Wiiソフトレビュー:「スーパーペーパーマリオ」
タイトル:スーパーペーパーマリオ
開発:インテリジェントシステムズ
発売:任天堂
発売日:2007年4月19日
価格:5,800円
あれ?なんか違う…
やった!マリオの新作だ!いやっほー!と喜んで飛びついたのだが、プレイして違和感。なんか違う。どこか違う。
発売前からどういうソフトか把握するために色々と情報をあさっていたので、純粋なアクションではないことは分かっていたのだが、想像していた内容とかけ離れたソフトだった。
CMでも公式サイトでも、アクションシーンがクローズアップされているが、「スーパーペーパーマリオ」はアクションアドベンチャーなのである。ひたすら右に右に突き進むマリオタイプのアクションではなく、このゲームの最大の特徴である「次元ワザ」で2D画面と3D画面をこまめに切り替えながらマップの隅々まで探求していくタイプのソフトだ。
また、いわゆるBダッシュが実装されていないことが、マリオタイプでないことを端的に現している。この1点だけでもマリオらしさが薄れてしまっている。30分もプレイすれば違和感は消えるが、最初はなんだか妙な感覚がつきまとう。見た目はこれ以上にないぐらいにマリオなのだが。
オマージュの結晶
このゲームは、基本は横スクロールのアクションで、ステージの最後にあるゴールブロックをたたくとステージクリアとなる。各ステージの名称は1-1~1-4、2-1~と1ワールドごとに4ステージの構成となっている。このあたりは初代スーパーマリオブラザーズと同じ。他にも画面構成もシステムでスーパーマリオとの共通点が多いが、随所で違いが見られる。システムを周到しているというよりも徹底的にオマージュをちりばめている感じ。
いわゆる残機が存在するストック制ではなく、ライフ制となっており、敵と接触しても即死はしないが、ライフが0になると即ゲームオーバーとなる。マリオ型アクションだと穴に落下すると即死でステージ最初に戻されるが、今作ではライフが減って穴のフチにもどされるだけだ。敵キャラもライフ制を採用されており、敵のライフがマリオの攻撃力を上回る場合は2回以上踏みつけなければ倒せない。
また、コインは100個集めるとストックが増えるシステムではなく、アイテムを購入するための通貨システムとして機能し、スコアはレベルアップのための経験値扱いとなっている。一定のスコアに到達すると攻撃力や最大ライフが上昇する。
ゲームの一番のキモはマリオの「次元ワザ」。通常は右に進んでいく2Dステージだが、Aボタンを押すことで、左が手前に、右が奥になる奥スクロールの3Dステージに切り替わる。初代スーパーマリオのクリボーを見て、「横を通ればあたらないんじゃない?」と突っ込む無粋な人がいるが、それを現実にやってのけたのがこの次元ワザだ。この次元ワザで飛び越えられないような高いブロックの脇を通ったり、隠されたアイテムや通路を探すことができる。結構頻繁に切り替えていかないといけないので面倒に感じるかも。
おなじみのアイテムも効果が変わっていたりする。スーパーキノコはライフ回復だし、フラワーは一定時間ゲームのスピードが変わる効果が出たりする。残念ながらファイアフラワーは存在しない。
スーパーマリオでは一定時間無敵状態になるスターは、今作では巨大化&無敵の効果が出る。これは昨年発売されたニンテンドーDSの「NEWスーパーマリオブラザーズ」で登場した巨大キノコとまったく同じ。見た目が初代スーパーマリオのドット絵になるという追加の演出もあるが、オマージュをやるにしては早すぎたのではないだろうか…。数百万本売れたヒット作のネタを1年を待たずに使い回すのはさすがにどうかと。もともとゲームキューブ用ソフトとして昨年発売されるはずだったわけで、そうなるともっと酷いことになっていたのでは。
マリオというよりもゼルダ的
登場キャラクターはマリオだけではなく、冒険の途中で仲間に加わるピーチやクッパもプレイヤーキャラとして使用できる。前述の次元ワザはマリオだけの特技だが、ピーチは長距離を飛べるパラソルが使用でき、クッパは炎を吐ける。ピーチだけが飛び越せるガケや、クッパの炎を利用する謎解き、炎でのみ倒せる敵も存在するので、頻繁にキャラクタを切り替えながら進んでいく必要がある。
