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2015年05月12日

"Splatoon完成披露試射会"で見せた任天堂の新しい広告戦略

5月28日にWii Uで任天堂の新作ソフト「Splatoon」が発売される。約1年前にE3で突然発表された新作タイトルだ。詳細は発表当時に妙に気合の入った記事を書いたので一読して欲しい。E3で発表されたWii Uの新作「Splatoon」に見る、任天堂のアイデア
ゲームの内容はSplatoon Directの映像を見ればだいたい分かる。

発売に先だって先週末に「完成披露試""会」が行われた。

Splatoon_promo2.png

要するに対戦プレイの体験版なのだけれども、かなり変わった手法で配信された。

・プレイ可能なのは操作説明と4vs4のオンライン対戦のみ
・プレイ可能時間は特定の1時間×3回
・世界同時配信

プレイ可能時間以外はエラーが出て、タイトル画面以外表示されないという仕様だ。
その、時間は日本時間で土曜日の12時、20時、翌日曜朝4時からの1時間ずつ。全世界共通なので、早朝4〜5時というとんでもない時間も含まれている。

20時から試射会は都合により参加できなかったが、12時と4時の試射会は1時間フルで参戦した。
1年前の発表当時から、プレイ動画やプロモーション映像を繰り返し見ていたおかげで、ルールや基本的な戦術は把握しており、脳内シミュレーションとの誤差を補正するだけでスムーズに馴染むことが出来た。
発表当時『面白そうとかそういうのじゃなくて、感覚でわかる、これ面白い。これ絶対面白い。断言する。間違いなく面白い』と興奮しながら書いたとおり、実際にプレイすると最高に面白かった。面白いものを見つける嗅覚が完璧に働いていたようだ。

敵を排除するKill重視のプレイをしても、ガチのFPS/TPSプレイヤには到底敵わないことはわかっているので、なるべく殺されないよう敵のいない場所を自分チームの色に染めるプレイで勝利に貢献することを専念した。
4種類の武器を選べるが、陣取り優先プレイの場合は広い面積で色を変えられる"ローラー"が強い。だが、途中からプレイヤのローラー使用率が高まり、ローラー同士で正面衝突するようなシーンが頻発したので、わかばシューターに切り替えた。

ローラーは、通った道を染めることは適しているが、これから進む前方に道を作ることができない。シューターであれば、前方にインクを射出して道を作り、イカになってその道を進むことで、一気に前線を押し上げることができる。
そういった戦術で中立地帯をチームカラーに染めて、遅れてやってきた敵のローラー部隊を高台や物陰から撃ちぬく戦略を取った。
他のプレイヤも自分なりの戦略を1時間の間に練っていって、だんだんと手強くなっていく。FPS系のゲームの慣れ不慣れの違いはあるが、ほぼ全員初プレイという同じスタート地点からの対戦なので、成長曲線を肌で感じられて非常に楽しかった。
とにかく楽しくて、楽しくてしょうがなくて、発売まで待ちきれないという思いがより一層強くなった。まるでドラッグだ。
時間制限がなければ、発売日まで毎日何時間も遊んでいたに違いない。

世界中から接続しているのにもかかわらず、タイムラグを感じさせることはほとんどなかった。朝4時の回で1度だけ、撃ったあと地面の色が変わるまでワンテンポ遅れる瞬間があった以外は、オンライン対戦とは思えないスムーズさでラグを感じずにプレイできた。
また、プレイヤが8人揃うまでに、おおむね10数秒程度しかかからなかったのでサクサクと連戦できたのも嬉しい。
プレイ時間を限定したのは、このマッチング待ち時間を短くする効果を期待したという部分もあるのだろう。

発売日までの飢餓感を煽る、スムーズなマッチングを実現するという2点において、時間制限は非常にうまく働いていたといえる。

すでにテレビCMも放送されているが、ネットでのプロモーションを最大化するために、時間制限を設けたという側面もあるだろう。
時間を限ったことで、話題になる時間が集中し、SNSにおける盛り上がりを促進させることに成功している。
下の画像は、Yahoo!リアルタイム検索で3回めの試射会のあとに「Splatoon」と検索した時に表示されたグラフである。

http://realtime.search.yahoo.co.jp/search?fr=top_ga1_sa&ei=utf-8&p=Splatoon
Splatoon_promo.png

