2019年07月11日

なぜSwitch Liteは7月に発表され、TVモードが削除されたのか


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任天堂はSwitchの携帯専用新モデル「Nintendo Switch Lite」を7月10日夜に発表した。
発売は2019年9月20日、価格は税別19,980円。

従来型Switchとの主な違いは以下の通り。

・小型化・軽量化した
・コントローラが本体と一体化して取り外しできない
・Nintendo Switchドックに接続してテレビに出力する機能に対応していない
・そのため、ドックは非同梱
・モーションIRカメラなし
・HD振動に非対応
・バッテリが若干長持ち
・安い

細かい違いは任天堂のサイトの比較表を見てほしい。

発表は唐突で、公式サイト・Twitter・Youtubeなどで事前の予告もなく情報が開示された。

理由は後述するが、そろそろ発表されるタイミングだろうという予感はあった。
仕様も概ね予想通りだが、意外だったのがTVモード完全非対応という点である。別売りのドックで対応するものだと思っていたので驚いた。
しかし、よくよく考えるとTVモードに対応させないのは当然のことだと思える。
今回は、発表と発売の時期とTVモード非対応の理由について解説したい。

なぜ9月に発売されるのか

これは、国内に限って言えば「10月の消費税増税」が一番の要因だろう。
駆け込み需要で財布の紐が緩む時期だから、発売するタイミングとしてはとても良い。

ただ、増税の影響があるのは日本国内だけで、Switchの過去の売れ行きを見ると、北米や欧州の比率が高く、日本の比率はさほど大きくない。
全世界的に消費が増える感謝祭・クリスマス・年末が続く11月下旬から12月のほうが新ハードがよく売れる。しかし、完全な新ハードではなくバリエーションなので、スタートダッシュはやや鈍い傾向にあるから、発売日と12月の二段階で売上を伸ばす作戦のように感じられる。
携帯型ゲーム機は所有者が持ち歩くことで他の人達の目に触れる機会が増え、消費が消費を生む効果が生まれることから、12月前にある程度普及させて露出を増やすことも計算に入れているのではないだろうか。

なぜ7月10日に発表したのか

6月中旬に世界中が注目を集めるE3が開催されたばかりで、そこで発表せず、ポケモンの新情報を流すタイミングでも発表せず、特になにもなさそうな7月10日に発表されたのはなぜだろうか。

E3よりも発表を遅らせた理由は、ソフトの情報が霞んでしまうのを避けるためだろう。
ハードの発表はニュースバリューが高いのでE3などのイベントのタイミングに合わせる必要がない。E3でハードも披露すると、世間やメディアの注目はそちらに集中してしまい、せっかくのソフト披露の機会が失われるから、わざとずらしたのだろう。
また、話題が集中することを避けるため株主総会よりもあとにしたという部分もあると思われるため、発表は7月以降となるのは必然的だろう。

ではなぜ、7月10日だったのか。
その理由はこれだ。

ポケモンソード・シールドの予約開始にあわせたのである。
ポケモンデザインのSwitch Liteを出す以上、予約解禁日は合わせたほうがいいし、後日発表だと「本体を先に買ったけど、ポケモンデザインのほうが欲しかった。どうしよう…」と、困ってしまう人が出てくる。

予約解禁日ごとあとにずらすということも可能だが、ソード・シールドの発売は11月15日で年末商戦よりも少し前なので、夏休み商戦用の軍資金を前借りできるタイミングを狙って7月中に設定したのだろう。

発売は増税前、発表はE3や株主総会のあとで夏休み突入前。こういった条件を積み上げると
Switch Liteの発表は、ギリギリのタイミングだったことが分かる。

発売日はいつ決まったのか

発売日は、発表の直前まで調整を続けていた可能性がある。

小泉歓晃さんがSwitch Liteの特徴を語るYoutubeの初出映像において、6分5秒あたりで「発売予定日は、このとおりです」と話し、字幕で発売日と価格を告知している。
文字だけで告知するメリットはないので、おそらく動画撮影時点では発売日の変動の可能性があったのだろう。何パターンか撮影するより、発売日を言わないほうが楽だ。

任天堂は以前も同じようなことをしている。
1997年に「NINTENDO 64が3月14日から(電車の騒音で聞こえず)になるの」と踏切の向こう側の竹内結子さんが呼びかける値下げCMを放送した。
後で語られたことだが、CM撮影時点では値下げ後の価格が確定しておらず、価格が決まってから金額を告知するナレーションを追加するという手法をとったのだという。

発売日の確定が遅れたのは、増税が10月に実際に行われるかどうか、ギリギリまで見極めようとしていたのではないだろうか。
それと、6月末の日米首脳会談で追加関税がどうなるのか、結果を待っていたという点もあるだろう。

なぜ携帯に特化したハードを出すのか

ポケモンの例を挙げるまでもなく、ニンテンドー3DSで発売されていたタイトルの続編がSwitchで発売される傾向が続いている。Switchは、ニンテンドー3DSの実質的な後継機となった。
据え置き型ゲーム機と携帯ゲーム機の開発部門を統合した結果生まれたのがSwitchである。ニンテンドー3DSがWii Uと比べて普及していたため、長く存続していたがSwitch Liteの統合で、ようやく息の根を止めることになるだろう。今までお疲れ様でした。

携帯ゲームとして、小型化、軽量化は必須で、その結果コントローラの分離機能や、それなりにコストの高そうなHD振動機能などがカットされドック同梱もなくなったことから価格も1万円下がった。ポケモン新作とともに、低年齢層への普及が広まることだろう。

しかしここで若干の違和感がある。

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カラーリングやデザインが低年齢層ターゲットのハードにしてはおしゃれすぎない?