今作でいわゆるBダッシュが備わっていないことは前述の通りだが、本来Bダッシュが割り当てられるはずだった「1」ボタンでは「フェアリン」が使用できる。フェアリン(妖精)を使用すると、敵を持ち上げたり、バクダンを置いたり、ヒップドロップしたりできる。それぞれの能力を持つフェアリンとは冒険の途中で出会い、仲間になっていく。
フェアリンの中で物語のキーとなる「アンナ」の能力は特殊で、1ボタンで呼び出すのではなく、リモコンの先端を画面に向けることで指し示した場所を調べる能力。通常はWiiリモコンを横持ちにしてプレイしているわけで、調べたいときに画面の方向に向けるのは結構煩わしい。ただ、この能力を使わないと勧めない場面も多々あるので、気になる場所があるごとにリモコンを持ち替えないといけない。ちょっと面倒ではある。
フェアリンが増えると各ステージを繋ぐ中心に位置する街、ハザマタウン内で行くことの出来る場所がどんどん増えていく。アイテムが増えるごとに進める範囲が広がっていくシステムとなっている。
人々の話を聞いてヒントを集め、店でコインを使ってアイテムを購入することもある。また、マリオシリーズにしてはストーリーもしっかりと作り込まれている。たくさんあるフェアリンを使い分けて謎を解いていくシステムもそうだが、マリオシリーズよりもゼルダの伝説シリーズに近い印象を受けた。スーパーマリオブラザーズ→(略)→スーパーマリオワールド→NEWスーパーマリオの系列ではなく、スーパーマリオRPG→マリオストーリー→ペーパーマリオRPGの系列に位置するソフトなのだろう。
人を選ぶジョークの数々
初代スーパーマリオのオマージュ以外にも、こってりとしたギャグが盛りだくさんなのも注目すべきだろう。とくに3つめのワールドのボス戦が恐ろしい。
マスコミで報道されるステレオタイプなアキバ系のイメージを具現化したようなキャラクター「カメレゴン」が登場し、いろいろと問題発言をぶちかましてくれる。
カメレゴンがピーチ姫と対面したときのセリフがこれ。ひどい。
どどど…どうしよう…!?
リアルな オンナのコが ボクの部屋に!
あらわれるなんて~~!!!
このあと、ものすごい展開を見せるのだが、それは実際にプレイして確認して欲しい。
また、そのカメレゴンに到達するために、途中で質問に答える必要のある箇所があるのだが、その質問内容がまたひどい。
フィギュアを あつめはじめると
コンプリートせずには いられない
小説は ないようよりも
カバーや イラストの方が 大事だ
はつ恋の 相手は アニメキャラだ
ゴハンは おなかが みたされる
フィギュアは 心が みたされる
まだまだたくさんあるが、これらの質問はすべてYESを選ばないと先に進めない。ひどい。
さらに、カメレゴンの部屋に隠されている日記の内容が最低だ。
○月×日
今日は 天気が よいので ひさしぶりに
「すいーと☆ぷりりん」を 全話見るりょうしつの シナリオに
はぎれのよい えんしゅつ
まさに けっさく アニメーション
とても たのしかったただし それも 2クールまでで
カントクが こうたいしてからは
ださくとしか いえない3クールからは ファンへの コビと
オモチャを 売るための テコ入れが
見え見えで 見るに たえないカネもうけ イコール あくだとは いわない
アニメは しょせん
30分の コマーシャルなのだしかし あんいな サービスシーンの
ぞうかに すべてのファンが よろこぶと
おもうのは あまりに アサハカであろうたとえば 第24話までの
ぷりりんの とうじょうシーンの こうか音は
「ぷりゃりゃりゃ~ん」だしかし 第25話いこうの こうか音は
「ぷりょりょりょ~ん」に なっているファンなら これだけでも ハッキリと
その ダメさかげんが わかるだろうアニメとは そもそも
「命を ふきこむ」という いみであるキャラに 命を かんじないアニメは
もはや アニメとは よべない来年から おなじ カントクによる
「すいーと☆ぷりりん・あらもーど♪」の
ほうそうが よていされているこのボクの クチに合うとは
まったく おもえないが…ヒロインの コスチュームが
ちょープリチーなので
