レビュー:「あっというまに?えかきうた」
タイトル:あっというまに?えかきうた
開発:任天堂ゲームセミナー2006(Aチーム)
配布期間:2007年3月08日~3月21日
価格:無料
任天堂ゲームセミナー2007の募集が開始された。任天堂ゲームセミナーは2003年から毎年開催されている、無料のゲーム開発の実践的なセミナーで、生徒は約10ヶ月の間に実際にゲームの開発まで行う。
2005年度から生徒の作成したニンテンドーDSソフトを期間限定でDSステーションによる無料配信を行っている。3月8日から2006年度生徒作品の配信が開始された。第一弾は今回レビューする「あっというまに?えかきうた」
このゲームのコンセプトは宇宙人との交流。宇宙人の言葉を絵描き歌に翻訳する機械が発明されたという設定だ。
この絵描き歌は、いかにも機械読み上げっぽい無機質な感じなのだが、ステージによって演歌調だったり、ロック風だったり、いろいろとバリエーションがある。問題数は10問以上と、なかなかボリュームがある。
上画面にはカラオケ風の歌詞と、ヒントとなる絵が次々に出てくる。下画面にはキャンバスがあり、そこに歌詞と絵から連想される絵を描いていけばいい。絵は、キャンバスのどこにでも描けるわけではなく、最終的に絵が破綻してしまわないように、描くべき場所が限定されている。
基本的には、上画面に出てくる絵をそのまま模写すればちゃんとした絵が描けるし、歌詞の中に最終的な絵のヒントとなる部分があったりするので割と簡単に、その絵が何なのか分かるようになっている。
絵描き歌が終わると、描いた絵が何だったかを答えることになる。
スロット風のドラムを回したり、10個の文字から順番に文字を拾っていったりして単語を作ればいい。
間違えた解答をすると、「たてぶえは ふとく かくと よいぞ」などと絵描き方のヒントが出てくる。
絵描き歌の途中で、キャンパスを回転させたり、描いた線が左右対称にコピーされたり、迷路を辿って線を描くなど、単純な絵描きだけではなく様々なバリエーションがある。
いろいろと変化は付けているが、それ以上の付加要素を着けて商業作品として発売するのはさすがに無理があるように思える。昨年度のチーとフーのおいしいえほんと組み合わせたりすると、児童向けの商品としてアリかなと思えなくもないが。
普通に遊べた昨年度の4作品と比べると若干劣るかなと感じた。アイデアとしては一発芸だし、すぐれた技術が盛り込まれているわけでもなく、いかにも生徒作品と言った印象を受けた。ダウンロード容量を考えると生音が入っている可能性はないので、歌声はDS内で生成していると思われるが、これは既存の読み上げエンジンを使用していると考えて間違いない。また、一部キャラクタで、ポリゴンを使用していたのも、実習の一環だろうか。
ただ、インタフェイスはよく練られていて、直感的で説明書不要のゲームシステムになっているところに任天堂のDNAを感じ取ることが出来た。昨年度の作品は、冒頭に説明書が表示されたり、チュートリアル的な場面があったりしたが、このソフトではそれが一切ないにもかかわらず、操作に戸惑うことがない。これはよく作り込まれている証拠だ。
絵を描いたあとですぐに解答するのではなく、納得のいかない場合にリトライできたり、絵が描かれていく様子をリプレイで眺められたりするのも非常によい。一発芸的なアイデアを、最大限生かすべく、いろいろと苦慮している様子が見て取れる。さらに、絵描きの途中で小節単位のスキップが出来たり、以前プレイしたステージを再挑戦できたり、解答でミスをしたときにヒントを出したりと、細かいところに気配りを感じた。チューニングにかなりの時間を割いたか、プレイヤの目線で開発が出来る優秀な生徒がいたのか。いずれにせよゲーム開発の規模が大きくなっていく中で、秀逸な1アイデアを生み出す力よりも、こういった「まとめる力」が必要とされているのではないだろうか。
最後にスタッフを紹介。
ちなみに、このスタッフロール中も絵描きが出来るお遊び要素も忘れていない。
プログラム
うえの たかおみ
せきね たくま
たなか わたる
デザイン
うらい りえ
てづか あかね
やじま きょうこ
よこやま ひとみ
サウンド
おかもと さやか
サブディレクター
やじま きょうこ
きかく/ディレクター
たなか わたる
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