2004年07月13日

BS探偵倶楽部とはなんだったのか


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ファミコンミニでファミコン探偵倶楽部が復活するのを期に、その3作目で自分が未プレイ、入手不可能、プレイ不可能の幻の作品である「BS探偵倶楽部 雪に消えた過去」について色々調べてみた。以下の情報は各Webサイト、雑誌資料、おぼろげな記憶を元に記載。BS探偵倶楽部に関しては情報が少なく、Internet Archive等のキャッシュを元にしているものもある。

※無駄に長いので注意

まず、ファミコン探偵倶楽部とは何か?

その前に大前提としてディスクシステムについて簡単に説明する。ファミリーコンピュータディスクシステムは容量不足、セーブ不可というROMカートリッジの欠点を補うために追加発売された周辺機器である。独自のディスクメディアを用いることにより、ROMカートリッジより安価に供給でき、店頭の書換え機(ディスクライター)で1本500円の書換えが行えた。容量が半分になってしまうが、片面だけで供給されるソフトもあり、1枚のディスクの両面に違うソフトを入れることも出来た。

しかし、容量不足は次第に大容量ROMカートリッジが安価に製造できるようになり、セーブに関してもバッテリーバックアップでまかなえるようになった。そのうちディスクシステムのメリットよりも、アクセスが遅い、最新のROMに比べて容量が少ない等のデメリットが強調され、次第に市場から消えていった。

シリーズ第一作「ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者 前編」は1988年4月27日に2,600円でファミリーコンピュータディスクシステム用ディスクとして発売された。書換えが開始されたのは1988年5月14日と、ズレが生じている。これは既存市場保護のために任天堂の問屋組合である初心会が希望したためと言われている。新作を500円で供給されたらかなわん、というわけだ。

なお、後編の発売は前編から遅れること約1月半、1988年6月14日に発売、1988年6月28日に書換えを開始している。

閑話休題。
ファミコン探偵倶楽部は文字通り探偵もののアドベンチャーゲームである。当時、同系統のゲームとして「オホーツクに消ゆ」などのソフトが発売されていた。

システムは当時としては割と普通の総当たり式。画面上のキャラにすべての質問をする、すべての所持品を使ってみる、移動できるすべての場所に行ってみる、怪しいところを指し示すなど、考え得るすべてのコマンドを実行すれば先に進めるようになっていた。マルチシナリオやマルチエンディングではないため、どんな行動をしてもゲームオーバーにはならない。ただし、正解を出さないと永遠に先に進めないのだ。

ディスクのロード時間が長い、長い台詞でもスキップできないなどシステム面で問題は多く、快適にプレイできるわけではない。それなのにファンを引きつけるのはシナリオと音楽の秀逸さに違いない。

メトロイドなどを手がけた坂本賀勇氏は、この原作を手がける前はあまり推理小説を読んだことがなかったという(参考:ホコタテブログ)逆にそれが既存小説という枠に捕らわれず、ゲーム的に面白い作品に仕上がったのではないだろうか。つまりはメインターゲット層である子供達にもわかりやすく、フラグ立てに奔走する間もストーリに一過性を保ち、効果的に伏線を回収するシナリオだ。ゲームは小説と異なり、プレイヤのテンポで話が進む。同じ手法では通用しないのではないだろうか。

さらに、ファミコン探偵倶楽部は前編/後編と2部構成でボリュームを増すのと同時にストーリを途中で止めさせ、後編への期待感を煽っている。これはあるごく一部でのみ通用する用語でいうとレイニー止めである。

偉そうに色々と書いてはみたが15年以上経っている上に再プレイもしていないので、記憶はかなりうっすら。脳内で相当に美化されているに違いない。こりゃ正当な評価じゃない。

BS探偵倶楽部の話に戻ろう。

いや、その前にうしろに立つ少女の話をしよう。させてください。させろ。

「ファミコン探偵倶楽部 PartII うしろに立つ少女」は前編が1989年5月23日発売、1989年6月12日書換え開始、後編が1989年6月30日発売、1989年7月14日書換え開始である。
こちらもかなり年数が経っているのでプレイした時の記憶がうっすらしている。

