Wiiソフトレビュー2:おどるメイドインワリオ
タイトル:おどるメイドインワリオ
発売元:任天堂
開発元:インテリジェントシステムズ
発売日:2006年12月02日
価格:5,800円(税込み)
毎度毎度メイドインワリオに触れるたびにサウンドボンバーの話をしていて、今回も当然のごとくその話から。えー、かつてひっそりと発売されたゲーム機64DDに対応したソフト、マリオアーティストポリゴンスタジオにはサウンドボンバーというミニゲームが収録されていた。サウンドボンバーは5秒程度で終わる、8種類のミニゲームを延々と繰り返すだけのものだったが、非常にリズミカルで異常なほど熱中できるゲームだった。64DD自体が大して普及しなかったこともあり、サウンドボンバーはごく一部を除いて話題になることもなかったわけだが、そのコンセプトを受け継いでメイドインワリオがゲームボーイアドバンスで発売された。その後、シリーズ作品が次々登場し、メイドインワリオシリーズ第5弾のWii対応ソフト「おどるメイドインワリオ」に繋がるわけだ。
メイドインワリオの基本コンセプトはサウンドボンバーから変わることはない。
・簡単な操作方法
・5秒で終わる
・終わるとすぐに次のゲーム
・おバカ
このコンセプトは変わらないが、シリーズを重ねるごとにそのインタフェイスが次々と変わっていった。3DスティックとAボタンだったのが、十字キーになり、回転センサーになり、タッチペンになり、そして今回はWiiリモコンで操作することになった。
基本がシンプルでインタフェイスの特徴を引き出しやすく、新しいインタフェイスの実験場として最適なゲームと言えるだろう。まわるメイドインワリオはゲームボーイアドバンスの回転センサーカートリッジ第1弾ソフトだったし、さわるメイドインワリオはニンテンドーDSと同時発売だった。今回のおどるメイドインワリオもWiiと同時発売だ。きっと次の任天堂ハードや周辺機器もメイドインワリオといっしょに登場するのだろう。ローンチ(同時発売)ソフトの座は、もはやマリオのものではなくワリオのものになってしまったのかも知れない。
次のハードの話はさておき、今回のメイドインワリオはWiiリモコンでどのように進化したのだろうか?
今までの携帯ゲーム機とは違って、Wiiでのグラフィックは驚くほど綺麗。アシュリーかわいい。そして、本編以外のミニゲームや隠し要素も非常に盛りだくさんだ。もちろん本編となる5秒間の瞬間ゲームの数々も粒ぞろいで、ウィットに富んでおり非常に良く仕上がっている。特に毎回恒例の任天堂ステージでは、ゼルダの伝説風のタクトや、ピクミンといったゲームキューブ用ソフト、そして「脳トレ」までもがパロディ化されてしまっている。
今作ではWiiリモコンのことを「作法棒」と呼ぶ。様々な作法に従ってWiiリモコンの持ち方や動かし方を変えながらプレイしていく。聞いてるだけで笑いがこみ上げてくる片言日本語の外国人が解説する作法は19種類あり、中には頭の上に載せる「ちょんまげ」や、鼻先に付ける「天狗」など本当にそこまでする必要があるのかとつっこみたくなるものもある。
直感的に操作できるようにメイドインワリオのソフト側で工夫するまでもなく、もともとWiiリモコンは非常に直感的に操作できるように作られている。片手でぎゅっと握りしめて振り回せばラケットになり、先端を上に向けて両手で握ればバットに、下に向けて握ればゴルフクラブになり、画面に向ければ弓矢や銃にもなる変幻自在のデバイスだ。頭の中でWiiリモコンがラケットやバットに置き換わったら、次は頭の中で思い描いたように振り回せば画面内のキャラクタがその通りに動いてくれる。非常にシンプルだ。ただ、ここで重要なのは想像した動作と、要求される動作が一致しているかどうかという点だ。
すこし話がそれるが、落語の噺家は扇子を多彩に操る。閉じたままの棒状の扇子を刀に見立てて無礼者を斬ったり、箸に見立ててソバをすすったり、すこし広げた状態で傾けてお酒を注いだりする。これが客席に伝わるのは、同じ日本人として共通の認識を持っているからといえる。左手を添えて左脇腹から右上に振り上げて構え、手元から扇子の先端まで見上げれば、それはどう見ても刀だし、地面と並行にして口元で上下に動かしながら頬をふくらませ、ズルズルと音を立てれば箸にしか見えない。仕草を見た観客が、噺家の意図の通りに扇子を道具に見立ててくれないと、何をしているのか理解できず落語が成り立たない。
Wiiリモコンは落語家の扇子と同じようなものだと言えるのではないか。
そう考えると、ひとつの問題点が浮き彫りになってくる。我々は、扇子を刀や箸に見立てることは出来るが、初めて見るミニゲームで瞬間的に要求される操作方法通りにWiiリモコンを見立てることが出来ない。要するに、どうして良いものか分からず戸惑ってしまうわけだ。これはこのソフトの長所でもあり、短所でもある。
どうして良いのか分からない状態が続けば、難しいと感じるし、それが酷くなるとつまらないゲームだと思ってしまうだろう。このソフトは1人用モードでクリアすると多人数プレイが出来るが、経験者とそうでない人の差は激しく、はじめてプレイする人はほぼ勝てない。ゲームを薦められてどうがんばっても勝てない状況は不愉快に感じるかも知れない。
しかし、実際にそこまでネガティブな印象を受けることは少ないのではないだろうか。そこがこのゲームの長所だ。なぜクリアできない、勝てないのに不満に感じないのか。…それはこのゲームがおバカだからだ。
