2018年01月19日

ダンボールとゲーム機の融合、NINTENDO LABOのここがすごい


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任天堂はいつも私達を驚かせてきた。
2画面のポータブルゲーム機、ボタンを使わないコントローラ、飛び出すゲーム画面、据え置き型とも携帯型とも言い難い新しいゲーム機。
2018年1月18日朝、その任天堂が新たな驚きを届けてきた。

NINTENDO LABO(ニンテンドーラボ)」ダンボールとSwitchを組み合わせた全く新しいエンターテインメントである。
4月20日に「Toy-Con 01 バラエティキット」(税別6,980円)と「Toy-Con 02 ロボットキット」(税別7,980円)の2種類が発売される。

内容については公式サイトと動画を見てほしい。

これはすごい。
Switch本体の発表のときより驚いた。
ニンテンドーラボの何がどうすごいのか、どこに驚いたのか、書き綴っていこうと思う。
少々長くなるが、お付き合い頂きたい。

追加の電子機器が一切ないのがすごい

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「ダンボールを数千円で売るのか、いい商売だな」というとんでもない誤解があるが、ニンテンドーラボはゲームソフトである。ゲームソフトに、Toy-Conという独自コントローラを組み立てるためのダンボールなどのキットが付属する形態となっている。
付属品の分量と加工精度を考えると、一般的なゲームソフトの価格より若干高い程度の価格設定は正当なものといえる。正当というか、結構ギリギリの価格設定かもしれない。

付属品は、ダンボールやヒモ、輪ゴムなど、その気になればホームセンターで調達できそうなものばかりで構成されている。モーターやセンサー、ICチップなど電気が通る付属品は一切ない。
多少雑に扱って壊れたとしてもガムテープで修理できるし、輪ゴムが切れたら適当なゴムを投入すればいい。公式に付属品の替えも販売される。
替えの利かないオンリーワンの部品を使っていないからこそ、安心して大胆に遊ぶことができる。
既存のプログラマブルな知育玩具が電子部品の集まりであるのと比較すると、この潔さはすごい。

Switchの機能全投入がすごい

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付属品に電子機器が一切ないのであれば、どう操作するかというと、ダンボールで作成したToy-ConにJoy-Conをはめ込んで使うことになる。
主に使用するのはモーションセンサーだ。Splatoon2やゼルダの伝説ブレス オブ ザ ワイルドでも使用されている機能で、かなり高い精度でJoy-Conの傾きや動きを検出できる。

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きめ細やかな振動ができるHD振動機能も「タイヤの付いていないダンボールのリモコンカーを走らせる」という意外すぎる機能で活用される。
ほとんど使用されていなかった本体のタッチパネル機能も大活躍だ。
画面を操作してコントローラを動かすという通常ゲームとは逆の操作方法は、端的に言って頭がおかしい。何を食ったらこういうアイデアが思いつくんだ。

そして、「Switchで忘れられた機能ランキング」があれば確実に1位を取るであろう「モーションIRカメラ」がニンテンドーラボにおいて最大の武器となっている。これが一番すごい。

再帰性反射材シートがすごい

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バラエティキットにも、ロボットキットにも、付属品の中に「再帰性反射材シート」という見慣れないものが紛れ込んでいる。PVの中で白っぽい四角いシールがちらほら見えるが、それが再帰性反射材だ。
これが、ニンテンドーラボ最大の武器であり、この製品を成立させるための鍵となる存在である。再帰性反射材シートが同梱される意味を知ることでニンテンドーラボのすごさを再認識することになる。

ニンテンドーラボの発表は詳細が伏せられたまま前日夜に告知され、朝7時に情報解禁となった。どうせオンラインサービスの有料化とか、その埋め合わせになるようなソフトの配信ぐらいの発表だろうと甘く見ていた私は、6時58分に目覚ましをセットし、半分眠った脳みそでプロモーションビデオを観ることになった。