その、うしろに立つ少女は1998年4月1日にNINTENDO POWER書換え専用ソフトとしてスーパーファミコンでリメイクされた。つくづく書換えに縁の深いシリーズだ。

あー、NINTENDO POWERの説明もせねばなるまい。させてください。

NINTENDO POWERはローソンに設置されたロッピーというマルチメディア端末を使用した書換えサービスである。基本は既存のスーパーファミコンソフトを(後期にはゲームボーイ/カラーソフトも)専用の白い書換え専用のSFメモリカセット(GBメモリカートリッジ)に書き込むシステムだ。ディスクシステムが両面に別々のソフトを入れられたように、容量が許せば複数のソフト(最大7本)のソフトを入れることが出来た。

悲しいことに2002年8月31日で書換えサービスは終了している。SFメモリカセットはすでに購入しているもの以外は個人売買でしか手に入れることが出来ない。カセットを持っていれば任天堂に郵送すれば書換えが出来る

そういった事情があるので、なんとかしてSFメモリカセットを手に入れ、所定の手順で任天堂に送りつければリメイク版のファミ探はまだ入手可能だ。

リメイク版のファミ探はオリジナルとどう違うのか、オリジナル版の記憶があやふやなのですべてを上げることは出来ない。明らかに違う点として、ハードの違いにより恐ろしく画質、音質が向上している。また、あゆみちゃんとの相性チェックという謎の要素も入っている。

単なるドットの集合体であったあゆみちゃんがえらくかわいくなっちゃってるのだ。背景やその他のキャラの画質向上もすばらしく、オープニング等の一部のシーンではアニメーションもしている。

しかし、それよりも生まれ変わったステレオサウンドがすばらしい。
エンディングで流れる音楽がプレイ後の余韻を最高に高めてくれる。

また、今回のシナリオは学園もの、それも怪談ものであるが、自分はプレイ中に無人の教室で本当の恐怖を味わった。
BGMも存在しない全くの無音状態。殺人事件に幽霊の話が絡んで捜査が行き詰まる主人公はヒロインの橘あゆみと意見を交わす。そこに聞き違いかと思えるほど小さな音が聞こえるのだ。少女のすすり泣くような声に聞こえた。
何よりも恐ろしいのが登場人物がそのかすかに聞こえる声にまったくまったく触れないのだ。後にも先にもゲーム中にこんな恐怖を味わったことはない。

ひょっとしたらこれもプレイしたのは6年前のことで、割と記憶もあやふや。演出でもなんでもなく、自分が全くの空耳か関係ない物音を聞いたのかもしれない。もし他に聞いた人がいれば教えて欲しい。任天堂にSFメモリカセット送りつけてもう一度確認してみようかな・・・。

そんなこんなでファミ探(のリメイク)は自分に強烈な印象を残したゲームである。

だが、ファミ探シリーズはこれだけではない。BS探偵倶楽部という作品がある。・・・やっとここから本題だ。

「BS探偵倶楽部 雪に消えた過去」はかなり特殊なソフトである。何しろ完全な形で現存していないのだ。100%入手不可能。レアどころの問題じゃない。当時でもプレイできたのが午後6時から7時までという、時間帯制限があった。

何故そのような制限があったのか?それはBS探偵倶楽部が「サテラビュー」というスーパーファミコンの周辺機器用のコンテンツであり、放送連動という形態を取っていたためである。

サテラビューを所有していなかったため未プレイだった自分が知っていた知識はこれぐらいである。まず、音声連動というのがよく分からない、BS探偵倶楽部は放送データとして配信されたのでパッケージ化されたROMが存在しない(書換え専用だったリメイク版もパッケージが存在しない)。

それで一体どんな内容だったのか、調べてみた。詳細なストーリ、最後のオチまで紹介したサイトもあったがすでに消滅していた。ファミ探シリーズのファンサイトである穏やかな午後が現存するサイトで一番詳しく記述があると思われる。

