2014年06月27日

任天堂株主総会レポート 2014


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去年に引き続き、任天堂の株主総会に参加してきた。

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新社屋での株主総会

事前に発表されていたように、岩田社長が胆管腫瘍摘出手術直後ということで、今月10日に開催されたE3に引き続き欠席となった。

任天堂の定款15条で、株主総会の議長は取締役社長が務める規定があるが、今回は15条の2で定められた「取締役社長に事故あるときは、取締役会の決議によってあらかじめ定めた順序により他の取締役がこれに代わる」の規定に基づき、専務取締役である竹田玄洋氏が議長を務めることとなった。

会場は建てられたばかりで今月から使用開始となっている”研究棟"と呼ばれる新社屋7階の大会議室で行われた。

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研究棟は、その名の通り開発部門が入居する社屋で、本社は今後もその他の部門が使用することになる。

白い外壁、均等に並んだ窓ガラス、直方体の社屋は、本社と外見がよく似ている。下の写真は研究棟の敷地内から見た本社。

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本社と研究棟は非常に近くに建てられていて、互いに見える距離にあるが、隣り合っているわけではない。まあ、これはちょうどいい土地がなかったのでしょうがない。

竹田氏が議長を務める初の株主総会

10時に株主総会はスタート。ざっと見た感じでは1500人ぐらいは入りそうな大会議室に対し、2/3程度が座っていただろうか。去年とさほど変わらない印象。

まず、議長の竹田氏から岩田社長欠席についてのお詫びが述べられた。岩田社長のコメントも代読されたが、サイトに掲載されている文章と同一のものだった。

任天堂側からの報告事項はサイトに掲載されているpdfを元にしたものなので、そちらを目に通したほうがいいだろう。
3DSは比較的好調なものの、Wii Uは不調で3期連続の赤字という報告。

岩田社長と比べると、竹田氏はこういった場に慣れていないのか、報告内容の読み上げに手間取る場面があった。貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)みたいな言いづらい用語が多いのでしょうがないか。

だいたいは今まで発表されていた内容と同じものだが、「世界同時発売したWii Uのマリオカート8が発売から1ヶ月で200万本と好調で、本体の売上も上向いています」といっていた部分が気になった。
マリオカートが世界同時発売で200万本が好調といえる数字なのか、調査会社がWii Uの売上の数字が毎週出しているが、それが任天堂として満足しているものなのか、疑問に思える。もっと危機感を持った方がいいのでは。

ひと通り説明が終わってから質疑応答タイム。
いままでは岩田社長が回答することが多かったが、議長の竹田氏がハードウェアの部署出身ということもあり、質問内容に応じて担当役員に回答を促すスタイルとなった。ソフト面は宮本氏と高橋伸也氏、プロモーションは大和氏、IRは君島氏が主に回答していた。

株主総会中のメモを元に再構成しており若干ニュアンスが異なる部分があると思われるので、参考程度にして欲しい。詳細は来週にも任天堂のサイト上に掲載されるので、正確な情報はそちらをお待ちください。
全部のせてもしょうがないので、気になった点だけ抜粋。順番は実際のものと異なります。

E3の手応え

株主「株主総会がはじまるまでの間、スクリーンに注意事項がずっと表示されているが、注意事項の代わりにE3のビデオでも流したらどうだろうか?」

竹田「ちょうどE3のビデオがありますのでご紹介します」

(サイト掲載のビデオと同じものを上映)

宮本茂「ロサンゼルスで、5万人を集めたショウが開催された。流通関係者やマスコミが中心で、一般参加のショウではないのに5万人なので大規模なもの。いろいろ展開したが、Splatoonというペンキを撃ちあうゲームを発表したが、話題を集めた。若手を中心としたチームで開発していて、それが評価されて喜んでいる。私は、ゲームパッドを活用した実験的なゲームを紹介した。ゲームパッドの活用して、リビングで遊んでいる本人以外も楽しめることをPRしてきた。他社と比べられたときに、他社は銃を撃ちあうゲームが大半で、似通っている中で、任天堂は多彩なソフトが揃っていて安心できると評価された」

高橋伸也「海外でamiiboに対する反応が大きい。これが一番日本と違うところ」

E3では、Splatoonやamiiboが注目されたということで、発売が楽しみだ。国内でも発売まで露出を増やして欲しいところ。

ゼルダ新作

株主「Wii Uの新作ゼルダの情報はいつ出ますか?来年のE3までに出ますか?」

宮本「正式に発表していること以外は申し上げられない。オープンワールドと一般に言われる用語を使って開発するのは好きではないのだが、伝わりやすいのでオープンワールド呼んでいる。いままでのゼルダの、順番にクリアしていくという定番を崩していっている。中間地点として、神々のトライフォースでは、アイテムをレンタルする手法をとった。まだ発表していないが、3DSでネタがあるので期待して欲しい」

作っていないわけがないと思っていたが、未発表の3DS版ゼルダの新作が出ることが期待できそう。

スマートデバイスへの取り組み

株主「子どもたちはお下がりのスマートホンで無料ゲームで遊んでいる。スマートホンのソフトについて任天堂はどう向き合っていくのか、開発はしているのか」

高橋伸也「スマートデバイス向けのアプリも開発している。アプリを通じて、任天堂のハードを持っていない人も含めて、世界中のユーザとのつながりを作り、任天堂のゲームの魅力を伝えることを考えている」

