2006年09月19日

Wii発表の内容から任天堂の意図を探る


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Wii Previewと題した発表会で、任天堂はWiiのほぼすべてを明らかにした。まあ、多少隠していることもあるだろうが、少なくとも発売日にどのようなものを見せてくるのかは明らかになっている状態だ。そこで、明らかになった情報をまとめつつ、過去の任天堂の動向と照らし合わせて任天堂の意図を探ってみよう。

まず、みんなが知りたいと思っていた、発売日と価格が明らかになった。日本での発売は2006年12月02日。狙ってそうしたのか、偶然そうなったのかは不明だが、ニンテンドーDS発売のちょうど2年後である。そして、価格は25,000円と発表された。これは消費税額を無視すればスーパーファミコン、NINTENDO 64、ニンテンドーゲームキューブに続いて4機種で同じ価格である。物価の王様と言われる鶏卵に匹敵する安定度に任天堂のこだわりを感じる。

ただ、コントローラを省いた本体のみの価格で考えると、いままでのハードよりも若干安いことが分かる。いままでの任天堂ハードでは1,500円のコントローラ2個、あるいは2,500円のコントローラを1個付属していたが、今回は3,800+1,800円=5,600円のコントローラを同梱する。このことからも、描画能力や処理能力といった基本的なマシンパワーよりもマンマシンインタフェイスに重点を置いたハード設計をしていることがよく分かる。

先陣を切って日本で行われたWii Previewを追うように、世界各地で発表会が行われ、それぞれの地域での価格と発売日が発表された。Wiiおよび過去の任天堂ハードウェアの、各地域での発売日をまとめてみた。

「なんだ、北米のほうが先か、日本よりも北米重視なのか?」と感想を抱いてしまうかも知れないが、これは感謝祭(= サンクスギビング、11月第4木曜日)商戦というアメリカの事情が絡んでくるだけの話であって、決して日本を軽視しているわけではない。よくよく見ると分かると思うが、ゲームキューブ、ニンテンドーDS、Wiiの3機種が発売された(される)日は、11月の第3日曜日になっている。だったら日本はそれより早く出せばいいじゃないかという意見もあるだろうが、日本は日本でクリスマス+正月という事情がある。12月に出したほうがなにかと都合が良いのだろう。特に今年は早く出しすぎるとポケモンとバッティングしてしまう。

たしかに北米重視の傾向はある。表をよく見れば分かるが、ゲームボーイアドバンスの時点で日本との発売日の差が次第に短くなる傾向がすでにあった。ハードウェアに限って言えば、製造上のトラブルがない限りは世界同時発売もそう難しいことではない。問題は同時発売ソフトと、それに続くソフトを十分に提供できるかと言うことである。10年前と違って、英語圏のサードパーティから十分な量のソフト供給が成されるようになってきたこと、任天堂自身も開発の段階からローカリゼーション(英語化)を行い、同時にリリースできるような体制を整えてきたことが原因としてあげられる。逆に言えば、この10年で北米市場が、任天堂を含めたゲーム会社にとって日本と同等、あるいは同等以上の価値を持つ市場に成熟したと言えるだろう。

ニンテンドーDSの時とたいして変わりのない日本市場と北米市場よりも、一気に発売日の接近してきた欧州市場、つまりヨーロッパが気になるところだ。10年前は8ヶ月以上も日本から発売が遅れていた欧州市場で、Wiiは日本での発売からわずか6日でリリースされる。例外的にゲームボーイアドバンスでは北米と欧州の発売日が近いが、これはシンプルなゲームが多く、言語要素が薄いためにローカリゼーションに要するコストの低いためと考えられる。

欧州市場における発売日接近しているのは、この市場がこれから重要になるのだと任天堂が考えている証拠だ。いや、これからではなく、すでに欧州市場は非常に重要なものとなりつつある。先日、ニンテンドーDSの販売台数が欧州市場で600万台を超えた。nintendogsが400万本、本体の2/3という信じられない本数が売れているという異常事態も影響しているのだと思うが、この販売台数は北米市場とほぼ同等だ。任天堂の岩田社長が以前講演で語ったとおり、日本:北米:欧州の比率が1:2:1であったいままでのハードとは異なり、ニンテンドーDSでは2:1:1というわけだ。余談だが、日本国内では既にニンテンドーDSの販売台数が1,000万台を超えているわけで、全世界では2,200万台程度になっているものと思われる。ゲームキューブは現時点で2,100万台程度。5年間の積み重ねを2年で追い越してしまったということになる。すごいなあ。