当時のタイムラインを見ると、「Splatoon」という単語を含めずに投稿したツイートのほうが多かったので、実際の投稿数のごく一部を抽出したものではあるが、傾向はわかる。
投稿をランダムに見た感じだと、試射会はおおむね好評で、ネガティブなツイートは非常に少なかった。

3回の時間帯全てで、開始時間前に投稿が増え、プレイ中はゲームに専念するために投稿が減り、終了時刻から感想が溢れ出す様子が見てとれる。
日曜とはいえ、早朝5時のツイート数が21時台の1/3程度あるのは驚異的だ。

実際にプレイした人たち以外にも、その感想を見て興味をもった人、本体ごと買おうと決意する人のツイートも多数観測された。
今回のプロモーションは成功したといえるのではないだろうか。

今回のプロモーションだけではなく、発売後の無料大型アップデートを事前予告し、発売日時点ではゲームのすべてを遊ばせないという戦略も、一気に遊びつくして飽きさせず、話題を持続させるための施策といえるだろう。

また、今回の試射会版をダウンロードした人限定で、製品版を500円値引きするキャンペーンも実施された。公式eShopとamazonの両方で行われ、amazonではパッケージ版よりダウンロード版のほうがランキング上位になっていた。任天堂の利益率が高くなるダウンロード版に誘導することに成功している。今後も、ダウンロード版を優遇する販売方法が増えることだろう。

ただ、プロモーションがうまく働いてダウンロード版が売れていても、追加コスチュームや追加チャレンジを解禁するために必要なamiiboが、予約のみで売り切れて転売屋の独擅場になっているのはなんとか対応してほしいものだ。

2015年05月11日

人を選びすぎるゲーム。WiiU「ゼノブレイドクロス」クリア後レビュー

人々がイベントに参加したり旅行したりするたのしいたのしいゴールデンウィーク。
私は、惑星ミラ観光をしておりました。

…というわけで、貴重な連休を完全にひきこもって過ごすという多大な犠牲と引き換えに、「ゼノブレイドクロス」をクリアすることができた。
ゼノブレイドクロスは、Wiiで高い評価を受けた「ゼノブレイド」の続編である。
前作ゼノブレイドは、ゲーム内のプレイ時間表示の上限が99時間59分でありながら、多くの方が100時間以上プレイしているというボリュームたっぷりのRPGだ。
その続編ということで、よせばいいのにさらにボリュームアップを図っている。システムの難解さも上がって説明書の内容量はおそらくWii Uソフト最高レベルだろう。しかも説明書には書かれていない要素が山ほどある。

メインシナリオを重点的にプレイして、なんとか100時間以内にクリアができた。だが、サブクエストが山のように残っていて、さらに有料ダウンロードコンテンツで追加キャラや追加クエストまである。遊びつくすまでにまだまだ相当時間を取られそうだ。

ボリュームの話を見て「うへぇ…」と思った人は手を出さないほうがいい。無限に時間を吸われるので冗談抜きでおすすめできない。本当におすすめできない。
ダチョウ倶楽部のコントにある「やるなよ!絶対やるなよ!」という"実はやってほしい"という含みを持たせた表現ではなく、本当におすすめできない。

だが、「とてつもなく広い荒野を長時間かけて走り続けて、尋常ではない数のクエストを消化して、膨大な数の敵キャラが落とす多すぎる種類のドロップアイテムをかき集めて、数百種類の武器と防具に数百種類の強化パーツを組み合わせて最強の装備を探り、さらにドールというロボットにも同じぐらいの武器と防具と強化パーツがあって、そのうえ主人公以外の操作キャラでも同じカスタマイズをして、少しレベルが上がると使える武器防具が増えるので同じことを繰り返して、説明書を見てもさっぱり理解できないクソ面倒くさい難解なシステムをプレイしながら理解して、新しい大陸にたどり着いたらまた探索して、100時間かけてようやくメインシナリオをクリアしても、未消化の伏線をふんだんに残して変なところで終わってて、そこらへんにラスボスの何倍も強い敵がいてそいつらを倒すにはたぶんあと100時間は必要」というゲームを許せる方には全力でおすすめしたい。

