2016年12月18日

スーパーマリオランはNINTENDO Switchへの呼び水となるか


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iPhoneでスーパーマリオランがリリースされた。
早速インストールし、1,200円を支払って全24ステージをプレイした。
第一印象としては「思った以上にマリオらしいマリオのゲームだ」と感じた。

縦長の画面をマリオが右に走り続けるのは、シンプルな操作体系と合致していて違和感はなく、多少のアレンジはあるものの、お馴染みのキャラやギミックが今までのマリオシリーズと同様の挙動で出て来るから説明なしにサクサク遊べる。

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マリオシリーズで恒例の、最初に出てくるクリボーをジャンプで避けきれずに正面衝突するアクシデントは、1ブロックの高さの壁や敵を乗り越えるマリオの新アクション"ウマとび"で解決できており、初心者救済とストレスの軽減に成功している。さらに、ウマとびの途中でタップすると、そのまま踏みつけて敵を倒しつつジャンプする"ウマとびジャンプ"につながる。これが非常に気持ちいい。
うまい具合にスマホのフォーマットにマリオを落とし込んだものだと感心した。

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普通にクリアする以外に、各ステージに設置された5個のピンクコインを1プレイで全部回収するというやりこみプレイヤ向けの要素もある。さくっと24ステージ×5枚、120枚全部回収した。なお、ピンクコインを回収するとパープルコインが、パープルコインを回収するとブラックコインが解禁される。ブラックコインはかなりシビアだ。

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従来のマリオは好きなタイミングで前に進んだり、もとに戻ったり出来たが、それができなくなった代わりに1ステージを短めに設定し、2タップでステージの最初にすぐに戻せるようになっている。カラーコインを取り逃すたびに何度も最初から挑戦できる。

プレイヤのレベルに合わせて同じステージをクリア目的、カラーコイン回収目的、ハイスコア目的でプレイすることが出来、何度も何度も繰り返し遊べる。
ソーシャル要素も盛り込んでいて、フレンド同士で成績がランク付けされるため、記録を伸ばす動機づけにもなっている。
ハイスコア狙いはかなりシビアで、横に2つ並んだハテナブロックのちょうど真ん中を叩くことで両方のブロックからコインをだしたり、ミスをしたときに自動で手前に戻れるシャボンを強制発動することで分岐したコースの両方からコインを回収したりするテクニックが必要となる。
まさか、2016年にもなってドット単位のジャンプコントロールや、残機潰しでハイスコアを競う20世紀のゲーマーのようなやりこみを強いられるとは。

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メインのワールドツアーだけでも120枚コイン×3種というけっこうなボリュームがあるが、キノピオラリーモードも非常に熱い。

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ワールドツアー上のコースをランダムで組み合わせたゴールのないエンドレスコースを制限時間内に回って、なるべく多くのコインと声援を集める。世界中の誰かがプレイしたゴーストとの対戦となり、総合スコアが高いほうが勝利となり、勝った方のプレイヤは自分の王国の住民であるキノピオが増えていく。
連続壁キックやウマとびジャンプ、連続踏みなどのテクニックを駆使することで、声援が増え、ゲージが満タンになると多くのコインが出てくるコインラッシュ状態になる。コインラッシュ中に声援をもらうとコインラッシュの持続時間が延長されるので、多少リスクを負ってもなるべく"魅せる"プレイをするようになる。まるでゲーム実況者になったのような、観客を意識したプレイを楽しめるのは新鮮だ。

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前半のステージではオーソドックスでシンプルな構成がメインで、手軽に遊べるマリオという感じの印象を受けるが、後半は様々な趣向を凝らしており、壁キックで方向転換しながら左右に動きつつ上に進行する塔のようなステージや、左右がループするお化け屋敷などもあり、隠された鍵を探して扉を開ける謎解き要素まで用意されている。

全体的にコンパクトであるものの、マリオのコンセプトを巧妙にスマホに最適化したゲームといえるだろう。

今までのマリオシリーズをほぼ全部遊んできた自分はこのように感じたのだが、世の中にはマリオシリーズ未体験だったり、今までかるく触っただけで、本格的に遊ぶのはスーパーマリオランが初めてという人も多いだろう。
彼らはこのゲームをどう感じるだろうか。

