2015年06月26日

任天堂株主総会レポート2015


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いままで、任天堂株を"最も高い任天堂グッズ"と呼んでいたのだが、マリオカート8とコラボしたメルセデス・ベンツGLAをマリオグッズとみなした場合に、そちらが最高額になってしまうという問題が発生している。
というわけで、最高額ではないかもしれないがそれなりに高い任天堂グッズの権利を行使しておととし昨年につづいて任天堂の株主総会に行ってきた。

あいにくの雨

最寄り駅からは交差点ごとに若手の任天堂社員が案内板を持って立っていてくれるので会場まで一切迷わなくて済むのだが、結構な雨でお気の毒な感じだった。風邪ひかないようにね。

去年と同じく研究棟での株主総会。ビルも中身もトイレもピカピカ。
入場開始時刻より少し早くついてしまったので、ロビーで待機。冷たいお茶が出た。

会場入りしてから1時間やることがなく、3DSのすれちがい広場で暇つぶし。周りにも同じことを考えている人が多数いて、全国からやってきたMiiがひっきりなしに私の3DSに吸い込まれていく。数十名ほどすれ違いを消化したところ、昨年すれ違った人も多数いて、二度目のすれ違いになっている方が結構な比率で存在した。おかげで今まで一度もすれ違うことのなかった高知県民ともすれ違いに成功し、全都道府県とのすれ違いに成功した。ありがたい。

そんなこんなで、1時間経っていて役員の方々が入場。
岩田社長はネット越しに見るよりもスリムになった様子だが、病気でやつれているという印象は受けなかった。

事業報告

まずは2014年度の業績の報告などから。
サイト上でpdfが配布されている第75期報告書などとおおむね同じ内容なので、ざっくりと割愛する。
詳細も後ほど任天堂のサイト上に載るはずなのでそちらをご参考にしてください。

・Newニンテンドー3DSは順調だが、旧3DSが伸び悩んだ。
・3DSソフトは順調で自社製ソフトだけではなく、サードパーティソフトも売れている
・Wii Uはマリオカート8とスマブラが大ヒットで、海外で特に順調で本体が338万台、ソフトが2440万本
・収支のバランスが改善され、4期ぶりの営業黒字
・ハード・ソフト一体型のビデオゲーム専用機プラットフォームを中核として、プレミアムなゲーム体験を世界に提供する
・amiiboはさらなる充実を目指す
・DeNAと業務・資本提携を行い、年内に当社IPを使ったスマートデバイスアプリをリリースする
・ゲーム専用機とスマートデバイスでは特性が異なるので、それぞれに適したゲームを提供する
・ユニバーサルパークスアンドリゾート社と当社IPを使ったテーマーパークビジネスの提携で合意した
・娯楽はQOL(生活の質)を楽しく向上させるものと再定義して、ゲーム以外でもQOLを向上させるビジネスを展開する

まあ、とくに目新しい情報はなく、今までの主張の繰り返しである。
NXやスマートデバイス向けアプリはもちろん、睡眠を非接触で記録するというQOLデバイスについても追加情報なし。

続けて、質疑応答。全文は後日サイト上に掲載されるので気になった部分のみピックアップ

パッケージ版とダウンロード版の価格差

株主「パッケージ版とダウンロード版を比較すると、実売価格がダウンロード版のほうが高い」

岩田「ダウンロード版を安くしている企業もあるが、任天堂としては、パッケージ版とダウンロード版のソフトの価値は同じなので同じ価格にしたいと考えている。パッケージ版は、在庫リスクもあるため値下げ販売されることもあるが、任天堂が価格をコントロールすることができない。販売価格を指示してしまうと、法律に触れてしまう。
クラブニンテンドーに変わる新しいメンバーシップサービスを秋に提供予定だが、その中でダウンロード版を購入したお客様にもメリットがあるようにしたい」

だいぶ微妙なニュアンスだったが、秋にスタートするDeNAと共同開発するメンバーシップサービスで、ダウンロード版の優遇があると判断していいのかな。ほぼ全ソフトダウンロード版で購入している人間としては歓迎したいところ。