そういう超絶面倒くさい要素を楽しめてシナリオはおまけ程度に考えている人には最高のゲームだ。今すぐ買ってプレイ時間を確保しよう。本体ごと買っても十分元が取れる面白さだ。

メインシナリオに絡むクエストでどこに落ちているかわからないドロップアイテムを要求するなとか、ムービーシーンのカメラワークをプレイヤに任せるのはやめろとか、装備の変更でせめて武器種でフィルタリングさせろとか、オンライン要素が微妙とか、8つのユニオンの所属バランスが完全に崩壊しているとか、食材と間違えたと言って仲間であるタツを食おうとする行為(実際に下ごしらえまでしてしまう行為含む)を10回以上繰り返すリンはただの狂人にしかみえないとか、会話に絡んでこない主人公の存在が空気以下とか、シナリオのアレがソレでナニとか、サブクエストで胸糞わるくなるレベルのクズが出てくるとか、延々と聞き続けるBGMでボーカル入れると耳につくとか、耳といえば獣耳のセリカかわいいとか、セリカ超かわいいとか、セリカ最高かわいいとか、いろいろ言いたいことはあるが、「連休中ひきこもってゲームばっかりするのは嫌だけど、ちょっとだけ遊んでおくかと思って電源入れたら地球時間で3日経っていた」という現象が発生したという事実から考えても、ちょっとした不満点はぶっ飛ばすぐらいの面白さであることは理解してもらえるかと思う。

冒頭で「惑星ミラ観光」と書いたように、フィールドを歩き回るのが最高に楽しい。
目に見える地形はすべて到達可能なエリアで遠くに見える高い山も、上空に浮かぶ浮遊した大地も、水平線のかなたにかすむ島もいずれ足を踏み入れることができる。楽しい。
ドールを手に入れてからは到達可能なエリアが増えるが、入手までに20~30時間ぐらいはかかる。だが、足だけで相当な広さを探索できる。それが楽しい。
最終的にドールに飛行ユニットを付けられるようになればどこにでも高速で飛んでいけて世界が多少狭くなってしまうが、それもまた良い。最高に楽しい。
レベル的にギリギリの敵を工夫して倒すのもエキサイティングするし、低レベルの敵を蹂躙するのも愉快だ。敵をよけながら落ちているアイテムを拾い続けるのも面白い。うっかりレベルが30ぐらい上の化け物に蹂躙されるのもそれはそれでいい。大したペナルティもなくすぐに復活できるから楽だ。
歩き回りすぎて「あー、ここ後でなんかイベントあるんだろうなー」という特徴的な地形を見つけて、案の定、あとのメインシナリオでそこにたどり着くのもうれしい。散々歩き回って、このあたりのエリアはだいたい見たと思ったのに、見落としていた洞窟にクエストがらみで再訪問したときに気づかされるとまだ新しい場所があるんだと心が躍る。
迷子になったらゲームパッドで好きな場所に瞬間移動できるのは快適だし、あえて迷子のまま地図も見ずに目的地まで1時間ぐらい強敵におびえながらうろうろ探索し続けるのもワクワクする。
シナリオは前作で高まった期待感と比較するとそれ以下ではあったが、ツボを押さえたアツい展開はふんだんに盛り込んであって、そういうシーンになると興奮する。

これはゲームというより"異世界旅行"なのかもしれない。
触れるものすべてが楽しいのはそういうことなのだろう。
若干の遊びににくさや不親切さは"異世界だから"と思って納得するのもいいかもしれない。
まあ、それでもいくつかの不満点についてはちょっと手を加えればぐっと良くなりそうな部分があるので、アップデートで解消されることを期待しているが。