若干話がそれてしまったが、要するに欧州市場はこれから非常に重要ということだ。ただ、1パッケージに多くの言語を詰め込む必要があること、税制上の問題等で価格が高くなってしまうこと、国ごとに販売経路等が異なり売り上げの把握が難しいこと、言語だけではなく文化も各国に配慮しなくてはいけないことなど問題は山積みだ。ノンゲーマー層の取り込みで年齢の壁を越えた任天堂は、地域や文化の壁も突き崩すことが出来るだろうか。生産上のトラブルがあったとはいえ、欧州市場のみ来年3月まで延期という決断をしたプレイステーション3に対する反発が、地元では非常に大きいと言われている。3ヶ月のアドバンテージを持つWiiが欧州市場でどのような売れ行きを示すのか非常に楽しみである。

また、日本市場と、北米/欧州市場ではWiiの販売形式に若干の違いがある。日本ではWii本体の他にリモコン、ヌンチャク等のハードウェアだけが付属するのだが、それ以外の市場ではさらにWii Sportsがバンドル(同梱)される。このソフトは日本では4,800円で別売りされる。そのため、北米での販売価格は249.99ドル(3万円弱)、欧州では249ユーロ(37,000円程度)、ユーロを使用しないイギリスでは179ポンド(4万円弱)と日本と比べて高価だ。価格面で不利な印象を受けるのに、あえてバンドルするのは、象徴的なソフトをセットにすることでWiiのコンセプトをわかりやすく伝えるためというのが一番の理由と考えられる。また、海外の事情はよく分からないが、買ってすぐに遊べる、合計金額を考えなくて良いというシンプルさが好印象を与えるのではないだろうか。日本ではバンドルソフトが「抱き合わせ」と認識され、敬遠される傾向にあること、本体価格の25,000円を維持したかったのが同梱しない理由だろう。余談だが、NES(ファミコン)の発売の際にも、NOA(任天堂の北米法人)は光線銃を同梱するなどしていた。ニンテンドーDSにもメトロイドプライムハンターズの体験版を同梱している。このあたりの違いは国民性だろうか。

さて、このWiiを任天堂はどう普及させていくのだろうか。岩田氏は、Wii Previewで次のように語っている。

出会った周囲の方々にDSを見せていただいたことで魅力が伝わり、それが普及の大きな後押しとなりました。(中略)持ち運ぶことのできないWiiのような据置型ゲーム機では、DSのような形で魅力が伝わっていくことは期待できません。

(中略)ここまでDSが普及したという事実があっても、それだけではWiiの普及を100%保証できるわけではない、と私達は考えています。
(Wii Preview 社長プレゼン全文)

たしかにもっともなことだ。実際、昨年末に帰省したときに両親にニンテンドーDSを触らせたら、その日のうちに買いに走る羽目になった(まだ、ギリギリ在庫があった)。見せびらかしたら、知人がそのまま買いに行ったこともある。実際に見せる、触らせると言うことはものすごく重要なことである。しかし、Wiiではそれができない。じゃあ、Wiiをどうやってみんなに触らせるか?─これが一番の問題である。

任天堂はこの問題をどうやって解決するのだろうか?わくわくしながらWii Previewの全文を何度も見直した。見直した。動画でも確認した。だけど、どこにもこの問題の答えが書かれていなかった。岩田氏が語ったのは、「Wiiを買ったらこんな素晴らしい体験ができます」「Wiiは家族みんなで楽しめます」「Wiiは邪魔になりません」といったことだけ。どうやって無関心な人たちとWiiを接触させのか、その答えをまったく示していない。

メール(伝言板)機能を楽しませるために遠隔地の親類に買わせる?家族が買ったからワシも遊ぶんじゃ?すぐに起動するから来客時にも大画面で写真を見せられる?そんなことで本当にハードが普及するのか?1人1台になりうるニンテンドーDSとは違って、家族みんなで遊んだとしても、ハードそのものの販売台数が劇的に増えることはないと思うが。未体験者が触れる機会はどうやって増やすつもりなのだろうか。