NXの立ち上がりは失敗しないか

株主「3DSとWii Uで連続して立ち上がりに失敗した。次に発売する新ハードであるNXは大丈夫か?」

岩田「3DSはいくつかの施策で立て直しが出来たが、Wii Uはそれができていない。過去を振り返ってみると、ニンテンドーDSでも立ち上げがうまく行ったとはいえず、脳トレなどで立て直した。スタートダッシュが成功したといえるハードは過去にWiiぐらいしかない。
DeNAとの協業を発表した際に、世の中の論調やメディアがスマートデバイスに任天堂が専念するのではないかと言われていたので、ゲーム機ビジネスを続けることを伝えるために本来よりも早めにNXを発表した。NXに関する詳細は2016年にならないと話せない」

この方の他にもNXについて聞いている方が居たが、"NXについては2016年まで話せない"ということは、以前から散々いわれていることなので、貴重な質疑応答の時間をNXの質問で潰すのはかんべんして欲しいところ。
あまり早く情報を出すと、対策を取られるし、パクられる(岩田さんは遠回しに"取り入れられる"と表現していた)おそれがあるということで、これ以上はNXについて言えないそうだ。

シアトル・マリナーズについて

株主「シアトル・マリナーズの筆頭オーナーになっていることは任天堂のメリットになっているか。ランディ・ジョンソンが殿堂入りした際に51番が永久欠番になる可能性があるが、イチローの番号とかぶっていることについて何か考えはあるか?」

岩田「NOAがシアトル・マリナーズの筆頭オーナーなのは前社長の山内から譲り受けたから。日本企業がメジャーリーグ企業オーナーになることは意外性を持って受け入れられたので、今後も大事にしたい。ランディ・ジョンソンとイチローの背番号については、100%オーナーではない任天堂の一存で決められる問題ではない。個人的にはイチローさんを応援したいが、この場で答える内容ではない」

質疑応答の時間限られてるんだから、本業と関係ない質問はやめて…ッ!!
マリナーズは山内さんの遺産の一つなのだから、大事に保有してください。

E3が寂しかった

株主「今年のE3のラインナップが寂しかった。年内発売のタイトルだけ披露した理由は?」

岩田「E3の日程が例年と違って株主総会と近いスケジュールになったため、私は出席していない。宮本から話してもらう」

宮本「指摘された部分について、"一部は"事実であると思う。インターネットが普及したのでE3が世界で見られるようになったが、本来はアメリカのトレードショウ。他社はだいぶ先の商品もビデオ展示していたが、任天堂はプレイアブル展示をして、高い評価を受けた。取材でも評価された印象を受けた」

岩田「(会場のビデオを放映)任天堂のブースは他社と毛色が違っていて、みんなニコニコしている。今年は記者発表会を行わずに、デジタルイベントを放映し、直前にはスマブラの新要素の発表と、ニンテンドーワールドチャンピオンシップというゲーム大会も開いた。ワールドチャンピオンシップは非常に盛り上がった。ネット中継が不評だったことは反省しているが、E3全体としては任天堂が不評だったかというと必ずしもそうではない」

任天堂は都合の悪いことを聞かれると『××だといわれているが、必ずしもそうではなく○○という意見もあった』という表現でごまかすことが多いのだけど、××と○○どっちが多いという話は全くしない。株式分割についても、毎年のように分割しないのかと質問されて、毎年のように分割を希望していない株主もいると反論する。賛成と反対、どっちが多いか言ってくれよ。
個人的には今年のE3はガッカリでした。

スマートデバイス向けの課金方式

株主「年内配信予定のスマートデバイス向けアプリは売り切りの有料アプリなのか、無料プラス追加課金のアプリなのか?」

岩田「課金方式には売り切りタイプと、最初は無料のフリートゥプレイがある。ゲームに対しての価値を高めたい会社としてはフリートゥプレイはあまりいい言葉ではないので、フリートゥスタートと呼ぶようにしている。始めるのはタダという意味。現状、売り切りタイプはあまり成功していない。フリートゥスタートには、ゲームを有利に進めたり、レアなアイテムを集めるためにエキサイトさせて決済させるソフトがあるが、社会問題にもなっている。
任天堂は従来アピールしていた、幅広い年齢や、初心者、性別、世界中のあらゆる文化に受け入れられたい。国内で収益性の高いアプリは、お金を支払っているユーザが非常に少なくて、その人がゲーム機を何台も買える金額を支払っているものがある。世界では、そのようなものは少なく、幅広い人々から少しずつお金を払ってもらっているアプリのほうが受け入れられている。簡単ない道ではないが、世界でヒットするアプリを複数作り、幅広い層から広く薄くお金を支払っていただくことで収益性を高めたい」