「なるほどー、モーションセンサーでコントロールしてるのか、結構面白いな。でもどうやって実現しているかわからない部分もあるなー」ぐらいに思ってサイトを見ると「再帰性反射材シート」と書いてある事に気づいた。

そこで眠っていた脳みそが完全に覚醒した。全身に鳥肌が立つのを感じた。
PVにある実現不可能と思われるギミックの仕組みと、ほとんどゲームで活用されなかったモーションIRカメラの存在理由を一瞬で理解することになり、シンゴジラでサーベイデータを見た巨災対の安田龍彥(高橋一生)ばりに「あー!あーーー!ああああーーーー!!こんなんありかよぉぉおぉぉ!」と1人盛り上がってしまった。

再帰性反射材とは何か、説明が必要だろう。
夜にジョギングをする人なら「反射バンド」といえば馴染み深いかもしれない。ピカピカと光る素材で、夜道で車に注意を促すアイテムだ。

反射バンド自体が発光するわけではなく、車のヘッドライトなどを反射して、自分の位置を知らせる機能を持つ。道路の標識も同じように表面に再帰性反射材が使われている。

鏡の反射は、斜めから光が入ると入射角と同じ反射角で反対側に光が届く。
再帰性反射材は、光が入った方向と180度逆、つまり光源側にそのまま光を返す性質を持つ。
するとどうなるかというと、光を発している側から見ると当てた光が戻ってくるのでめちゃくちゃ目立つのである。

ニンテンドーラボにおいて、再帰性反射材がどういう役割を果たすかというと「モーションIRカメラ用のマーカー」になるのである。

Joy-Con右の手前側にあるモーションIRカメラは、1-2-Switch内の「大食いコンテスト」というミニゲームで使用されている。口の開け閉めの動きをカメラで検知して、その回数を競うゲームだ。
その仕組については任天堂自身が先日解説記事を掲載している。

学研さんと「モーションIRカメラ」のヒミツについて調べてみました。 | トピックス | Nintendo

要は、モーションIRカメラには赤外線ライトが備わっていて、その光の反射をカメラで検知して動きを認識しているのである。
しかし、これには弱点があって周りの明るさや、動きを検知したい対象の物体が赤外線をどの程度反射できるかで検知能力が左右される。体験会のステージでも強いライトの影響で正常動作しないというトラブルがあった。

そこで、再帰性反射材が用意されたのである。動きを検知したい部位にマーカーとして貼り付ければ、高い精度で動きを検知できるようになる。しかも、密閉したダンボールの中であれば暗室でマーカーだけが明るく映ることになり、精度は格段に上がるはずだ。

IRカメラならWiiリモコンの先端にも備わっているが、センサーバーという固定赤外線ライトと組み合わせが必須だった。カメラ自体にライトを付けて、再帰性反射材と組み合わせるというイノベーションで10を超える動体を同時検知する仕組みが生まれたのである。目からウロコだ。
本来の目的外のものを別の用途に使うという発想は任天堂が昔から行っていて、ファミコン時代の光線銃は太陽電池を光センサー代わりに使用していた。ビデオ端子が搭載される前のテレビに対しアンテナ線を割り込ませる形で映像をテレビに映し出すRFスイッチ(部品は現在もRSコンポーネンツで購入可)などもある。

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任天堂は、Switch発表当初「モーションIRカメラはグーチョキパーを区別できるので、じゃんけんゲームを作ったりできます」というすっとぼけたことを抜かしていて、ちゃんと使ってますよというアリバイ工作のように大食いコンテストをリリースしていたが、明らかに最初からニンテンドーラボのために仕込んでいたのである。

体験会から1年間、我々はずっと騙されていたわけだ。なにがグーチョキパーだよ。
再帰性反射材が付属品に含まれることに気づいた瞬間、1年間に渡る謎解きゲームの回答編を見せられた気持ちになった。
正直、Switch本体発表のときより興奮した。騙されるってこんなに気持ちが良いものなのか。