繰り返しになるが、プレイ時間はひたすら長いし、不親切な部分も多いし、はっきりいって万人におすすめしない。だが、それでも買う人に一つアドバイスしたい。
「説明書を読め」と。

プレイ前は理解できないので流し読みでいい。個々の内容が簡潔なくせにページ数が膨大なので、頭に内容が入ってこないと思うが、1章終わるごとに再読するとその都度新しい発見がある。
説明書を読むことで遊びにくさは半減するはずだ。
説明書はHOMEボタンを押すか、こちらのpdfで見られる。

…と、以上の文章を書いてせっかくだから記事に添えるスクリーンショットでも撮るかと、Wii Uを起動したら普通に遊び始めてしまって10時間経っていたし、満足のいくスクリーンショットが撮れてないので結局写真なしで掲載することにした。画面写真は公式サイトを見てください。

ロード時間の短いダウンロード版のほうがおすすめ。
ダウンロード版はeShopで直接買うより、amazonで買うほうが安い。

2015年04月24日

Kindle PaperwhiteとKindle Voyageを同時に購入して、Paperwhiteを返品することにした

"Kindle"は、amazonの電子書籍サービスの名称であり、専用の電子ブックリーダーの名称でもある。いままで、サービスとしてのKindleは利用していたものの、モノとしてのKindleは所有していなかった。ちなみにKindle本は400冊以上所有していて9割以上が漫画だ。

もともとiPhone6 PlusのKindleアプリで十分満足していて、これ以上デジタルガジェットを増やすメリットはさほどなかったのだけれども、キャンペーン中でタダで試せるし、amazonプライムに加入しているとKindle(PaperwhiteでもVoyageでもない、無印モデル)なら3980円という信じられない値段だったので、よーしKindle試してみるかという考えに至ったのである。

結局、ライトのついていない無印Kindleは解像度も低いのでおすすめできないという周囲の声を受けて、Kindle Paperwhiteを買ったのである。もともと「欲しくて欲しくてしょうがないから買った」という状況でもないので、極端に低い期待のもとで入手したこともあり、その割には思いの外快適に使える端末であることが判明し、「それなら最上位モデルにも手を出しちゃえ、どうせ返品できるし」ということで、Paperwhiteを購入直後にKindle Voyageも注文したのである。

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実は、amazonは各Kindle端末に対し「気軽に試せる返品保証。30日以内の返品で全額返金」のキャンペーンを現在行っているのである。いくら使い込んでも返品できるし、その時の送料まで負担してもらえる。ただし、4月末までに購入する必要があるので、わりとギリギリだ。

そういう経緯で、別に必要としていなかったKindle端末が手元に2つある。
それぞれ使ってみた結果として、Paperwhiteを返品して、Voyageを手元に残すことを決めた。

それぞれの製品比較の詳細はamazonのサイトにある比較表を見たほうが早いが、実際に比較して感じた大きな違いは3つある。

続きを読む "Kindle PaperwhiteとKindle Voyageを同時に購入して、Paperwhiteを返品することにした"

2015年04月14日

キャナルシティ博多にあるディストピア感あふれるビデオアート

福岡市にキャナルシティ博多という複合商業施設、いわゆるショッピングモールがある。

福岡市の中心地である天神からも、交通の窓口である博多駅からも微妙に離れていて、さらに地下鉄の最寄り駅からも絶妙に離れていて、すぐそばには風俗店が立ち並ぶ福岡の性の中心街が存在しているというちょっとアレな立地ながら、それなりにお店が揃っているので海外からも観光客が団体で押し寄せている。というか、押し寄せすぎて旧正月の時期はユニクロに外国人専用レジまで設置されていた。

さて、このキャナルシティには1996年の創業開始当初からエントランス部に設置されている巨大なビデオアートがある。

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ナムジュン・パイクの作品「Fuku/Luck,Fuku=Luck,Matrix」である。
180個のモニタを並べ、それぞれにビデオアートを流している。

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近くで見上げると非常に大きい。

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吹き抜けに設置されていて、そばにエスカレータがあるので正面から鑑賞することもできる。

