任天堂の20世紀、任天堂の21世紀 7章:NINTENDO64 1998年(2)
高まる期待
最初、NINTENDO64が誕生した1996年末に「ゼルダの伝説64」は64DD用ソフトとして発売される予定だった。その後、1997年になってROMカセットでの発売に変更になり、さらに幾度かの延期を繰り返す。展示会でプレイ可能なバージョンが出展され、雑誌にも画面写真が載るようになる頃に1998年4月と決定したかと思えば、その1998年4月1日に"秋発売予定"と任天堂のホームページ上で延期が発表される。その後、サブタイトルが「時のオカリナ」に決定し、8月には11月14日発売、定価6800円と発表された。
「ゼルダの伝説 時のオカリナ」はファミコンのディスクシステムで発売された初代「ゼルダの伝説」、「リンクの冒険」、スーパーファミコンで空前の大ヒットとなった「ゼルダの伝説 神々のトライフォース」、ゲームボーイで発売され名作と言われる「ゼルダの伝説 夢をみる島」に続く人気シリーズの最新作である。度重なる延期、NINTENDO64のソフト不足による危機感、少しずつ公開される画面写真やシステム、自然とユーザー達の間で期待が高まっていった。
異例づくし
発売が近づいた9月末の発表で11月21日発売となり、これが最終決定となる。そのわずか1週間の延期にどんな意図があったのだろうか? その発表の直前の9月半ば、セガサターン後継マシン"ドリームキャスト"が生産の遅れから、11月20日から11月27日に延期すると発表されていた。これが偶然でないのなら任天堂は時のオカリナを牽制の道具に使ったことになる。
10月中頃からテレビCMで大量に時のオカリナが露出されはじめた。真っ暗な部屋で有名人が時のオカリナをプレイし、「ちょっといいですねコレ」「やりすぎだろぉ」など感嘆の言葉を漏らす。台本はなく、彼らに実際に時のオカリナをプレイさせて正直な感想をしゃべらせ、それを撮影した。登場した有名人は深田恭子、稲森いずみ、藤原竜也、前田日明、BOSE、ユースケサンタマリア、ドリアン助川の7人。それぞれに30秒バージョン15秒バージョンがある。14パターンのCMの大量投入、ゲームのCMとしてはまさに異例だ。
発売1週間前、ゲーム情報誌最大手の週刊ファミ通誌上のクロスレビューで雑誌創刊以来初めての40点満点を記録する。このクロスレビューは4人が10点満点で発売前のソフトを評価するコーナーで、それまでの最高得点は「ゼルダの伝説 神々のトライフォース」が初めて記録した39点だった。「スーパーマリオ64」も39点である。
また、時のオカリナは販売だけではなく、NINTENDO64とのセットでのレンタルが実施される。なるべくたくさんの人に楽しんでもらいたい、NINTENDO64に触れさせたいという意図からだろう。
ついに発売
11月21日、ついに時のオカリナが発売される。ゼルダの伝説の世界観を継承しつつ、3Dであることを生かしたアクションや謎解きを思う存分味わえる。スーパーマリオ64で感じられた3Dであるための視点変更の難は、Zボタンを押すだけで正面を向いたり、敵に注目して常に視界に入れるというZ注目システムで解消され、ストレスなく3D空間を冒険できる。ゲーム内で実際にオカリナを演奏して、そのメロディによって様々な効果が現れるオカリナシステムも新鮮だ。
時のオカリナはNINTENDO64のソフトとしては爆発的に売れて年末には140万本出荷突破のテレビCMを放映する。そのCMはエンディング寸前の映像を使うなど大胆なものだった。その後、新聞の全面広告で「ゼルダ人口600万人突破」の文字と主人公のリンクを模した耳をつけた、様々な人種の人たちの群像を説明無しに掲載するなど、任天堂は全力を投じて時のオカリナをPRする。
嵐のあと
NINTENDO64を普及させるための"キラーソフト"となりうる存在であったが、それ以上にプレイステーションが市場で覇権を握っており既にシェアを逆転できる段階ではない。逆に品薄を嫌ったためか需要以上にソフトが流通し、まもなく値崩れを起こす。最終的には定価6800円のところを1980円程度でたたき売られることになる。
それでも、本体数の流通量と比較して140万本の売上げは大きくプレイヤの評判も非常に高い。ネット上では様々な掲示板で情報がやりとりされ、任天堂が自らFAQをホームページ上で公開するほどだった。
しかし、任天堂はこのソフトを最後にNINTENDO64でのソフト開発ペースを落としていく。
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ゼルダの伝説 時のオカリナ
様々な種族が暮らすハイラルの地で主人公リンクと相棒ナビィが、魔盗賊ガノンドロフと聖なるトライフォースを巡り時を超えて戦いを繰り広げる。
3Dで構築されたハイラルの世界で剣と様々なアイテムを駆使し、様々な謎を解いていく。見事に描かれたハイラルの世界観には圧倒される。特に最初に平原に出たときの開放感は是非体験していただきたい。謎解きで難解な部分もあるが、色々と試すうちに次第に先に進められる。攻略本などに頼らずに自力でクリアすることをお勧めしたい。
第2回文化庁メディア芸術祭、インタラクティブ部門大賞受賞
2004年12月01日:任天堂の20世紀、任天堂の21世紀 8章:NINTENDO64 1998年(3)
2004年11月30日:任天堂の20世紀、任天堂の21世紀 6章:NINTENDO64 1998年(1)
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コメント
時のオカリナもDSにアレンジして出してほしいですね。
投稿者 : けん | 2004年11月30日 19:02