フィギュアと DVDを よやくしたとどくのが とても まちどおしい
はやく こないかな
ワクワク☆
※引用部の☆は、実際にはハートマーク。
思いっきり蛇足だが、補足説明をするとアニメの1クールは12話か13話で構成される。24話は2クール最終話で、25話は3クールの第1回を指しているものと思われる。
ちなみにこのボスの部屋にはマリオストーリーなどのキャラが描かれたポスターが所狭しと張られており、棚にはバーチャルボーイが置かれている。なんてこった。
漢字が少なめで、最低限使われている漢字にもルビがついていて子供でも読めるようになっているが、明らかに20代以上の濃いマニア向けのジョークだ。いったいこのゲームのターゲット層はどのあたりなのだろうか。誤った方向に注がれた熱意を感じる。いいぞ、もっとやれ。
それ以外にも、不可解なジョークがちりばめられている。
詳細な説明は省くが、あえて単調で飽きの来る展開をわざと繰り返し行うシーンが複数見られた。お笑い用語で言うところのテンドンを狙ったパターンだと思うが、いつまで続くんだ?これ…と少々苦痛に感じてしまった。
また、このシリーズ恒例とも言えるのだが、ルイージの扱いがとんでもないことになっている。クリボーやノコノコにすら馬鹿にされているし、ルイージと関係ない場面で赤と緑のどちらが良いか問われて緑を選ぶと部屋から追い出されたりもする。執拗なまでのルイージいじめは、ルイージに対する愛の表れだろうと捉えて…いいのだろうか?
とことんやり込み要素
ステージ数はそれほど多くはないのだが、前述の通りスーパーマリオタイプの面クリア型アクションではなく、探索型のアクションアドベンチャーなので、1面あたり10分~1時間程度は必要となる。ボリュームは十分にあるといえるだろう。
その上、収集要素やクリア後に出てくる追加要素も多い。
まず、256種類のカードがある。これは敵キャラクタや登場キャラの絵や説明が書かれたカードで、道中で拾ったり、カード屋で購入できる。また、ホカクカードを使って敵をカードに変えることも出来る。実は、このカードは攻略にも多少影響がある。カードを持っていると、そのカードに描かれた敵に対しての攻撃力があがるようになっているのだ。
他にもアイテムを変化させる料理という要素や、ステージ上に隠されたアイテムの位置を示す地図、Wiiリモコンを使用したミニゲームが遊べる施設などもある。単純にクリアするだけなら20時間程度、各要素のコンプリートにはさらにその倍ぐらいの時間がかかるのではないだろうか。
理不尽な謎解きは少なく、必要な箇所に適度なヒントがちりばめられており、サクサクと進めることが出来る。ただし、それはアクションアドベンチャーとしては…と但し書きをつけた上での話で、アクションゲームとして購入したのなら、テンポが悪いと感じられるかもしれない。やはり、バリバリのアクションのような誤解を生むCMを放送しているのはいかがなものか…。また、伏線がちりばめられたシナリオも良い感じで、アクションアドベンチャーとしては非常に綺麗にまとまった優秀な作品といえるだろう。
毒気のあるジョークと、探索型アクションアドベンチャーが好きで、それなりにアクションゲームも得意な人には文句なしにお薦めの一本だ。
スーパーペーパーマリオ
発売日:2007/04/19
発売元:任天堂
定価:¥5,800
価格:¥4,780(18%OFF)
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コメント
まぁ色々と問題発言が多いあのファイアーエムブレムを作ってるISさんですから、この手のジョークはご愛敬と言えるでしょう。ペパマリRPGにもありましたし。
このゲーム、自分は完全にノーマークだったんですけど、レビュー見て少し興味が沸いて来ました。
投稿者 : ドリル | 2007年04月25日 06:06
僕は、Wiiは持っていないけど。この『ペーパーマリオ。』は、前ステージに戻れない?って疑問が残る?モ。1ステージ、1ステージ。じっくりやらないと、コンプリートは難しいのでは!なんて思いました。?ネ
投稿者 : 昌宏 | 2007年04月25日 09:01
赤と緑の選択は、単純にその門番の好きな色だったんじゃないですかね?