微妙なニュアンスだが、「スマホ用のゲームを作るのではなく、任天堂のゲームを楽しむためのアプリをスマホ用に出す」という以前から言われている方針のままのようだ。

リビング用一人プレイゲーム

株主「リビングで一人でのめり込むタイプのソフトが、Wii Uでなかなか出てこない。ゼノブレイドクロスやベヨネッタ2が出るまで、本体発売から2年かかった」

高橋伸也「ちょっと遅れた感はあるが、ゼノブレイドクロスやデビルズサードなどのソフトを予定している。今後も情報を出していきたい。」

宮本「マイクロソフトやソニーで出している会社も苦労している。数百億を超えるプロジェクトもあって、ベスト10にはいらないと採算が取れないこともある。準備に時間がかかったが、Wii Uでもそういったソフトを出していく」

大和「新作が出ても、市場に押し出していかなければ売れない。ここ数年余暇の過ごし方として、選択肢が増えて上位にランクされにくくなってきた。PRについても情報の流れが激変していて、ついていけてないのではないかと考えている。営業として、スマートデバイスやSNSを使った宣伝やキャンペーンをしっかり届けて売上につなげる取り組みをしていきたい」

一人用のガッツリ遊ぶゲームは、開発コストが大きく、PRをしっかりやらないと採算が取れないという問題があることは認識していて、そこを改善していこうとしているというが、良いゲームが売れないのは長年の問題なので一朝一夕に解決するものではない。

ソフトウェアについて、会社全体しての大きな方針については宮本氏が、具体的な内容が絡む直近の個別タイトルについては高橋伸也氏が答えることが多いように感じた。実務的な部分において、高橋氏が宮本氏の後継者となっているのではないだろうか。

経営責任について

株主「ゲームのことはわからない。他の株主はゲームについての子供っぽい質問ばかり。経営の話をして欲しい」(会場から大きな拍手)

竹田「大変厳しいご意見。経営陣としてはビジネスの勢いを回復することが経営陣の責任のとり方だと考えている」

君島「株主総会は株主様と我々経営陣とのコミュニケーションの場と考えている。どういうゲームを出すのかということを株主様に理解してもらうことも大事。もちろん、経営についてもコミュニケーションも取りたい」

ゲーム会社の株主総会に来ておいてゲームのことはわからないというのもどうかと思うが、株主総会の質疑応答で「ゼルダの次の情報はいつ出るのか」という質問をぶつけるのもひどい話で、ご意見はごもっともだと思った。
ただ、例えば過去を反省したからといって、Wii Uのローンチをやり直しできるわけではない。過去を振り返るよりも、次に出すゲームの情報のほうが経営上重要であるから、責任追及よりも将来の話が多くなるのは仕方がないのではないだろうか。

"社長が訊く"と、岩田社長の体調不良

株主「任天堂の公式サイトにある"社長が訊く"というコーナーがあるが、更新が途絶えているが、理由は?」

大和「(回答がかなり曖昧で要点がまとめられないので省略。"ホームページを利用したプロモーションで新たなチャレンジをする"的な内容)」

宮本「大和が曖昧な回答をしたが、体調不良とは全く無関係。半年前から、社長が訊くのコーナーが届いているのが一部の方にとどまっている、もっと広くPRをする方法をとったほうがいいのではないかと考え、規模を縮小している」

開発の裏話を知ることが出来て、ゲーム好きが喜ぶマニアックなコーナーだったが、一部のマニアしか喜ばないということなのだろう。そりゃそうだ。ゲームがほしい多くの人は、PVを見たほうがてっとり早い。長い文章を読む人たちはごく一部だ。
名言はしなかったが、新たなチャレンジの一つは先日からスタートしたNintendo Newsだろう。確かに、こちらのほうが社長が訊くよりは多くの人に届く。

宮本さんはひょうひょうとしていてふてぶてしい?

株主「岩田社長は責任感が強すぎて、それが原因で病気になったのでは。宮本専務はひょうひょうとしているイメージが合って、岩田社長もふてぶてしさを身につけて欲しいと伝えて欲しい」

竹田「大変貴重なご意見ありがとうございます」

宮本「私もけっこう心労が……」(会場大爆笑)

今回の株主総会のハイライトは、この回答の瞬間だった。

ストレスがなさそうだと言われた宮本さんが、切なそうに心労を訴える姿に全株主が共感した瞬間だった。そりゃそうだ。っていうか、失礼だろこの質問。

総会終了

質疑応答が終わり、提案された議案は3案とも可決で、株主総会は終了した。

発表から発売まで間があるソフトのプロモーションのプラン、具体的に言うとSplatoonが今盛り上がってて、発売まで持続させるような施策があるのか聞きたかったのだが、今回は残念ながら指名されなかった。
3期連続赤字で、経営陣交代を要求されてもおかしくないタイミングでの株主総会だったが、ゲームの質問ばかりだと憤慨している株主さん以外、荒れる様子がない平和な感じの株主総会だった。自分のようなファン株主が多いのか、危機感がないのか分からないが、いずれにせよ経営陣には結果を出して欲しいところである。

おみやげ

今回のおみやげはマリオのタオルと、ピカチュウのクッキー、常温のお茶。

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CSRレポートは総会終了後に渡された。これはpdfでサイト上にも掲載されている。

おまけ

新社屋のエントランスにある電灯は、風力発電と太陽光発電を併用している。CSRレポートを見ると、屋上にも太陽光発電システムがあるようだ。

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株主総会後は、伏見稲荷大社に行って祀られているうか様に任天堂の業績向上をお祈りしてきました。

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※補足説明
伏見稲荷大社はスターフォックス発祥の地です。
社長が訊く『スターフォックス64 3D』 伏見稲荷大社とフォックスの関係
主祭神である"うか様"こと宇迦之御魂大神はマリオカートが好きな(設定の漫画が存在する)神様です。
また、写真を撮り忘れましたが、トライフォースと同じ形状の文様が境内にあります。


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