キャナルシティ博多にあるディストピア感あふれるビデオアート
福岡市にキャナルシティ博多という複合商業施設、いわゆるショッピングモールがある。
福岡市の中心地である天神からも、交通の窓口である博多駅からも微妙に離れていて、さらに地下鉄の最寄り駅からも絶妙に離れていて、すぐそばには風俗店が立ち並ぶ福岡の性の中心街が存在しているというちょっとアレな立地ながら、それなりにお店が揃っているので海外からも観光客が団体で押し寄せている。というか、押し寄せすぎて旧正月の時期はユニクロに外国人専用レジまで設置されていた。
さて、このキャナルシティには1996年の創業開始当初からエントランス部に設置されている巨大なビデオアートがある。
ナムジュン・パイクの作品「Fuku/Luck,Fuku=Luck,Matrix」である。
180個のモニタを並べ、それぞれにビデオアートを流している。
近くで見上げると非常に大きい。
吹き抜けに設置されていて、そばにエスカレータがあるので正面から鑑賞することもできる。
日中に撮影したため逆光でわかりづらいが、黒い画面が多いことに気づいただろうか?
写真をとったタイミングで映像がたまたま暗いシーンだった部分もあるが、実は多くのモニタが壊れているのだ。
映像で観たほうがわかりやすいだろう。
見ての通り、まったく何も映らない画面が半分ぐらいある。
隣り合った画面に微妙に見た目が違う映像が並んでいる部分があるが、これは作品上の演出で色味や明るさを変えているわけではない。たんにモニタが正しい映像を映せていないだけだ。
こちらはたまたまYoutubeで見かけた2010年ごろに撮影されたもの。
この時点ですでに設置から14年ほど経過しているわけだが、まだ故障したモニタは少ない。この5年で急に故障が増えた、というよりは、2010年以前から代替部品が調達できずにメンテナンスできなくなったのだろう。
近くで見るとモニタの規格が若干異なるものも混在している。故障時に交換したものだろう。また、中央部に1つだけブラウン管から液晶モニタに切り替えを試した痕跡があるが、その液晶モニタも壊れている。
1996年当時は、きらびやかで、未来感あふれ、混沌としたネット社会を予見させるような作品だった。
だが、2015年現在、この作品からは文明が荒廃した世界を描いたSF作品のような印象を受ける。
どちらからも強いメッセージを感じることができる。
2005年に亡くなったパイク氏は、10年後のこの状態を予見していたのだろうか。
テクノロジーに依存したアート作品は、そのテクノロジーとともに滅びるべきか、新しい技術で延命すべきか。どちらを選択すべきなのだろうか。
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