個人的にはルイージが虐げられるのが大好きなのでどっちでもいいんですけども。
投稿者 : よしたか | 2007年04月25日 12:41
巨大化はペーパーマリオRPGのクッパから取ったのだと思いますよ。スーパーペーパーマリオがGCで発売予定だった頃、Newスーパーマリオブラザーズが発売されるより前に巨大マリオの画面写真が出てましたし。
投稿者 : 静 | 2007年04月25日 18:27
マリオの新作というよりも、ペーパーマリオRPGの続編と言った方がよいので、
当然と言えば当然の内容なんですが。。
前作が割りと単調だったので、今回は飽きさせない作りになってよいと思います。
投稿者 : なお | 2007年04月25日 19:44
果てしなく的を射たレビューだと思います。
私にはCMはアクションバリバリに感じませんが
それ以外はまったく同感です。
見逃されるであろう という、細かいところまで
ネタが仕込んであるのがたまりません。
投稿者 : Periru | 2007年04月25日 23:55
ペーパーマリオシリーズは初めてプレイしてますが ルイージの扱いがこれでもかというほど酷いのは笑いました
投稿者 : popee | 2007年04月26日 01:10
今作のルイージは歴代シリーズで一番カッコいいと思いました。
最初こそ虐げられていますが、中盤から後半にかけては彼の株を大きく上げています。
久しぶりに素敵なルイージを見る事ができました。
それだけで価値のあるソフトです。
投稿者 : Wiiとぼく | 2007年04月26日 03:08
ありますねー毒気が
始めはかわいいかわいいゲームを買ってしまったなと思いましたが
意外に痺れる中身でしたね
買って良かったです
投稿者 : エクスプ | 2007年04月27日 00:00
もう、びっくりの連続ですよね!していると、
時間を忘れますよ(笑)
投稿者 : たっしー | 2007年04月27日 00:40
私もアクションバリバリなCMとは思いませんでしたが、
他はほぼ同意です。先入観がなかった為、純粋に面白かったですね。
簡単にしたゼルダ、的な作品だと思います。黒ジョークは個人的には大好きです。
投稿者 : TAJI | 2007年04月28日 03:38
マリオの巨大化は64DSからできてたよ(^-^)/
投稿者 : いっちゃん | 2007年04月29日 07:03
僕は昨日買いました。予想外に期待より下でした。でも好きですけど。これから本格的にしようと思ってます。
投稿者 : 坊ちゃん | 2007年04月30日 16:35
やっとクリアーしたけど目がうるんだよ
投稿者 : アンモニア | 2007年05月02日 12:27
レビューと同じ感想ですね。素晴らしい。
ただ、やってて僕自身が思ったのはやろうと思えば結構アクションよりにできるのかなと。
次元技使わなくても進められる箇所は多く、アイテムを取らないようにしたりすることで純粋なアクションよりにも出来るあたり任天堂はよく考えてるなと感心しました。
Bダッシュは欲しかったですけどね。
投稿者 : 今プレイ中 | 2007年05月12日 03:15
何か、進んで行くと。
不思議な緑のボスが宇宙ステージで勝負してくるらしい?
何か、メカも馴染みの顔だし。持っている人は…解るでしょう!
投稿者 : 昌宏 | 2007年05月26日 18:11
スーパーペーパーマリオ購入した。
頑張ってクリアしていくぞ!
投稿者 : ケムケム | 2008年01月18日 03:26
Bダッシュってフェアリンのダダッシュじゃ駄目なんですか?
投稿者 : あのー | 2010年08月21日 13:13