日中に撮影したため逆光でわかりづらいが、黒い画面が多いことに気づいただろうか?
写真をとったタイミングで映像がたまたま暗いシーンだった部分もあるが、実は多くのモニタが壊れているのだ。

映像で観たほうがわかりやすいだろう。

見ての通り、まったく何も映らない画面が半分ぐらいある。
隣り合った画面に微妙に見た目が違う映像が並んでいる部分があるが、これは作品上の演出で色味や明るさを変えているわけではない。たんにモニタが正しい映像を映せていないだけだ。

こちらはたまたまYoutubeで見かけた2010年ごろに撮影されたもの。
この時点ですでに設置から14年ほど経過しているわけだが、まだ故障したモニタは少ない。この5年で急に故障が増えた、というよりは、2010年以前から代替部品が調達できずにメンテナンスできなくなったのだろう。

近くで見るとモニタの規格が若干異なるものも混在している。故障時に交換したものだろう。また、中央部に1つだけブラウン管から液晶モニタに切り替えを試した痕跡があるが、その液晶モニタも壊れている。

1996年当時は、きらびやかで、未来感あふれ、混沌としたネット社会を予見させるような作品だった。
だが、2015年現在、この作品からは文明が荒廃した世界を描いたSF作品のような印象を受ける。
どちらからも強いメッセージを感じることができる。

2005年に亡くなったパイク氏は、10年後のこの状態を予見していたのだろうか。
テクノロジーに依存したアート作品は、そのテクノロジーとともに滅びるべきか、新しい技術で延命すべきか。どちらを選択すべきなのだろうか。

2015年04月11日

ファイアーエムブレムifにおける任天堂の実験

ファイアーエムブレムシリーズは、ファミリーコンピュータで第一作が発売された後、ほぼすべての任天堂ハードで新作が発売されている人気シミュレーションRPGシリーズである。
息が長く、固定ファンも多いシリーズではあるが大胆な新システム導入も行っていて、任天堂の実験場になっている印象を受ける。

1997年の「アカネイア戦記」では、BS放送を利用した配信システムであるサテラビューでのリリース、1999年の「トラキア776」では書き換えカートリッジを使ったニンテンドーパワーでの配信を行っている。

現時点で発売済みの最新作である「ファイアーエムブレム覚醒」では、任天堂発売のゲームとしては初めて追加シナリオの有料配信を実施している。フルプライスのパッケージソフトとして、単体で十分に楽しめるボリュームを持ちながら、より長く遊びたい人に対して有料でシナリオを追加する仕組みとなっている。

新規タイトルではなく、シリーズの固定ファンが多く、ある程度の売上が期待できるファイアーエムブレムは実験場として適していたのだろう。
市場の反応が良かったのか、スーパーマリオシリーズやマリオカート8、スマッシュブラザーズなど、その後の任天堂ソフトでも同様のシステムが多く取り入れられるようになった。

さて、覚醒に続く最新作「ファイアーエムブレムif」は6月25日に発売されるが、こちらではさらに一歩踏み込んで複雑な追加シナリオ課金を実施することとなった。

2つの王国が対立するストーリーの本作のパッケージ版は、それぞれの王国の名前を冠した「ファイアーエムブレムif 暗夜王国」「ファイアーエムブレムif 白夜王国」の2種類が発売される。主人公が対立する2つの王国のどちらに属するかを、購入時点で決めることになる。また、暗夜王国は高難度、白夜王国は低難度の設定となっている。

ダウンロード版は1種類のみの発売で、序盤6章目までは共通のシナリオだが、6章終了時点で2種類のパッケージ版と同じように王国の選択を迫られる。ストーリーを知った上での選択となるので、パッケージ版より、ドラマチックに感じることだろう。

それぞれのシナリオは前作「覚醒」と同等とされている。では、両方共楽しむなら2本買う必要があるかというと、その必要はなく、ダウンロードコンテンツとして、"選択しなかった方の王国"を選ぶシナリオが購入できる。
さらに、後日どちらの王国にも所属しない第3のシナリオ(タイトル未定)も配信予定だ。2本目のシナリオを購入せず、こちらだけを買うこともできる。

