任天堂の20世紀、任天堂の21世紀 6章:NINTENDO64 1998年(1)
パッとしない年明け
1998年も年明けはあまりソフトが出揃わない。前年末にディディーコングレーシングとヨッシーストーリーが売れていたがそれに続くものがなかった。その中、2月28日に発売されたのが任天堂のスノーボードゲーム「1080°スノーボーディング」だ。若干時期遅れの発売、コース数が少ない、2人までしか対戦できないなどマイナスポイントは多かったが、リアリティーのある雪の質感や、手応えのあるコース設定、操作性などが評価される。ゲームとしてのクオリティーと実売数のアンバランスさは1996年に発売されたウエーブレースのそれを彷彿とさせる。何が原因なのだろうか。任天堂内部で開発チームと広報の連携が上手く取れていないようにも思われる。このソフトに関して、1年後の冬にもCMを流してPRしたいと任天堂の宮本氏がコメントするが、実際にCMが流れることはなかった。
3月に入り、マリオカート64とスターフォックス64が、それぞれ同梱されていたコントローラと振動パックが付属しない単体版として4800円で再発売される。3月26日には「実況パワプルプロ野球5」を含めコナミが3本のソフトを同時に発売するなど、多くのソフトが発売される。しかしその後、4月から6月にかけて、月に3本程度のペースに落ちていく。
64DDとの連動
7月14日に任天堂から「F-ZERO X」が発売される。5800円と初期のNINTENDO64からは考えられない低価格だった。任天堂はこのソフトの広告をゲーム専門誌以外にも様々な雑誌に掲載し、テレビCMはゲーム画面を流さない手法を取る。NINTENDO64のメインの購買層である低年齢層よりも上の世代にアピールしたかったこと、CMでゲーム画面を流しても面白さは伝わらないと判断したからだろう。
30台同時走行、毎秒60フレームの描画という高い目標を達成するためにこのソフトは1つの工夫がなされている。それは挿入される音楽である。通常、ソフト内には楽譜のようなものが入っておりそれを元にハードでリアルタイムに計算をし、演奏される。この方法だとデータ量は非常に少なくて済むが、音を鳴らすためにCPUに負荷をかけ、画面表示やキャラクターの処理に影響を及ぼす。F-ZERO Xでは音楽データをCDのようにカセット内にそのままデータとして保存し、CPUに負荷をかけずに音を鳴らしている。そのため、カセットの容量の大半を音楽ファイルに占領されている。確かに高性能を引き出せるが、このようなトリッキーな方法を用いる必要に迫られるNINTENDO64は確かに開発しづらいハードなのだろう。
また、このソフトは64DDでゲーム内容を追加する仕組みを持っている。NINTENDO64本体にF-ZERO Xのカセットを挿入し、さらに追加ディスクを64DDに入れることでゲームが拡張される。具体的には64DDとの連動でコースエディット機能、追加コースなどが可能となる。しかし、肝心の64DDの発売の目処は立ってなく、長い間単体でしか遊べないこととなる。結局、「F-ZERO X EXPANSION KIT」と呼ばれる追加ディスクは約2年後になって初めてユーザーの元に届いた。
ゲームボーイとの連動
続いて8月1日に本来なら64DDで発売する予定だった「ポケモンスタジアム」がROMカセットで発売される。"64GBパック"を同梱しながら6800円と、低価格が定着していく。64GBパックはコントローラのスロットに接続し、さらに64GBパックにゲームボーイソフトを接続して使用する。このことでNINTENDO64とゲームボーイが連動することになる。ゲームはゲームボーイソフト「ポケットモンスター」の戦闘シーンを3Dで表現するものだったが、全部で151種類あるポケモンのうち40種類しか使用できない。理由は64GBパックの発売を早めたかったからか、ディスクからカセットに変更したため容量が不足したからなど、色々推測されるが、とにかくポケモンスタジアムは中途半端なソフトだと一部から非難の声が挙がる。
64GBパックの登場により、「ポケットモンスター」シリーズの影響で爆発的に増加したゲームボーイユーザーをNINTENDO64へ取り込めるようになる。このような連携が広まればメーカーとしては非常においしい。双方のマシンとソフトが売れることになるからだ。しかし、NINTENDO64においてこの試みは100%成功したとは言えない状況にあった。それはハードウェアの開発の段階で携帯型、据え置き型の双方ともに連携を前提として設計されていない点があげられるかも知れない。64GBパックは単にデータのやりとりを行うだけであり、極端な話をすればゲームボーイ本体は不要でゲームボーイソフトとNINTENDO64があればいい。NINTENDO64とゲームボーイ本体をケーブルで繋ぐ"64-GBケーブル"という周辺機器も構想として存在したがゲームボーイの基本設計としてカートリッジが接続されていないと起動しないという問題がある。そのため、このケーブルは通信用スロットではなく、カートリッジスロットとNINTENDO64のコントローラポートをつなぐ構造になっている。これではデータのやりとりは不可能で単に液晶付きのコントローラとしてしかゲームボーイが活用されない。
本格的な携帯マシンと据え置き型マシンの連携はそれぞれの次世代機に持ち越されることとなった。
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1080°(テンエイティ) スノーボーディング
2人のスノーボーダーが競い合うマッチレース、1人で好タイムを狙うタイムアタック、華麗に技を決めて点数を競うトリックアタックなど様々なモードでゲレンデを滑り降りるスノーボードゲーム
とにかくグラフィックが見事。滑るときの雪の質感も振動パックを通してダイレクトに伝わり臨場感は抜群。はじめは転けずに滑るのも大変だが、慣れてくるとトリックを出しながら滑ることも出来るようになる。スノーボードシミュレーターとしての本格さと、ゲームとしての面白さのバランスが見事に取れた秀逸な作品と言えるだろう。
トリックアタックのハーフパイプは何度も挑戦したくなる面白さ。ゲームのタイトルにもなっている1080°AIR(3回転ジャンプ)はコマンドが非常に難しく、出せたときの達成感は最高だ。
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F-ZERO X
スーパーファミコンで発売された近未来レースゲーム「F-ZERO」の続編。64版ではループやパイプなど3Dであることを生かしたスリリングなコースを売りにしている
難易度が高くなると自力での1位は難しい。サイドアタックなどの攻撃方法で敵を倒し、1位を狙う。自分以外の29台を全滅させるまでのタイムアタックをするデスレースモードもおもしろいが、コースが1つしかないのがもったいない。ゲームをクリアしていくとランダムにコースを生成するカップも出現。何度も楽しめるようになる。
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ポケモンスタジアム
ゲームボーイで発売された「ポケットモンスター」の対戦を3D化するためのソフト。ポケモン図鑑も3D化する。ポケットモンスター赤青緑ピカチュウバージョンに対応。
これはゲームではなく、ツールだと思った方がよいだろう。ポケモンスタジアム2の発売後、急激に市場価格が下がった。
2004年11月30日:任天堂の20世紀、任天堂の21世紀 7章:NINTENDO64 1998年(2)
2004年11月30日:任天堂の20世紀、任天堂の21世紀 5章:NINTENDO64 1997年(2)
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