ここで、Switch Liteのもう一つの役目が見えてくる。「PlayStation Vitaの後継機」である。
2011年に発売されたVitaは、今年3月に出荷が終了してしまい、後継機は作られていない。
そうなると、Vitaで発売されていたソフトの続編がSwitchに流れ込み、Switch Liteが実質的なVitaの後継機となることは自然な流れだ。

Vitaで発売され、Switchに引き継がれるソフトは具体的にはどのようなタイトルだろうか。

乙女ゲームである。

任天堂は、今年になって乙女ゲーム専用ページまで作成している。露骨にVitaユーザを獲得しようとしている。

先日PSPやVitaで人気のある「うたの☆プリンスさまっ♪(うたプリ)」の最新タイトルが発売ハードをSwitchに変更することが発表された。アニメ4期、アニメ劇場版(現在公開中(応援上映もやってる(先日見に行った)))もある人気タイトルだ。
Switchで発売されるのにタイトルが「Dolce Vita」というのがだいぶ面白い。

乙女ゲームのユーザ層はおおむね若い女性で、Switch Liteのデザインはそのあたりを意識したように思える。前々から、Switchへの乙女ゲームの移植が多かったものの、女性のバッグに入れるにはかさばるサイズであることに対し、不満の声が出ていた。スキマ時間に遊ぶ、自室で遊ぶという傾向が強く、もともとVitaでプレイしていた人たちにとってTVとの接続はあまり重要視されていない。
そう考えると、Switch Liteの登場で乙女ゲームファンが一気にSwichに流れ込む可能性が高い。

なぜTVモード非対応なのか

一番不可解なのはドックに接続してHDMI出力するTVモードが廃止された点だ。
Switchがスイッチと名付けられた由来の一つである、携帯ゲーム機と据え置きゲーム機の切り替え機能を省いたのはなぜか。

SwitchとSwitch Liteは外見が異なるものの、内部のハードウェア的にはほぼ同等だろう。それならばSwitch Liteのサイズに合わせたドックを別売りするだけでTVモードは使用可能だ。おそらくHDMI出力機能自体は統合チップに搭載されたものなのでそれを削ったところで、コスト的なメリットはゼロだろう。
それどころか、Switch Liteの底面には、Switchがドックに接続するときに使用するガイド用のくぼみまで用意されている。将来的に対応ドックが出る可能性もあるし、おそらくサードパーティ製のUSB-HDMI変換ケーブルでテレビ出力は可能だろう(ソフトウェア的に機能を殺していなければ)

ではなぜ、TVモードには対応しないと明確に宣言したのだろうか?

これは、マーケティング的な都合によるものだと推測する。

試しに、Switch LiteでTV出力が可能だとして、必要なものを揃えたらいくらになるのか計算してみよう。消費税別。

Switch Lite本体:19,980円
Switch Lite専用ドック単体:5,980円(Switch用の価格と同じと仮定)
HDMIケーブル:1,500円(任天堂純正品の価格)
Joy-Con(左右):7,480円
Joy-Con充電グリップ:2,480円
合計:37,420円

Switch本体セットの定価29,980円よりも3割ほど高い。
Joy-Con+充電グリップの代わりにPROコントローラにした場合でも34,440円になる。
ケーブルを省いたり、多少値引きしてもSwitch本体セットよりどうしても高額になる。

「高くてサイズが大きな据え置き兼携帯ゲーム機と、安くて小さな携帯ゲーム機」というシンプルな比較なら、消費者にとって非常にわかりやすい。
しかし「高くてサイズが大きな据え置き兼携帯ゲーム機と、安くて小さな携帯ゲーム機ですが、周辺機器を買い揃えることで据え置き型と同じように使えて、その場合の合計金額は通常版より高いです」と言われると「えっ…じゃあ、どっちを買えばいいの…」となってしまう。

発売してしばらく買ってから専用ドックを発売する可能性はあるが、発売日時点では「安くて小さな携帯ゲーム機です!」と言い切ったほうがいいと判断したのだろう。

Switch Liteは売れるのか?

一時期の品薄状態から脱したものの、株主総会の場でも説明があったが、Switchの販売は順調だ。
ニンテンドーDSの時代に、DS Liteの発売後、社会現象とも言えるような品薄状態が発生したことがある。これから年度末に向けてポケモンやどうぶつの森など、かつて携帯ゲーム機で社会現象を起こしたソフトがリリースされると、Switch Liteに注目が集まるだろう。再び品薄状態になる可能性は高いと思われる。

個人的にはほぼTVモードでしか遊んでいないので、買う予定はないのだが、複数台本体でのプレイが今よりも便利に改善されるのであれば買ってもいいかなあと思っている。

余談ではあるが、先日の株主総会後、毎年株主総会の会場でしか会わない友人と話をしていて、携帯版Switchの話題になった。
「9月の増税前駆け込みのソフト発売ラッシュひどい…」
「9月といえば、ドラクエで同梱版出るのに、ポケモンで本体同梱版出ないのは不思議」
「携帯版作ってて、それで出すのかな。9月のゲームショウあたりで発表か」
「でもポケモンの予約もうすぐ始まるし、あとで同梱版発表したらクレーム出ますよね」
「じゃあ、もうすぐ発表されますね」
ほぼ当たりやん。


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