また、2つのシナリオに加えて、第3のシナリオのダウンロード権と限定グッズが付属した「SPECIAL EDITION」も発売される。
これらの内容を図にまとめるとこのような感じだ。
FEif.png

SPECIAL EDITIONのお得感が目立つため、amazonなどで予約が殺到してあっという間に締め切られてしまったようだ。後日追加予約もあるようなので、欲しい人はこまめにチェックしよう。

冒頭で、ファイアーエムブレムシリーズが任天堂の実験場になっていると書いたが、このシステムが今後定着する事はあるだろうか?

2パッケージでの販売、後日1パッケージの追加というと多くの人が特定のソフトを想像するだろう。そう、ポケットモンスターだ。
ファイアーエムブレムifがうまくいけば次期のポケモンでこの"if形式"を展開することが予想される。

しかし、この予想は、半分正解、半分外れだと考えている。
ポケモンがパッケージを分割しているのは、2つのシナリオを楽しめるようにするという要素よりも、ポケモンの出現率に差を持たせて交換を促すという側面がある。そのため、追加コンテンツとしてもう一方のパッケージが楽しめるというのは、あまり歓迎されないのではないだろうか。
ただ、第3のパッケージについては、ポケットモンスターブラック2/ホワイト2で見せた"続編"という展開もありえる。こちらならフルプライスのパッケージ版と、1からの追加コンテンツの2本立ても十分可能だろう。

さて、任天堂がこのような複雑な方式を採ったのはどういう理由だろうか?
1本のソフトでなるべく多く収益を上げるという、わかりやすい利益向上策であることは間違いない。だが、それ以上に、ダウンロード販売の比重向上を狙ったものではないかとみている。
第2、第3のシナリオはダウンロードオンリーだし、購入前に王国を選ぶパッケージ版より、途中から選択できるシステムを採用したダウンロード版のほうがより一層感情移入ができる。

パッケージソフトは、物流にのせる必要があるのでコストがかかる。売れ残りや品切れのリスクもある。それに対し、ダウンロード版はコストが低い。在庫も存在しないのでリスクも少ない。
以前から、少しずつダウンロード配信への移行を進めている任天堂だが、今後はもっとダウンロードの比重が大きくなるだろう。
たとえば、資源節約という分かりやすい建前を用意しているが、説明書の電子化もパッケージ版の優位性を減らすための施策の一つだろう。

そもそも、配信へのシフトは任天堂に限らず業界全体の流れであり、むしろ動きが遅いぐらいだ。おそらくは、先代社長の頃からつながっている問屋、小売店への配慮があったのだろう。そちらに対してのフォローも行っていて、決してダウンロードすることが出来ないゲーム連動フィギュアである「amiibo」を店頭で売るようにしている。

皮肉にも、amiiboはパッケージソフト同様の品切れリスクをガンガン露呈していて、よりによってamiibo連動で追加コンテンツ解禁という仕掛けを盛り込んでしまったSplatoonは、ソフト発売前からamiiboの予約合戦+高額転売という地獄の様相を呈している。かんべんしてくれ…。

あと、完全に余談なのだが3本分のシナリオを買うと9000円ほどの金額になるファイアーエムブレムifよりもおそらく長時間楽しめる、ゼノブレイドがNew3DS専用ソフトとして3,996円というクソ安い定価で絶賛発売中です。面白いので買おう。

2015年03月18日

任天堂とDeNAの提携は何を目指すものなのか

任天堂とDeNAが共同会見を開き、資本提携および業務提携を行うことを発表した。資本提携により、互いの株式を交換する結果、任天堂はDeNAの第2位の大株主となる。また、業務提携によって、新たな会員制サービスを共同で構築し、任天堂のIP(知的財産)を使ったスマートデバイス(スマートホン・タブレット)向けゲームをリリースすることとなる。