Wiiリモコンの存在ではなく、他者の視線を意識している点で、今作は過去のメイドインワリオシリーズと一線を画している。今作では一人用モードである程度の区切りごとに、画面上にシルエットで表される間抜けなポーズが出てくる。別にこのポーズを真似たところで、ゲームのスコアに何ら関係しない、完全な蛇足だ。一人用モードであえてこれを組み込んでいることに明確な意図を感じる。画面で指示を出しているのだから、スコアに関係しようとしまいとプレイヤにはポーズを要求しているに違いない。一人用モードでもギャラリーが居ることを意識して開発しているわけだ。開発者は、明らかにプレイヤがバカをやることを求めている。
このゲームの真の面白さは、ブラウン管(うちはまだブラウン管なんだよ!)の中ではなく、その外で繰り広げられる光景にあるのだ。ものすごく馬鹿馬鹿しいゲームにのめり込んで、白い棒きれをハンドルやハエタタキなどに見立てて振り回している様は愉快で仕方がない。ノーミスでサクサクと進んでいくよりも、画面の内容とちぐはぐな動きをしてあわてふためいているとさらに愉快だ。1つのゲームが短時間で終わるのも良い。要求されているアクションを理解するのが遅ければ即アウトということは、素早く試行錯誤をしてオールマイティに正解を導き出すことは不可能になる。どんなにあがいても無様に失敗する姿を晒すことになる。そして、失敗を恥じるヒマもなく、次のアクションを強いられる。慌てていればさらに失敗が続いて、これはもう笑うしかない。その上さらに、画面の中では何とも言えないシュールで小馬鹿にした映像が流れ、合間合間には例の片言日本語解説が入ってくる。このゲームを遊んだ人の多くはゲラゲラと笑いながらこう漏らすだろう、「くっだらねぇ」と。
これは非常にメタな面白さだ。例えるなら、週刊少年誌で手抜きの絵を見て〆切りに追われる作者を想像する楽しさ、つまらない映画を見て同伴者のリアクションをみる楽しさだ。
先に挙げたコンセプト、「簡単な操作方法」「5秒で終わる」「終わるとすぐに次のゲーム」「おバカ」が切っても切り離せない関係にあることが理解してもらえただろうか?一つでも欠けるとメイドインワリオは成立しない。
「はじめてのWii」のレビューでは、実質1,000円のソフトに対し、価格以上には楽しめると評した。せいぜい2,000円程度の価値しかない。
はじめてのWiiはメイドインワリオとたいして変わらない水準のゲームが収録されているのに、コンセプトには「簡単な操作方法」しか備わっていないのだ。他の3つの要素がない。良い成績を残すには同じミニゲームを長時間遊ばなくてはいけないし、失敗すればそれがずるずると引きずられる。メイドインワリオで同じゲームを何十回と連続して遊ばされている気分になる。バカさ加減も足りないのでミスをすると、ただただ悔しいだけでちっとも笑えない。失敗するのを見てギャラリーが笑い出したら、プレイヤはムッとするだろう。
それに対して先に挙げた要素を備えたおどるメイドインワリオは、とにかく「軽い」。ギャラリーに笑われたら、プレイヤは一緒になって笑ってしまうだろう。笑われたらリモコンを渡して「じゃあ、お前もやってみろよ」と言えばいい。そして、そいつが失敗する様子を見てまた一緒に笑ってやれば良いんだ。我々はストレスを溜めるためにゲームをしているのではない。良いスコアが取れなくても、重厚で感動に満ちたストーリがなくても、ゲラゲラ笑いながら楽しめれば、それは最高に愉快なことではないだろうか。
おどるメイドインワリオも、細かい点を上げれば不満がないわけではない。多人数プレイが隠し要素扱いとなっており、その点が説明書等で触れられていない。1人用モードをクリアしてはじめて多人数プレイが出来るわけだが、まあ、せいぜい2~3時間、ゲームが苦手な人でももう少し時間があればだれでもクリアできるだろう。多人数プレイが解禁されていなくても、一人プレイを交互に遊んだり後ろで見ているだけでも十分に楽しい。
対戦モードでもWiiリモコンを1本しか使わないのも難点だ。何人いようと1本のWiiリモコンを渡しながら遊んでいくことになる。手渡しの時間も短く、ストラップを付けるヒマはほとんどない。そのことを見越してか、激しく振ることになるアクションは対戦時にはほとんど出てこない。人数分のリモコンを用意するのが大変だったり、同時に4本までしか使えないなどの問題もあるが、この持ち替えは何とかならなかったのだろうか。ただ、安全性という面を無視すれば、手渡し時にあたふたする様子もまた面白いかったりするわけだが。
多人数プレイがとにかく楽しいので、一人で遊ぶと物足りなさを感じるかも知れない。だけど、そんなのは関係ない。楽しみたいなら、思いっきりバカになれ。笑いながら遊べば、きっと、もっと、ずっと楽しい。
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コメント
「はじWii」と「Wiiスポ」は持っていましたが、正月友人夫妻が来ると言うので、当日に「おどる~」を購入。
これが正解で、普段からリモコンに慣れた自分らと、初心者友人夫妻が同じレベルで楽しめました。
皆でやってこんなに楽しいビデオゲームって私は知りません。
投稿者 : stp | 2007年01月09日 14:40
さりげなく
アシュリーかわいい
ってところに愛を感じた!
投稿者 : ユキ | 2007年01月09日 21:05
今作は歌ものが少なかった(ってかドリブル&スピッツだけ)。
アシュリーとかモナの新曲に期待していたんだけど。
「正面」とか「滝登り」とかの作法が聞き取りにくくなる為だったのかな?
ネタバレになるかも知れないので伏せますが、あのファミコンゲームが3Dになったミニゲームに笑った。
投稿者 : タコライス | 2007年01月09日 21:54