岩田さんがフリートゥスタートという表現にこだわる理由が判明。なるほどね。遊びに価値を求める企業としては、遊ぶ行為が無料であるという意味に取られるフリートゥプレイは避けたいということか。
いわゆる廃課金問題について、ちゃんと検討課題として認識していてそうならない手法で収益をあげようとしている姿勢は評価したい。ただ、人によっては0円と100円の間の壁は、100円と10,000円の間の壁よりも厚いので、だいぶ険しい道ではある。

バーチャルコンソールの充実化

これが最後の質問

株主「Splatoonが世界で100万本売れた。新規タイトルが受け入れられたのはうれしい。質問はバーチャルコンソールについて。バーチャルコンソールでしか手に入らないソフトが増えているし、配信が終わったソフトもある。できれば全てのソフトを遊べるようにして欲しい。もっと充実できないか」

岩田「(動画を流しながら)まず、Splatoonについて。最近テレビでも宣伝をしているが、かなり荒唐無稽な世界観の全くの新作。より多く自分色のインクに染めたチームが勝ち。シリーズ作ではなだけに楽観的に考えていなかったので、我々も短期間で100万本売れてありがたいと思っている。
バーチャルコンソールについて。ダウンロード売上は、全体として313億円あって前期と比較して30%増えているが、バーチャルコンソールだけの売上について個別開示はしていない。個別に開示するとキリがなくなる。動作テストをして、現在の基準で適切な内容なのか調べるなど、手作業の部分が多い。過去作に多く人員を割くわけにはいかない。権利関係の問題もある。サードパーティにも当時の権利者に許諾をとって貰う必要もある」

今までの質問者が全スルーしていたSplatoonに軽く触れただけで、嬉々としてビデオを流す岩田さん、今回の株主総会で一番輝いた瞬間である。そういえば、amiiboについても誰も触れなかったな…。
楽観的に考えてなくて予想以上に売れたとか、売り切れ続出とか、大ヒット御礼と手放しに喜ぶことじゃない。開発部門が必死になって作ってきたソフトの価値を、営業部門が面白さを理解できずにソフトの価値に合うだけの売り込みが出来なくて、機会損失を発生させている大失敗事案だってことを理解して欲しい。もっと売れるポテンシャルがあるソフトを営業努力不足で足を引っ張ってる。
Splatoonにしてもamiiboの売り切れにしても、ゲーム開発以外の部門の怠慢やミスが目立つので、指名されたら突っ込んでやろうと思っていたのだが、残念ながら私の挙手は虚しく天を突いただけだった。私の右手はスカイウォードソードか。

※追記
Splatoonの広報・宣伝は今までの任天堂にない最高の仕事をしていると思います。ほかのソフトも見習ってもらいたいレベル。怠慢だと言っているのは広報ではなく、問屋や小売に対して売り込み営業をしている部門や、amiiboの生産数を決定した部署のことです。
※追記ここまで

盛り上がりに欠けるのでわざわざ遠方から休みをとって参加した人間としては物足りない感があったが、厳しい責任追及もなく、度を超えたぶっ飛んだ質問もなく、株主目線で見れば非常に落ち着いたとてもいい株主総会だと思う。

おみやげ

今回のおみやげはこちら。

Splatoonグッズとかないよね。ですよね。

関連記事
任天堂株主総会レポート2013 | N-Styles
任天堂株主総会レポート2014 | N-Styles


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この記事の前後の記事
2015年07月14日:岩田社長、ありがとう。おつかれさま。
2015年06月21日:Splatoonは引き算で作られている

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