2005年03月04日

レビュー:アナザーコード 2つの記憶


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タイトル:アナザーコード 2つの記憶
発売:任天堂
開発:CING
発売日:2005年02月24日
価格:4,800円(税込み)
amazonで購入

今回、アナザーコードのレビューをする前に、色々と長い前置きをさせていただく。
まずはお断り。このレビューではストーリの内容に関して触れる事、つまりネタバレは行わない。そのため、回りくどい表現が見られたり、切り口に甘いところがある。

次に、先ほどのお断りとも関係していることだが私のレビューに対するスタンスを明らかにしておく。

レビューは悪いところを探して列挙することではなく、良いところを見つけるものだと私は考えている。

ゲームをプレイして感じる悪い点というのは結局の所、プレイヤの中で沸いてくる感情でしかない。レビューで欠点をクローズアップするのは、そのゲーム全体に抱いている悪い印象を特徴的な一点に集中して非難することによって、あたかも論理的に批判をしているように振る舞っているようなものだ。実際、一部のあからさまな不具合以外は万人に共通な欠点だと指し示すことが出来ないものが多い。例えばタイトル画面でのメニューの構成などゲームの本編とは無関係な部分でも、わざわざ使いづらい場所を探し出して文句を言う。そんな状態で欠点と称して気にくわない部分を並べた文章など見てて不愉快でしかない。

逆に大好きなゲームであれば、拙いグラフィックやチープなサウンドも「味」だと許容し、長いロード時間ですら、「小休止にちょうど良い」なんて開き直ることもある。これも正しい姿勢だとは思えないが、悪口を見せつけられるよりはずっと良い。
私はレビューを書くときには長所を探して並べるようにしているし、レビューの題材として嫌いなソフトをあえて取り上げることもない。

レビューを書く目的はバッシングであってはならない。自分が気に入ったものをもっと多くの人に触れて貰うために、好きなところをアピールして書くべきだと思う。嫌いなものには罵詈雑言を浴びせて関わり合うぐらいなら無関心を貫いたほうが健全だし効果的だ。

好きなものをもっと多くの人に、そして、自分が味わった感動をその人達に。そう考えてレビューを書くのであればストーリ重視のソフトのレビューでネタバレはすべきではない。ネタバレを見たあとでは同じ感動が味わえなくなってしまう。確かに事細かに物語の細部を語ればどう感動したのかを表現するのは簡単だろう。しかし、それでは夏休みの宿題の読書感想文と同じだ。

さて、ネタバレとはどの程度のものを指し示すのか。

例えば推理小説
トリックの一つに叙述トリックというものがある。表現上の技巧で読者があえて誤解するように記述してあるタイプのもの。例えば登場人物の性別を誤解させたり、地の文で「私」と書かれた人物が犯人であったりするようなものだ。そう言った小説では伏線が巧みに張り巡らせてあり、読者をミスリードする。読者の誤解が解けたときに抱いていたちょっとした違和感の数々がスッキリと解決して、世界が一転するような仕掛けが施されている。仮にそのような小説のレビュー(書評)で、「すばらしい叙述トリック」などと書かれていたらどうだろう。それを目にした読者はあらゆる箇所を疑ってかかり、伏線の段階で結末まで呼んでしまう可能性がある。読んでいて感心はするだろうが、感動は消え去ってしまう。

例えば映画
映画にも叙述トリック的なものがあるが、それは小説と同じ。先に明らかにされると幻滅だ。それともう一つ内なるネタバレがある。映画の尺は上映スケジュールを見ればだいたい分かる。その映画で終盤に腕時計を見てしまったら・・・。そろそろ結末だな、と考えたり、まだまだ時間があるのでこれじゃ決着はつかないなと考えたりするかもしれない。これは自業自得なのだが。

そして、ゲームでも小説や映画と同じ事が言える。ストーリ重視のソフトであれば、レビューで書くべきではないことがたくさんある。


さて、そのあたりをふまえてアナザーコードのレビューを掲載する。

このソフトのレビューを掲載するというとこはすなわち、このソフトが好きだと言うことだ。このソフトだけではない。いままでレビューコーナーで取り上げた作品は全部大好きだ。だからみんなにも触って欲しい。同じ感動を味わって欲しい。