一応、発売前のWii体験会は実施される。─されるのだが、11月3日ポートメッセ名古屋、同12日インテックス大阪、同25/26日に幕張メッセでの開催だ。それ以上の詳細は今のところ不明。要するに3大都市圏のみなのである。ニンテンドーDSの体験会、NINTENDO WORLD Touch!DSでは5都市でやっていたというのに。そんなんじゃみんなに触ってもらえない。宮本さんも両手の指でWiiのマークを作ってる場合じゃない。っていうか、福岡でやれ

それはさておき、新商品のPRイベントで不安材料を出して、その解決策をあやふやなままにしているのはどうにも腑に落ちない。自信がないのだろうか?と思ったが、そうでもない。2006年度(2007年3月まで)の販売目標は世界販売台数が600万台予定で変わらないという。この600万という数字がどの程度か、過去の実績とならべてみよう。

任天堂プラットホーム販売予想台数/販売実績

発売時期がほぼ同じニンテンドーDSと比べるとわかりやすい。ニンテンドーDSは2004年度に527万台、ソフトを1,049万本販売した。それに対し、Wiiは600万台、1700万本を目標としている。強気だ。ソフトの販売台数については、据置型ハードと携帯ハードで装着率(ソフト/ハード比)が異なるのでニンテンドーDSとの比較ではなく、ゲームキューブと比べたほうがわかりやすい。ゲームキューブでは初年度に装着率3.78を達成している。Wiiの2.83は控えめだ。本体が600万台売れれば、ソフトは自然と1700万本に達するだろう。さらに日本以外の市場ではバンドルソフトの分も数えられるから、1700万本越えはさほど難しくないと思う。しかし、ハードの600万台はどうだろう。

600万台に繋がる好材料はいくつかある。欧州市場の販売開始が年内になっていることも、Wiiの予想数字が強気な理由のひとつだろう。また、岩田氏は否定していたがニンテンドーDSの好調さがWiiの売り上げに繋がる可能性もある。話題の任天堂が新ハードを出すという話が出れば否が応でも注目が集まる。さらに、任天堂がWiiそのものへの抱いている自信と期待も、600万台という数字をつけさせた理由のひとつだろう。

また、以前の予想では、この強気の原因が価格と発売日にあると睨んでいたが、結局平凡な価格と発売日が発表された。まあ、これは25,000円でもプレイステーション3の60GBモデルとは3倍の差が出て、人数分のコントローラといくつかのソフトを足してもまだWiiのほうが安いという状態なのだから、価格面で無理をしなくても十分に安価にみられると判断したのだろう。

しかし、そのあたりの好材料をかき集めても、4ヶ月強で600万台というのはかなり強気だ。1,800万台を1年間で売りさばくのと同じペースということになる。ゲームボーイアドバンスが最も売れた2003年度の実績よりも多い。少なくとも、今世紀に入ってから任天堂が単一のハードをこれを上回るペースで販売した実績はない。ただ、未確定の2006年度のニンテンドーDS販売台数が1,800万台を上回る可能性はある。もちろん、本体発売の最初の数週間は通常とは異なる売れ行きを示すため、単純に1年の売り上げと比較できるものではないが、ニンテンドーDSの初年度を超えるのは確実と任天堂は見ているわけだ。また、偶然かも知れないが(一応)先行して発売するプレイステーション3の出荷予想台数も同じく600万台である。

ただ、この数字はあくまで任天堂の願望であって、2002年度のゲームキューブ本体のように予想の半分以下の売り上げに落ち込む可能性だってある。

未練がましいかも知れないが、まだ任天堂は隠し球を持っているのではないかと自分は考えている。WiiChannelにとんでもないコンテンツをぶち込んでくるのではないか、前代未聞の規模でPR活動を展開するのではないか、それともまったく想像しない何かをしてくれるのではないか。ほぼすべてが明らかにされたが、発売までWiiには目が離せない。

まとめ(のようなもの)
・本体が高い言われてるけど、実は安くなってるんよ?
・欧州市場に注目。プレステ3のいない今がチャンスだ!
・欧米人はセット販売がお好き
・DSは売れたけどWiiが売れる保証はないね
・そうは言っておきながらWiiの販売目標は強気。
・強気の根拠はこれから明らかに!?