発表時期がすごい

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モーションIRカメラの仕込みから考えても、本体の開発と同時進行でニンテンドーラボのコンセプトが作られていたことは間違いない。
やろうと思えば本体と同時発売で、発売日により強いインパクトを与えることも可能だっただろう。

でも、任天堂はそうしなかった。1年待った。

理由は明らかだ。現在のSwitchのユーザ層と、ニンテンドーラボのユーザ層が異なるのである。
親子で楽しく工作する姿に「うちも欲しい」と思う人たちがいるのと同様に「ああいうのは別にいらないな」という人たちも存在する。
それならば、最初はニンテンドーラボの存在を隠し、まずはゼルダの伝説でアーリーアダプターの物欲を刺激し、ある程度普及した段階で存在を明かすプランは理にかなっている。ニンテンドーラボのインパクト無しで品薄続きの普及速度を維持し、高まった普及率を携えて満を持してニンテンドーラボをお披露目し、ファミリー層にも訴求する。
あまり普及していない新製品に飛びつくことができるのはファミリー層ではなく、ゲーマーだ。もし順番が逆だったならうまくいかなかっただろう。

どこまで想定していたかは分からないが、完璧なタイミングでの発表だったのではないだろうか。すごい。

プロモーションビデオがすごい

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「ダンボールで暗室を作り、可動パーツに取り付けた再帰性反射材のマーカーに赤外線ライトを照射して、その反射光をIRカメラで検出することで可動部の動きをゲームに反映させ、暗室自体の動きはモーションセンサーで検出する」という言葉で説明するとややこしいし、紹介ビデオの中でどういう仕組みか説明すると非常に長くなる。

しかし、今回のPVはわずか3分足らずだ。
「ダンボールでコントローラを作って、Joy-Conを突っ込んだらなんか楽しいことができる」というコンセプトだけをシンプルに伝えている。

どういう仕組で動くのかはを現物を見て理解すること自体も商品価値の一つになっているから、あえて細かい部分は説明していないのだろう。
そのように割り切ったからかどうかは分からないが、PVの出来が非常にいい。
BGMなしの工場から、組立工程に入り、いったん無音になった後、ダンボールで作られたピアノの単音にゲームのSEが乗って、だんだんと複雑な音になり、次々と提示される楽しい遊び方の映像に合わせてコーラスも入って盛り上がっていく。とても良い。楽しい。

ただ、説明不足の部分があり、そのせいで過小評価されている気がする。
このあたりはワークショップなどでの体験レポートがWebに上がってきたり、発売間近になって情報が出揃ってきたら誤解は解けていくだろう。

組み立てマニュアルがすごい

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組立家具やプラモデルを作ったことがある人ならわかると思うが、どれだけマニュアルがしっかりしていても見落としたり勘違いしたりして、取り付け向きを間違えたりするような失敗に遭遇する。
ニンテンドーラボは、組み立てマニュアルがタッチ操作可能な本体のディスプレイに表示される仕組みになっている。マニュアル内のパーツを回転させて違う向きから見ることもできる。

これなら失敗なしで組み立てられそうだ。

ダンボールを使ったことがすごい

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組み立てが容易で、材料が安価であれば良いのだから、ダンボール主体のコンセプトにする必然性はなく、プラスチックで作っても良かったはずである。
ダンボールにすることで落書きができるし、壊したときの修繕もやりやすくなる。一度解体して壊れた部品の輪郭をなぞって、別のダンボールに型取りすれば替えのパーツはいくらでも作れる。

プラスチック製の電化製品は世の中にありふれている。ダンボールという一見するとゲームとは遠い存在に見える素材に触ったり動かしたりすることで、音が出てゲーム内のキャラが動くという体験は、子供たちに驚きを与えるだろう。
ダンボールのピアノを組み立てて音を奏でたあと、天板を開けて中身が空っぽであるのを見て、どうして音が出るのかを親子で考えるところまでパッケージ化された製品なのだ。