今まで頑としてスマートデバイス向けのゲームリリースを行っていなかった任天堂が方針転換をしたと、センセーショナルに報道されることとなったが、実際の会見ではどのように発表されていたのだろうか。

禁じ手だった?スマートデバイス参入

任天堂株式会社 株式会社ディー・エヌ・エー 業務・資本提携共同記者発表

任天堂のサイトに会見時のプレゼン資料が掲載されている。
まず驚くことに、今回の提携への協議は2010年6月にスタートしている。2010年6月はiPhone4がリリースされる前後で、モバゲーを運営しているDeNAもスマートホンではなくフィーチャーフォン向けのサービスをメインとしていた時期だ。

もちろん5年前から現在の着地点を想定していたわけではないだろうが、携帯電話向けのコンテンツ提供を絶対的にNGとはしておらず、以前からあらゆる可能性は模索していたということになる。

そもそも、任天堂が否定していたのはいたずらに射幸心を煽るガチャ商法であって、Newスーパーマリオブラザーズ2の追加ステージのように、正当な対価としての追加コンテンツ提供に関してはむしろ積極的に取り組んでいる。また、以前からも岩田社長はスマートデバイスへの参入については明言しており、自社IPや、ゲームソフトの提供についても言及済みだ。

自社のゲーム資産をそのまま移植したとしても、それはスマートデバイス向けの娯楽として最適ではないと考えていますので、このようなアプローチを採ることは一切想定していません。ただし、このようなスマートデバイスを取り巻く環境の中で、任天堂が本当に得意とするところでお客様に価値を感じていただけることをご提供しなければ、多くのお客様にご支持はいただけないと思っていますので、開発チームには、ゲームをつくることも、自社のキャラクターを使うことも禁じていません。
2014年1月30日(木) 経営方針説明会/第3四半期決算説明会 任天堂株式会社 社長 岩田聡

1年前のこの発言は、DeNAとの提携を視野に入れた上でのものであることは間違いないが、今回の発表においても同じ見解を述べている。提携は方針転換ではなく、少なくとも1年前からの既定路線であったことがうかがい知れる。

そして、この2014年の岩田社長の発言は、以下のように続く。

ただ、これをもって、「マリオをスマートデバイスに供給」と報道されますと、完全にミスリードになってしまいます。

今回もそのようなミスリードがないように慎重に言葉を選んでいる。任天堂が保有するIPをそのまま移植するのではなく、スマートデバイスに適したコンテンツをつくり上げるのであり、決して移植ではないことを強調していたのだが、残念なことにスーパーマリオというアクションゲームソフトがスマホに移植されるという誤解を生むような報道が多く見られた。もちろん任天堂IPにマリオは含まれるが、ゲーム機のコントローラに適したアクションゲームがそのままスマホに移植されるわけではない。マリオというキャラクタがスマートデバイスのゲームに登場する可能性が出てきただけだ。

任天堂がスマホ参入を禁忌としていたように思われているのは、発表のタイミングを図っていたせいでもある。長い間準備はしていたわけだから、マスコミから参入しないのかと質問されたときに、「計画している」と早い段階で言うことも可能だったはずだ。
スマホゲームは、コンシューマゲーム業界以上に変化が大きい。コンプガチャ問題で大騒ぎしていた頃と比べて、いい意味でも悪い意味でも業界が熟している。いい意味は、世間の風当たりが弱まった点、悪い意味は新規参入がしづらくなった点だ。その辺りも加味して、ギリギリまで粘ってこの時期の発表となったのではないだろうか。

なぜ新ゲーム機の登場を発表したのか?