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コメント

いつも面白い記事をありがとうございます。
欧州市場、これからは重要ですね。
アメリカよりも潜在的なゲームユーザーが多いようです。
故に任天堂の方針はビンゴでしょうね。
Wii発売後の業界の動きが非常に楽しみです。

いつも見ております。書き込みは久しぶりです。
確かに今のままでは無理のある数字だと思います。発表も驚きがあまり無く、多くのユーザーに訴えかけるには弱い内容でした。
私は、企画的にもソフト的にも何かしらの展開があると思っています。

欧米の定価が高いと言及されてますが、
むしろ今のドル、ユーロが円に対して高いだけだと思いますよ。

円安、ユーロ高なんで。
日本円に直すと高く感じます。
旅行すると、円安のせいで、物価が20%くらい高く感じます。


おそらく、任天堂は今後の為替レートの長期的変動を想定すると、ドルもユーロも110円程度になると思っているんでしょう。

輸出企業なんで、将来の円高リスクに備えた定価設定としては妥当かな。

↓ユーロのチャート
http://quote.yahoo.co.jp/q?s=EURJPY=X&d=c&k=c3&a=v&p=m130,m260,s&t=ay&l=off&z=m&q=l&h=on

お久しぶり…です。ブログ形式になってからは初めてかもしれません。

今回の発表、確かに期待していたほどの情報は無くて、肩透かしを食らった感があります。果たしてこれからどうやっていくんでしょう。
まあ、発売までだいぶ時間もあることですし、あと1,2回は何かしら発表がありそうですけど(ていうかないと困る)。

しかし、体験会の会場の少なさだけはいただけませんねえ。
最低でも福岡、札幌、仙台あたりは必要だと思います。

いつもながら鋭い分析楽しく読ませていただきました。

任天堂:Wii、史上最高の普及台数へ-新ユーザー獲得で限界に挑戦
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=jpconews&tkr=7974:JP

これでもうかがえるように岩田社長かなり強気
ですよね。
実は自分もここまで強気にさせる何らかの強力な隠しネタがまだあると睨んでいます。

新型ゲーム機「Wii」、米発売後すぐに収益見込める=米国任天堂社長

 [ニューヨーク 14日 ロイター] 任天堂の米国法人社長は、新型家庭用ゲーム機「Wii(ウィー)」とその関連ソフトは、11月に米国で販売が開始されればすぐ収益が見込める、との見解を示した。
 米国任天堂のレジー・フィルズエイム社長が、ロイターのインタビューで語った。
 同社長は「Wiiのハードウェアとソフトウェアはすぐに利益を生み出すだろう」と述べた。
 さらに「これはライバル社とはかなり異なる哲学だ。われわれは双方向の娯楽分野でのみ勝負をしており、すべてにおいて利益を出さなければならない」と述べた。
 Wiiの発売価格は250ドル。米マイクロソフトの「Xbox360」、499ドルと599ドルで11月17日に米国で発売開始されるソニーの「プレイステーション3」との厳しい競争が予想されている。
(ロイター) - 9月15日9時20分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060915-00000465-reu-bus_all

宮本さんの指文字(?)はWiiを示していたんですね。12月2日の発売日を示したのかと勘違い。
WiiCHではサテラビューの進化型がみたいな。

ゲームを触ってもらうには、まずはコントローラーを触ってもらわなければいけません。
今のゲームを全くやらない人々にとっては、そのコントローラーに触ろうともしないのが実情です。

Wiiリモコンはおそらくテレビのリモコンの隣に置かれるはずです。
そうなった時、『ちょっと天気を調べてみよう』、『気になるニュースでもあるかな?』、といったキッカケでまずリモコンを触ってもらう。
そうやってWiiに触れる“機会”を作ることが重要なのです。

Wiiを起動しお天気を見ていたら、隣のチャンネルが気になって見てみる。
ひょっとしたらそこでヴァーチャルコンソールのチャンネルに興味を持ってもらえるかもしれない。
『そういえばこれで息子がテニスにように何やら振り回してたわね』といってWiiスポーツに興味を持ってもらえるかもしれない。

岩田社長はWiiプレヴューでちゃんと言ってますよ。
『家族とゲーム機の関係を変える』、『テレビとゲーム機の関係を変える』、『インターネットとテレビの関係を変える』と。

何のために任天堂がリモコン型のコントローラーにしたと思ってるんですか?
岩田社長も言ってるでしょ、『どうしてテレビのリモコンは誰もが触るのに、ゲーム機のコントローラーを触ろうともしない人がいるのだろう?』と。
その解答がWiiリモコンなんです。

誰にも怖がられないシンプルで直感的な操作が可能なWiiリモコン。
Wiiリモコンを触ってもらうことから、ゲーム業界拡大の第一歩が始まるんですよ。


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