画面右上の青チーム陣地に向かっていた赤チームたちは、左下の自陣をおろそかにしており、深く侵入を許していたのである。

奥に奥に攻め込み続けるだけではなく、ゲームパッドに表示されるマップで戦況を随時把握し、自陣の守りも固める必要があったのだ。
ゲーム後半で赤チーム陣地に潜り込んだ青チームの精兵がどのような行動をしたのか、画面には写っていないが、ゲームセット時のマップを見れば容易に想像できる。周りに赤チームがいなくて好き勝手インクをばら撒きまくったのだろう。画面中央下にある細い道から侵略したのだろうか。きっと、ゲームセット直前は相当楽しかったはずだ。マリオサンシャインで水をまきまくるマリオのような感じだ。

E3バージョンですでに相当面白そうなのを見ると、なるべく早く発売してほしいと思うが、せっかくのアイデアが詰まったゲームなのだから、しっかりと作りこんでほしいという気持ちもある。
可能であれば、ニンテンドーDS発売時に海外版本体にメトロイドプライムハンターズの対戦体験版が同梱されていたように、E3バージョンの対戦ゲームを配布して、本編はあとでじっくり発売というパターンでやってくれないものだろうか。


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