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2014年05月29日

与沢翼の雑誌に、編集者の魂を感じた

先日、与沢翼という人が資金ショートということで会社をたたんだという話題を目にして、彼が関与したネオヒルズ・ジャパン 与沢翼責任編集長という雑誌を購入した。

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与沢翼氏については、倒産すらパフォーマンスの一部っぽい雰囲気があり、あんまり炎上マーケティング的なものに加担したくないので詳しくは触れない(触れたくない)。
だいたい、どういう人なのかは知れ渡っていると思うが、あえて説明すると「自分が金持ちであることを演出することで、自分が関与するビジネスが儲かるように思い込ませ、そのビジネスに参入する人を増やし、人が増えることで自らの収入が増える」という周りくどいお仕事をしている人である(…と、私は認識している)

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この雑誌、ゴージャス感が半端ない。雑誌と名乗っているが、1号しか刊行されていないムック本であり、フルカラー128ページで669円(増税前は650円)というのは激安だ。

通常、雑誌というものは雑誌そのものの販売価格では制作費をまかないきれず、広告を多数掲載し、広告収入で利益を得るビジネスモデルなのだが、この本にはほとんど広告がない。

つまり、この雑誌も与沢翼氏の儲かっているアピールのパフォーマンスの一環として作成されたものなのである。事実かどうか不明だが、与沢氏から制作費として数千万の手出しがあったようだ。

はっきり言って内容はゴミのようなものだ。
具体的なビジネスの内容には一切触れない婉曲表現が多数使われていて、いかに儲かっているかの話は虚実混ざった状態で延々と羅列してある。テキスト部分は読めば読むほど気分が悪くなる、完全に毒である。

しかし、驚いたことに、雑誌としては非常に素晴らしいクオリティである。
プロの編集者・デザイナーが本気で作り上げた"作品"と言っても良い。高い制作費をもらって、それに見合うだけのパーフェクトな仕事をしたのだろう。

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胡散臭さが盛りだくさんのテキストが、パッと見た時に美しいフォント、美しいレイアウトで彩られ、エグゼクティブ向けのハイクオリティなビジネス雑誌の体裁をなしている。
華麗な風呂敷に包まれた三段重ねの重箱に収められているレトルト食品を想像していただければわかりやすい。

クオリティが高いだけに、彼らが「俺たち何やってんだろ」と思いながら仕事している様子が目に浮かんで心が痛くなる。雑誌のプロなのだから、与沢氏のビジネスが虚業同然であることは当然把握した上で仕事しているだろうから、なおさら切ない。

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2014年05月07日

マリオカート8はWii Uの救世主になりえるか?

5月29日にWii U用レースゲーム「マリオカート8」が国内発売され、海外でもほぼ同時期に発売される。

マリオカートシリーズは1992年(22年前!)に発売されたスーパーファミコン版以降、据置ハードや携帯ハードで合計7作(+アーケード版3作)が発売され、タイトルのとおり、マリオカート8は8作目となる。多少の増減はあるものの、いずれもヒット作となっている。

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※画像はあまり信頼出来ないと言われるVGChartzによるマリオカート売上。参考まで。

とくに、据置型の前作である「マリオカートWii」は海外での売れ行きがとくに大きく、全世界で3000万本を超えるヒットとなっている。マリオカート8は、不振が続くWii Uの起爆剤となることが期待されているが、果たしてうまくいくだろうか?

任天堂も、マリオカート8のプロモーションには力を入れていて、7月31日までに購入した人に2本のソフトを1ヶ月間体験できるという、反則ギリギリの販促をしている。

対象ソフトは「New スーパーマリオブラザーズ U」「ゲーム & ワリオ」「ザ・ワンダフル ワン・オー・ワン」「Nintendo Land」「ゼルダの伝説 風のタクト HD」「ピクミン3」の6本。

マリオカート8だけを目的に、Wii U本体を買うのはコストパフォーマンスが悪いが、ソフト2本ついてくるなら購入に踏み切る人もいるだろう。しかし、ダウンロード版で1ヶ月限定とはいえ無料でドル箱タイトルのマリオやゼルダを提供とは、太っ腹というか自爆気味というか。

1ヶ月を超えて遊びたければ4割引きで購入も可能だ。これは"基本無料"のソフトに対する任天堂の回答の一つなのだろうか。ちなみに北米ではダウンロード版の「New スーパーマリオブラザーズ U」「Nintendo Land」「ゼルダの伝説 風のタクト HD」「ピクミン3」のうち1本を無料で貰える。1ヶ月の制限はない。

魅力的なキャンペーンではあるが、ハードを薄利もしくは赤字で販売してソフトで回収するビジネスモデルである家庭用ゲーム機において、ソフトウェアの無料提供は本来買われるべきソフトの本数が減ることになり、諸刃の剣と言えなくもない。

いずれにせよ、任天堂が大きな勝負に出ているのは間違いなく、マリオカート8以降のソフトウェアラインナップが不透明な状況を考えると、もしマリオカート8が失敗した時のダメージは相当大きい。一応「スマッシュブラザーズ for Wii U」が年末に控えてはいるものの、3DS版も発売されるのでそこまで大きな期待を持てそうにない。マリオカート8がWii U復活の最大の山場となるだろう。

任天堂ファンとしては、マリオカート8以降にもスマブラ以外の切り札を年内に用意しているに違いない、きっと6月10〜12日(現地時間)にロサンゼルスで開催されるE3で何か発表するに違いないと思いたいのだが、年内に実弾を放つことのできる隠し球をいつまでも抱えておけるほどWii Uの状況は芳しくないのは明らかだ。何か話題作が出るとしてもスマブラ以降だろう。

2本無料というキャンペーンもそうだが、最近の任天堂のプロモーションは以前と違ってきている。今までは岩田社長が前面に出てくる社長が訊くシリーズで、開発者の生の声を伝えてきたが、今年に入ってから社長が訊くの記事は掲載されていない。マリオカート8のキャンペーン動画「マリオカート8 Direct」でも、社長は冒頭の挨拶でしか出てきていない。

長年黒字続きだった任天堂が、赤字に転落し、社長の経営責任が問われる中で、社長が前面に出てくるのは避けているのだろうか。それとも、開発の内情を消費者に直接届けるというマニアックな広告戦略では巻き返しが難しいと判断して、即効性のある戦略に切り替えたのだろうか。

本日5月7日には決算発表、マリオカート8発売後の6月下旬には株主総会も控えている。この辺りの戦略についても何か語られることがあるだろうか。


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