そして、自分のスタンスだとこのソフトのレビューで内容に関してはほとんど書くことが出来ない。書くことが出来ないと言うことは、実際にプレイして謎を解き、物語に触れることで多くの驚きと感動に出会うことが出来るゲームだということだ。そして、その感動はネタバレで台無しになる可能性がある。

プレイしていて、色んな場面で思わず「あっ」と声が漏れる。先に進めなくて悩んで悩んでふとしたきっかけで謎が解けたときには、「あーーーっ」と叫びたくなってしまう。
頭がくらくらしたり、全身の毛が逆立ったり、しばらく呆然としてしまうほどの驚きを体験したければ、決して攻略サイトを見てはいけない。ネタバレを含んだレビューを見てはいけない。プレイした人に感想を求めてはいけない。

このゲームで不満なところを探せば、当然いくつか見つかる。完璧なゲームなど存在しない。人によってはその欠点が致命的だと感じるかもしれない。だけど、いや、だからこそ、このゲームに少しでも興味を持ったのなら今すぐ、この先の文章も読まずに完全に情報を遮断して買いに走るべきだ。ネタバレ情報を見れば見るほどプレイ中に味わえる驚きは激減し、欠点だけが目立ってくる。

さて、このゲームは次のような展開で幕を開ける
─ 主人公は13歳の少女、アシュレイ。死んだと聞かされた父親が生きていた。アシュレイは育ての母である叔母ジェシカと共に小船で父リチャードの待つ島へと向かう ─
この物語の導入部分の10日前からのアシュレイの日記が公式サイトに掲載されている。

このゲームは2画面とタッチパネルを活用した推理小説だ。プレイヤは2画面の豊富な情報量と多彩な操作が可能なタッチパネルで謎を解く。

2画面の使い方が実に巧妙だ。両方の画面間をせわしなく視点移動する必要はなく、必要のないほうの画面は若干暗くなる。必要な情報は注目しているほうの画面に集約されている。しかし、オープニングデモなどでは2画面を最大限活用しており、2つの画面が別々の場面、アングル、時代を映し出すことでストーリの奥行きを感じさせる演出が施されている。

タッチパネルでの謎解きは新しいことに挑戦している分、理不尽に難しく感じることもあるかもしれないが、簡単に諦めずに様々な解決策を探って、かならず自力で解いて欲しい。

ゲームを評価する上で様々な基準がある。それは画面のクオリティであったり、取っつきやすさであったり、難易度であったり、隠し要素の数であったり、値段であったりする。そのすべてを満たしたゲームが最高のゲームかというと、そうではない。なにかどのゲームにも負けない要素を持っているゲームこそが評価に値するゲームなのではないだろうか。アナザーコードは負けないどころか、他のどのゲームでも味わえない驚きが詰まった最高のゲームだ。
どこが最高なのか問われると、それを答えることは出来ない。

アナザーコードは間違いなく面白い、だが、その面白さを損なわずに説明する手段を私は持たないのだ。

やはり、中身のないレビューになってしまった。
その代わり最後に一つだけちょっとしたネタバレのようなものを書いてみる。
このソフトのパッケージ(ケース)にはちょっとした仕掛けがしてある。この仕掛けは実際に商品を手にとって確認して欲しい。


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コメント

いつも拝見させてもらっています。
私も自分の日記でアナザーコードの事を書こうと思ったのですが、
事前にアレックスさんのレビューを読ませて頂いていて、
やはり中身については触れることはできないなと。

そのせいかなんだか似たような文章になってしまい、
非常に恥ずかしく思っています。
アレックスさんのレビューを超えるアナザーコードのレビューはなかなかないと思います。
こういうゲームの紹介文は本当に難しいですね。

メテオスのオフ会。
残念ながら滋賀在住なので参加できませんが、
こちらでもそういったものが出来ればといいなぁ思っています。

それでは失礼いたします。

アナザー毎日やってるよー


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