キノコを取るとマリオの身長が伸び、一度ダメージを受けてもミスにならない。スターを取ると無敵になる。無敵とは、敵と接触してもミスにならないことで、落下はミスになる。無敵は一定時間で解除される。ノコノコは踏んで甲羅を蹴飛ばすと地面を滑り出して他の敵を巻き込む。土管からはパックンフラワーが定期的に出現して触るとミスになる。トゲゾーは踏んでも倒せず、ブロックの下から叩く必要があり、同じく踏んで倒せないクッパは飛び越えて斧を使って足場ごと落とさないといけない。
こういった文章にすると分かりづらいギミックは、(作品ごとに多少の差異はあるものの)マリオシリーズのプレイヤには基礎知識で、改めて聞く必要がない。
だが、初めての人たちには結構複雑に感じるのではないだろうか。

新規プレイヤにとって、マリオ世界のルールを覚えることは一苦労だ。一方、既存プレイヤは今までと全く同じマリオは遊びたくないと考え、更に新しい要素を求めるからマリオ世界のルールはどんどん複雑になっていく。
スーパーマリオランでは、大胆にマリオの常識を削り取り、塗り替えている。ファイアマリオは出てこないし、海もない。当然地蔵マリオも靴マリオもいない。膨大な敵キャラもごく一部しか出てこない。その代わりクリボーと正面衝突してもミスにならないし、2ブロック分の隙間も落ちずに走り抜ける。

Wii UとSwitchでリリースされる「ゼルダの伝説 ブレス・オブ・ザ・ワイルド」は"ゼルダの当たり前を見直す"というコンセプトでゼルダの世界が刷新されるという。
スーパーマリオランはマリオの当たり前を見直すためのきっかけになるだろう。
Switchでリリースされる新しいマリオは、スーパーマリオランの経験を活かしたものになるだろうか。

任天堂は今回、「3ステージが無料で配布され、1,200円の追加料金で全要素が解禁。それ以上の課金はない」という売り切り型と体験版のハイブリッドな販売形態を取った。
より多くの収益を得るのであれば、別の販売形態もあっただろうが、おそらく任天堂はアプリ単体での収益の最適化よりも、別の目的を達成するためにこの販売形式にしている。

無料でプレイ可能な範囲は非常にオーソドックスなステージを配置している。スーパーマリオランならではの、壁キックを使った縦スクロールのステージなど多様なバリエーションを無料で遊ばせて、スーパーマリオランの魅力を伝えればより多くの人が1200円を支払って、スーパーマリオランを楽しむはずだ。任天堂はなぜそうしなかったのか?
なぜ、最初の3ステージは、スーパーマリオラン独自のコンセプトが少なく、地上、地下、アスレチックという初代スーパーマリオから代わり映えのないシンプルでギミックの少ないステージだけを無料で遊ばせたのか?

通常、「無料+課金で全要素解禁」のゲームアプリにおける無料部分は、課金で解禁される部分の宣伝として使われる。しかし、スーパーマリオランは、無料部分をスーパーマリオランの4ステージ目以降の宣伝ではなく、もっと大きなもの ― つまりマリオシリーズそのものの宣伝に使っているのではないだろうか。
これは結構画期的ではないか?

前述のようにカラーコインで3パターンのコースアレンジが楽しめるので3ステージだけでも、それなりに長時間楽しめる。しかも、同じ場所を繰り返し何度もリプレイするコンセプトだ。遊んでいるうちにマリオの基本ルールを理解できる。

これから1ヶ月の間に、マリオの基本を理解したユーザが全世界で数千万人単位で増えることだろう。マリオ経験値ゼロの人たちが、ほんの僅かでもマリオのプレイ経験を持つことになる。0と0.1の間には高い高い壁がある。
この壁を超えさせるだけでもスーパーマリオランの存在価値がある。

年が明けてすぐに、ニンテンドースイッチの発表会が開催される。
おそらく、マリオの新作がその場で発表される。
その新作映像を見た時、全くマリオを遊んだことがない人と、スーパーマリオランでわずかでもマリオに触れた人では、全く違う印象を受けることだろう。


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