2006年05月20日

レビュー:bioum(ビオウム)


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bioumタイトル画面/(c)2006 NINTENDOタイトル:bioum(ビオウム)
開発:任天堂ゲームセミナー2005
配布期間:2006年5月11日~5月24日
価格:無料

bioumはネコソギトルネードくるけし!に続く、任天堂ゲームセミナー2005生徒作品配布第3弾だ。ネコソギトルネードはインタフェイスに工夫があるものの、オーソドックスな縦スクロールシューティングであり、くるけし!が王道ともいえるタッチペンアクションパズルゲームであったのに対し、bioumは一言では言い表しにくい奇抜で不思議なソフトである。

このゲームのルールはマニュアル画面を見るのが一番だと思う。

bioumマニュアル画面/(c)2006 NINTENDOこのゲームの目的は生態系を作ることにある。人工生態系のことを、生物学では英語でバイオトープ、ドイツ語でビオトープと言うが、このゲームのタイトルはここから得たものだろう。

本来の生態系では、食う食われるの関係や、死骸を分解する微生物の存在をすべて含めたものだが、このゲームで扱う内容はもう少し単純で、食物連鎖をモチーフとしている。食物連鎖というのは、草を草食動物が食べ、草食動物を肉食動物が食べ、さらに強い肉食動物がそれを捕食する、ピラミッド状の図で表される、小学校か中学校の理科の教科書に載っているアレだ。このゲームでは分解者は考慮されていない。

実際のゲームは、最初の生物の発生→それを捕食する生物の発生→生態ピラミッドのバランス取り→さらに上の階層の生物の発生、と進んでいく。どんどん新しい生物を生み出し、ピラミッドを登っていくイメージだ。

タッチパネル上で、一筆書きで描くと、それが新しい生物となり画面上を自由に動き回る。このゲームではそれぞれの生命体のことをビオと呼称する。正体不明のなんだかよくわからない台形部分から、画面中央に向かってペンをスライドさせるとそのビオが新しく生まれてくる。

台形部分から生み出されるビオは、生態ピラミッドの最下層のものだけだ。それより上の階層にいるビオは、ひとつ下の階層のビオを捕食することによって増殖する。画面内のビオにタッチすることで、そのビオが鳴き、それをエサとするビオが寄ってくるようになっている。肉食動物が草を食べないのと同じように、二つ下の階層のビオを食べることはできない。

上画面には生態ピラミッドが常に表示されている。その階層のビオが多ければ幅広く、少なければ狭くなる。ビオにはおそらく寿命が設定されており、何もせずに放置すると寿命や捕食により絶滅してしまう。1階層でもビオを絶滅させるとゲームオーバーだ。

生態ピラミッドには理想となる形があり、それぞれの階層のビオは増やしすぎると、はみ出してしまう。画面上には最大で4階層分のビオが登場するが、そのすべてが理想となる数の範囲に収まると、さらに上の階層のビオを生み出すことができるようになる。

それぞれのビオには特徴がある。動きのすばやいもの、遅いもの、同じルートをひたすら往復するもの、その場でぐるぐる回るもの、群れたがるものなど。動きの遅いビオはなかなか捕食してくれないが、下の階層のビオを鳴かせることでうまい具合に誘導してあげるといい。

動きがかわいらしく、見ていて飽きない…というと言いすぎだが、自分で適当に描いたはずの丸や四角が、雄雄しい捕食者として小さな生態系を支配する様は、見ていてなかなか愉快ではある。その最強のビオも、プレイを進めるにつれ、世代が変わっていくと、いつの間にか小さく弱い最下層に位置するようにになる。世知辛いものだ。

20世代まで食物連鎖を続けることができればクリアだ。常にピラミッドに気を払い、操作に慣れればゲームオーバーになることなく、簡単にクリアできるだろう。初プレイでクリアしてしまう人も多いのではないだろうか。


bioum結果表示画面/(c)2006 NINTENDOどのようなビオを生み出したかは、スタッフロールの後で一覧表示される。この画面で、それぞれのビオにタッチすると、「動きがすばやい」「真ん中が好き」などのビオの性格が表示される。一番でかいビオは地球サイズらしい。20階層もある超巨大生態ピラミッドだけのことはある。
※一箇所、空欄に見えるのは、白いビオだ


さて、このゲームの感想だが、はっきり言ってしまえば「あまりおもしろくない」

というか、セミナーの生徒作品に面白さを求めるのが、そもそも無茶だというものだ。だが、ネコソギトルネードとくるけし!が異常に面白かったので、その差を強く感じてしまう。

タッチペンで描いたものが動き出すという要素と、生態系を真似たコンセプトは面白いと思うが、"それだけ"のゲームだ。それ以上でも以下でもない。このゲームを数10分以上遊ぶのは無理だろう。

だが、ちょっとした味付けで化けそうな印象は受けた。

例えば音。複数のビオの動きに合わせて和音を出したり、状況に応じてBGMを変更させると楽しそうだ。…要するにエレクトロプランクトンなのだが。

時間をもっとゆっくりにするのも良い。ちょっとこのゲームは忙しすぎるのだ。10分程度でクリアできるが、まず、ゲームの終わりを無くし、世代交代を数時間から数日にまで延ばしてみる。電源を入れっぱなしで放置する遊び方もアリだろう。1回につき10分程度遊び、次にプレイしたときにニンテンドーDSの内蔵時計を利用して、電源を切っているあいだに何か変化をもたらすのも良い。…これは巨人のドシンだな。

時間と言えば、ゲーム内の仮想時間の尺も思いっきり長くするのも良さそうだ。食う食われるの関係だけじゃなく、進化の要素を加味してビオたちに変化をもたらすのだ。…ここまで行くと完全に別のゲームになりそうだが。


bioum結果表示画面、ビオを全部アルファベットにしてみた/(c)2006 NINTENDO進化の要素を加えるならネットワークを利用しない手はない。無線を利用して、他の生態系とのやりとりをするようにするのだ。

他の生態系とやりとりが出来れば、外来種との交配で突然変異が生まれるなんて要素を加えることが出来る。すれ違い通信なら、気づいたときに見たことのないビオが自分のbioumに突然現れるなんてこともある。

他にも、弱肉強食の部分だけコンセプトを受けついで、アクションゲームに…ってこれは動物番長か。

うーん。何か要素を加えたら面白くなりそうな気もするが、どうにもならない気がしないでもない。いっそのこと、画面を3DにしてWiiで出しちゃったらどうだろうか。


bioumプレイ画面/(c)2006 NINTENDO今回もスタッフロールから開発者を転載。いずれ市販ソフトのスタッフロールに彼らの名前が見られると良いなあ。

director
 inoue seita

programming
 kasuya shogo
 sato shintaro
 minato keiichi

graphic design
 kubo amica
 kubo kenta

sound
 fujisaki masahiro


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コメント

自分も遊びましたが、生態系を模したゲームにしてはプレイヤーの関与が大きすぎだと思いました。やはり、ちょとした操作で状況が一変するようなものでないとこの手のゲームは遊びづらいかなと思います。

ビオウムじゃないですが、おいしいえほんやったら和みましたよ、かわいいです。


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