あと、個人的にはダンボールと深い絆があるので、ダンボールのほうが嬉しい。

ネーミングがすごい

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LABORATORYの略語は、一般的にはLABなのに、「NINTENDO LAB」ではなく「NINTENDO LABO」である。

LABではなくLABOを選択することで、英語圏ではユニークさを、日本語圏では誤読の少ない語感の良さを、WebではSEO効果を、商標では独自性を得られる。
シンプルだが、よく考えられた名前だ。ロボとの連想もあるのかもしれない。

画面外に面白さをもたらすのがすごい

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ニンテンドーラボはゲームソフトだ。だが、ゲーム画面の外での楽しみをたくさん用意している。
作るのが楽しいし、カスタマイズも楽しい。

そしてなにより、ダンボール背負って、ロボに扮して全身で遊ぶとか、もう完全に見た目だけで優勝でしょう。
これだけでYouTube映え、SNS映えする感じ。
発売日には当然売れるだろうが、発売後しばらくしてSNS経由で人気が再燃する予感がする。
しかも、その際に中古屋が関与せず新品が売れ続けるというのも任天堂的に嬉しい部分だろう。

既存技術の組み合わせなのがすごい

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技術的に目新しいのはモーションIRカメラと再帰性反射材の組み合わせぐらいで、モーションセンサーはWiiの頃からあるし、タッチパネルはニンテンドーDS、IRカメラはスーパーファミコンのスーパースコープなどでも使われている。ゲーム画面外の機器との連動はファミリーコンピュータロボットを彷彿とさせる。

素晴らしいのは、そのバラバラの機能を高い次元で融合して新しい遊びを提案したことだ。

ニンテンドー3DS発売前に、バーチャルボーイが何らかの形で復活するのではないかという記事を書いたが、まさかファミリーコンピュータロボットに類似したものがこういう形で復活するとは思わなかった。

「バーチャルボーイは倒れたままなのか?」([Ni]第一号掲載・2007年) | N-Styles

プログラムを自作できそうなところがすごい

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最初に発売される2パッケージには含まれないかもしれないが、PVには「My Toy-Con」と表示された画面が出てくる場面がある。
タッチなどの操作をした際にJoy-Conを振動させるという命令を実行している場面に見える。

詳細が不明なので未知数だが、簡易的なプログラムが自作できるのかもしれない。
だとすれば、自分でダンボールを切ってオリジナルのToy-Conとオリジナルのプログラムで遊ぶことも可能だろう。実現したらすごい。

型番がプリントされているのがすごい

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本当に細かい部分なので、共感してくれない人も多いと思うが、ダンボールに型番がプリントされているのがめちゃくちゃ嬉しい。
任天堂の製品は、ゲーム機ごとに型番があって、機種ごとの固定アルファベット+ハイフン+数字の形態になっている。
NINTENDO 64ならNUS-001とか。

Switchの場合は本体がHAC-001で、Joy-Conが右左それぞれHAC-015とHAC-016
で、このダンボールの余白ではなく組み立てたあとで見える部分にHAC-051って書いてある。
自分で組み立てたToy-Conに任天堂の正式な型番がプリントされているの、うれしくない?想像しただけでニヤニヤしちゃう、この気持わかる?

みんなを笑顔にするのがすごい

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My Toy-Conや、リモコンカーを操作するときに本体に取り付けるアンテナなど、明らかに無駄なパーツまでわざわざ作っているところが非常に面白い。
こういう無駄な要素を見ると、開発者たちが「こういうの、あったほうがあそんだ子供たちが喜ぶじゃん」と遊び手の笑顔を想像しながら開発しているんだろうなと思える。

「任天堂は人々を笑顔にする会社だ」と歴代の経営者が口を揃えて言っている。

ニンテンドーラボは、きっと、多くの人たちを笑顔にするだろう。


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