2024年07月10日
任天堂とアクセシビリティ
先日、任天堂の株主総会が行われた。例によって詳細をまとめているので前回の記事をご覧いただきたい。
株主総会レポートでも記載したが、質疑応答で最初に指名された質問者が「任天堂は視覚障害者対応が遅れているのではないか」と指摘し、私はこの質問に非常に驚いた。
なぜなら、私自身が株主総会参加の半年以上前から用意していた質問とほぼ同じだったからだ。
この質問内容を7月1日に任天堂が掲載した議事録から引用する。
Q1 ゲームを遊びたいと思っている視覚障がいを持つ人も、世の中にはいると思う。任天堂がこうした方に向けて取り組んでいることがあれば説明してほしい。A1 代表取締役社長 古川俊太郎: 当社では、世界中の多くの方々に当社のゲームを遊んでいただきたいと考えています。この場で具体的な取り組みを申し上げることは控えさせていただきますが、視覚障がいのある方だけでなく、ゲームをするのに不自由な思いをされている方に当社のゲームを遊んでいただけるよう、さまざまな努力をしていきたいと考えています。
任天堂の議事録は基本的に質問者の発言をすべて載せることはなく、回答と矛盾しない範囲で要約される。
今回の質問者の実際の発言には「"Switch 視覚障害"と検索しても任天堂のサイトがヒットしない」「他社は対応している」「世界で3億人弱の視覚障害者がいる」「新規需要にもつながる」との指摘があったが、カットされている。
1つ目の質問でいきなり任天堂が十分に問題に取り組めていないことを指摘する強烈な内容で、会場全体の空気が引き締まったように感じた。質疑応答で質問者の指摘が事実に反する場合はきちんと否定する。ちゃんと対応しているなら「サイトに掲載している」「他社から遅れているとは思わない」と言えば良い。だが、今回は指摘事項に具体的な言及を避けており、対応の遅れを事実上認めた回答となっている。
前回の記事は、速報性を重視するためにこの質問についての私のコメントの掲載を見送った。ボリューム的にも株主総会レポートに収めるレベルではなくなるからだ。
今回の記事では、改めてこのような質問が出てきた背景として任天堂と他社の状況を説明し、なぜ障害者対応が重要なのかについて私の見解をまとめていきたいと思う。