それによると、BS探偵倶楽部は97年2月8日に放送開始、前編/中編/後編の三章構成、各1時間の放送で日~金までのリピート放送を1週間ごとに1章ずつ行い、3週間放送されたらしい。

サテラビューに詳しい別のサイト、カメボンのきまぐれ雑記帳のサテラビュー記念館に、より詳しい放送スケジュールがあるが再放送があったかどうかは不明だ。

サテラビューのデータ配信を行っていたセントギガは、自分の記憶が間違っていなければ、BS5chのWOWOWの放送帯域の一部を使用した音声チャンネルである。アナログBSは1chで映像+音声放送(TV)と音声放送(ラジオ)を流すことが出来た。ラジオ放送のほうはPCM(生データのようなもの)なので音質がよい。それを売りにしたBSラジオチャンネルである。契約が必要な有料放送である。
また、同帯域でサテラビュー向けにデータ放送も行うことが出来た。おそらくはさらにデータ部と音声部で分割していたのだろう。

午後6時から7時までの時間を任天堂提供のファミコンアワーとして無料放送を行っていた。受信は無料なのでサテラビューとBSアンテナ、チューナーがあればゲームや番組を楽しむことが出来た。

さて、そんな中でBS探偵倶楽部はどのようにプレイするのだろうか。

あらかじめデータ放送からサテラビューの衛星放送専用カセットにデータを取り込む必要がある。おそらくは放送当日に取得しても大丈夫だったと思われる。音声連動のため、効果音以外は取り込む必要が無く、データ量もたいしたことがないだろう。取り込んだデータは画面内の擬似的な街の中に配置されるらしい。おお、なんだか荒れまくりの掲示板のあったランドネットよりも進んでいるぞ。

連動放送が開始されると数分間はチュートリアル的な画面が表示される。ハードはスーパーファミコンではあるが、リメイク版のように目覚ましく画質が向上しているわけではない。システムもさほど変わりないようだ。むしろ簡素化している。

主人公は橘あゆみ、3作とも出演しているのは彼女だけだ。体調を崩した母に会うため、彼女は帰省し、そこで事件に巻き込まれる。プレイヤが名前を付ける前作までの主人公はそこには存在しない。空木探偵は携帯電話で声だけの出演。

音声と連動させるために一定のタイミングで強制的に次の場面に移行する。声優の台詞とも連動し、文字は衛星放送で流れる台詞と同じタイミングで表示される。あゆみちゃんの声は皆口裕子だ。また、プレイ開始時に時刻合せが行われ、画面上には常に時刻が表示される。

プレイヤが操作できる場面では、プレイヤごとに画面上の表示が異なるため、音楽が流れるのみで台詞は読み上げられない。おそらく効果音ぐらいしか出てこなかっただろう。

捜査(操作)とは言ってもストーリは勝手に進むシステムになっているため、時間が来れば誰かに呼びかけられたり、独白が入ったり、何かキーアイテムを見つけたりして次の場面へ移る。主人公であるあゆみちゃんは与えられた1場面当たり数分の操作可能シーンでは行間を補完する情報収集が出来るだけである。解決への糸口をつかむことはない。

1時間の放送が終わる直前には、各章の情報の整理、形ばかりの推理、次章へのつなぎのシーンが入り、スタッフロールが流れる。最後に限られた時間でどれだけ情報を集めたかのパラメータが「調査指数」として最大100%で表示される。中編以降は前章のおさらいから入り、同じようにストーリが進む。セーブデータはおそらく共通で、3章通すことで全体の調査指数が表示されたのではないだろうか。パスワードで書き出しすることも出来たと思われる。というのも、この調査指数の全国ランキングがあり、上位入賞者にはテレフォンカードが送られたらしいのだ。