今回の会見では、二社の協業の他に「全く新しいコンセプトのゲーム専用機プラットフォーム」であるコードネーム"NX"についても言及している。

続きを読む "任天堂とDeNAの提携は何を目指すものなのか"

2015年02月24日

熟成された濃密な辛口「ゼルダの伝説 ムジュラの仮面3D」レビュー

NINTENDO64ソフト「ゼルダの伝説 ムジュラの仮面」が発売されたのは2000年4月27日、いまから15年前だ。前作「ゼルダの伝説 時のオカリナ」が1998年11月21日に発売されて、わずか1年5ヶ月でのリリースである。
社長が訊く」でも触れられているが、延期を繰り返して長時間待たせた時のオカリナの反省があり、わずか1年で開発するために時のオカリナの3Dモデルを流用して、このムジュラの仮面が開発された。

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同じ3日間を何度も繰り返すという、この作品の最大の特徴は開発期間の短縮のために生まれた。独特のシステムゆえに、不具合も多く、開発期間の短さからか謎解きに不親切な部分が多く見られ、時のオカリナと比べて評価が分かれる作品となった。好きな人はとことん好き、嫌いな人は途中で投げ出してしまうゲームだった。

ムジュラの仮面は当然発売日に買ったし、当然クリアもしたが、何度も何度もクリアした時のオカリナと比べると一歩劣ると感じていた。ダンジョンの謎解きでどうしてもわからない部分が出てきて、タイムリミットが迫って最初からやり直しになるのが苦痛に思えたし、謎が解けても「あー、そういうことか」とスッキリするのではなく「そんなのわかんねーよ」と理不尽に感じることが多かった。だから、人に薦めるのは躊躇してしまう作品だと感じていた。「面白いけど、ちょっとしんどいよ」と。

それでも、独特の雰囲気と狂気に満ちた世界や、ゼルダシリーズにしては珍しい込み入った人間ドラマは大好きだし、理不尽さを取り去ったリメイクをずっと待ち望んでいた。

ニンテンドー3DS用のリメイク開発が始まったのは、同じくリメイクである「時のオカリナ3D」が発売された半年後の2011年末。1年ちょっとで作られた作品のリメイクに3年以上の開発期間を費やしているのである。

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社長が訊くの中で、オリジナル版のダメな部分をリストアップし、それを一つ一つ潰していったことが語られている。
「理不尽さは取り除くけど、歯ごたえは取り除かない」という方針で、オリジナル版の倍以上の時間をかけられた丁寧なリメイクが作られた。

結論から言うと、この3DS版は間違いなくオススメだ。今まで敬遠していた人、クリアできなかった人、クリアしたけどそれ以降遊んでいない人、何度もクリアした人、全員にお勧めできる。

実際に遊んでみると「あれ?こんなに遊びやすかったっけ?」と思える場面が度々ある。

スムーズな視点移動で、次に行くべき場所が自然と示される。Newニンテンドー3DSではCスティックで視点変更が可能だが、どうしても周りを見回したいとき以外は使わないほうがプレイしやすい。基本的に、オートカメラに従って画面の奥に向かって進めば次のイベントが起きるようになっている。

特定の人物の行動を記録する「団員手帳」はハートのかけらが得られるミニゲームやサブイベントなどにも拡張され、あらゆるフラグが記録されるようになった。そのおかげで一度クリアしたミニゲームをうっかり再プレイすることもない。

細かい部分を上げていったらきりがないが、丁寧に丁寧に理不尽さを取り除き、プレイの密度を高め、より一層濃いゲーム体験が得られるようにアレンジされている。謎が解けるまでの時間が短くはなっているが、甘くなっているわけではない。謎解きは相変わらず辛口だ。答がわからずに無駄な行動を続ける部分がなくなっただけで、謎そのものと向き合う時間は変わらないのだ。

これは「リメイク」ではなく「熟成」と呼んでいいのではないだろうか?
別の機種で動作するようにアレンジする作業ではなく、核となるエッセンスを残しながら、丁寧に雑味を取り除き、面白さに深みを与えていく作業だ。
開発に費やした3年…いや、リメイクの開発が始まるまでの10年間以上の間、ディレクターの青沼氏が「あそこはこうしておくべきだった」と悩み続けた時間が、この人を選ぶ名作を熟成させて、万人が楽しめる至高のエンターテイメントに昇華させていったのだ。

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青沼さん、あなたが本当に発売したかったムジュラの仮面は取り戻せましたか?

参考:ムジュラの仮面レビュー(15年前に書いたNINTENDO64版のレビュー)


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