このようなシステムとなっているため、BS探偵倶楽部のプレイ時間は最短で3時間、最長で3時間という完全な時間制限を持った話になっている。さらに、各章の前後にはプレイ不能の強制デモが入り、音声連動部分では当然台詞が通常のアドベンチャーゲームより表示が遅い。場面転移も進みの遅いプレイヤでも最低限の情報収集が出来るぐらいの尺を採っているだろう。そのため、ストーリにボリュームが欠ける。Internet Archiveに残っていたネタバレサイトを見たので具体的な言及は避けるが、割とあっけないものだ。

さんざんこれをリメイク希望しているが、やはり市販のパッケージに入れるにはあまりに短すぎる。大幅なストーリの改訂が必要になりそうだ。

ならばいっそのこと新作を描いてくださいませんか。

※この記事でストーリ、システムの参考にしたサイト自体は現存しており、ファミ探のコンテンツを意図的に消しただけのようなのでリンクしません。


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2004年07月14日:今週末予定
2004年07月08日:ファミコンミニ ディスクシステムセレクション

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コメント

どうも、BSファミ探をプレイした事のある貴重なサテラユーザーです。

確かにあれをあのまま家庭用移植はまず無理があると思います、それこそ全面的にリメイクでもしない限りは。でもそこまですると別作品になってしまうんじゃないかとか思ってしまいますが。

BSファミ探自体はサウンドリンクゲームの特徴をあまりうまく生かしたとは言えない感じがしました。まぁ、たまに音声でヒントくれたりとかはありましたが、無くてもいいかなぁとか。
あと証拠集めや証言集めが不十分でも重要な物に関しては時間が来た段階で手に入れた事になった(はず)と思います。無論調査指数には反映はされませんが。それもどうかなとは思いますが時間制限という事を考えれば仕方が無いかなと、ゲーム進行にも影響が出ますし。

それに1週間全く同じ内容の物を流す為再チャレンジが可能なわけで。それこそ全部内容知ってる状況で再プレイして記録更新してほぼパーフェクトに近い成績たたき出してランキング上位に入るというの何とも。せめて週1回のみプレイ可という制限でも付けて欲しかったですが。

しかし面白くなかったかと言えばそういうわけでもなく、それなりには楽しめました、でもやはり1時間という時間制限がなぁ・・・というわけで。こういうテキスト系アドベンチャーゲームはサウンドリンクゲームには向かなかったと思います。

数年前の事なのであまり記憶に残っていないので所々間違い等あるかもしれませんがご容赦を。長文すみませぬ。
あぁ、あの時代は良かったなぁ・・・

 少女のすすり泣き、確かに入っていました。自分はヘッドホンでプレイしていたので間違いありません。確か、美術室で浅川しのぶの絵を調べるあたりじゃありませんでしたか。都合二回聞こえたような気がします。
 例の鏡と美術室の位置関係がどうなってるのか分かりませんが、クリアしないとあそこですすり泣きが聞こえた理由が分かりませんよね。

 私も雪に消えた過去をプレイしたことがあります。ただ、大学から家に帰ってのプレイだったので、午後七時をいつも回っていたような記憶があります。内容については殆ど覚えていませんが、皆口裕子の声は良かったなーと記憶しています。

コメントどうもです。

>うにさん
想像しただけでも無理がありそうでしたが、やはり無理がありましたか。音声でヒント貰うってのもなんか興ざめだなあ。

あゆみちゃんテレカを入手するために上位入賞すべく、3週間同じ時間にほぼ毎日衛星放送を聞きながら、同じ展開のゲームを繰り返しプレイするというのもかなり不毛ですね。

コンセプトが特殊すぎるのでやはり移植は難しそうですね。自分の希望としては
・完全新作にオマケシナリオとしてつける
・新作に初回限定特典とかで同梱とかファンブック、資料集とかでシナリオ小冊子を提供
のどちらかを希望します。

>ティントンさん
僕の空耳じゃなかったんですね。よかったよかった。
ヘッドホンプレイだと恐怖1.5倍増しぐらいですかね。

あー、もう一度プレイしたい気もするけど書換えは正直面倒だ。


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