2006年06月09日

任天堂経営方針説明会 テキスト起こし2


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テキスト起こし目次

任天堂経営方針説明会 テキスト起こし1の続き

・北米でのDS苦戦の理由
・ヨーロッパ市場で、異常な売れ方をするソフト
・今後のLiteの供給体制について

--任天堂経営方針説明会 テキスト起こし2 ここから--
(海外市場について)
さて、日本の話はこれぐらいにしまして海外の話を少しさせていただきたいと思います。

以前にも、「北米のゲーム市場は日本と状況が違います」ということを申し上げました。北米は、日本と違い、いわゆる「ゲーム離れ現象」が顕在化してこなかった市場です。そして、市場の懐が深く、商品が長期間にわたって安定的に、そして大量に売れる市場として、世界のゲームマーケットを牽引してきました。

このように日本と異なる状況ではあるのですが、この、ハードとソフトを分けてみますと、継続的に成長を続けてきた北米のソフト市場においても、市場縮小の兆しが現れているということがお分かりいただけると思います。

昨年は、ハードは伸びております。これはやはり、新しい携帯型のハードが出たことによって伸びているわけです。しかし、ソフトの伸びが止まり、逆に減少に転じてしまったということですね。で、さらにこれ、時期に分けてみますと、これは北米のソフト市場における、いわゆる前年同月比で、毎月前年の同じ月と比べてどうだったか、ということなんですけれど、変化の兆しは昨年の夏以降に非常に顕著に表れております。

とくに、8月から11月に、昨年を大きく割り込んだということがあって、このために例年にないほど、はやくクリスマス商戦が終わらないうちに在庫処分の値下げをされたり、業績の下方修正をされたソフトメーカーさんがありました。で、そのこともあって昨年末、北米ソフト市場の不調が伝えられたということをご存じの方も多いと思います。そして、年が明けても前年実績を割り込む状況が続いてきたわけです。その中で、北米のゲーム市場において携帯型のソフト占有率はあがっています。これはやはり、北米でも据置から携帯型へのシフトが進んでいることが分かります。

えー、ちなみにこれは、過去の任天堂プラットホームが地域別にどこで売れたのかということを示しているグラフです。ご覧の通り、北米が全世界の半分以上を占めて、残りを日本と欧州でほぼ同じぐらいの割合で分け合うという構造になっています。任天堂のプラットホームの歴史では、日本:北米:欧州が、1:2:1になっているというのが、これまでのパターンでした。

しかし、DSに関してはこれが大きく変わっております。まず、日本での販売が、他を圧倒しています。これは日本でいち早くユーザ拡大の成果が現れて、そして、結果として爆発的な普及が進んでいるということにもちろん…えー、おおきな…大きく影響していますし、また、DS Liteが日本で先行発売されているという背景があるということも言えると思います。

しかし、ほとんどの過去のプラットホームで(日本:北米:欧州が)1:2:1であった割合が、まあ、このグラフを見ますと、もう、2:1:1であると、見たことのない状況になっているわけですね。で、欧州はDSの発売が、他の地域より遅かったこともあって、現時点での状況は私自身は順調だと思っております。また、欧州の主要国すべてで、DSハードが一番売れている携帯ハードになっていますから、まずまず順調…むしろ、日本が出来すぎというわけですが、北米については市場規模を考えると、普及のペースが十分であるとは考えておりません。

実は、これにははっきりとした理由がございまして、これ(スライド)は、あの、北米市場で、携帯型のゲーム市場がどのような形で分け合われているのかとハードウェアとソフトウェアについてそれぞれ分けたものですが、実は北米だけは今でも市場の中心は『ゲームボーイアドバンス』なんですね。えー、ゲームボーイアドバンスが、トップシェアの携帯ゲーム機であり、ソフトに至ってはほぼ半分がアドバンスのソフトが今でも売れている。

これは非常に日本と環境が違います。日本のように市場が素早く変化する国、アメリカのように国が広くて、大きくて、情報が伝わるのに時間がかかる、変化が少しゆっくりである国での違いが出ているのかもしれません。ここに、北米独自の事情があってそのこともあってニンテンドーDSの北米における普及ペースは日本と比べるとどうしても見劣りがしてしまうということがあります。

ちなみに欧州についてはアメリカのようなわかりやすい統計データがございません。また、えー、特定の国だけを取り上げてもですね、あまり…えーー…適切な比較になりませんので、えー、各国の調査会社さんが出しているトップ100のデータから集計をしてですね、トップしゃく…100のソフトの販売数量を、こう、2年にわたって、比較をしてみました。

すると、やはり2005年にソフト市場は伸び悩んでいるんですね。で、多くの国で縮小傾向になっていました。えー、例外があってスペインだけが若干、拡大をしていました。ただ、他すべての国は前年を割り込んでいました。ですから、従来、日本で従来路線を続けていくと、もうこの先ゲーム業界成長できないということはずいぶん前から言われてまいりました。それが、アメリカやヨーロッパについても、そういう時期が徐々に近づいてきたのではないか。また、それが顕在化してきたのではないか、というふうに私たちは考えております。

(国内市場の供給改善について)
次に、DSをこれからどうするのかというお話をさせていただきます。

まず、何よりも優先しなければならないことは、「国内市場においての供給を改善すること」でございます。えー、これまで、DS Liteの発売から、3ヶ月で市場に200万台以上を出荷いたしました。えー、もちろん新しくゲーム機が出ますと、ある最初の台数…まあ、50万から100万台程度ではないかと思いますが、初期需要というものが存在します。新しいものをいち早くお買い求めになりたいという方が、たくさんいらっしゃいますので、そういう方たちの需要を一巡するまでは品不足になることが多いと。これはゲームの歴史の中でいつもあったことです。

しかしながら、えー、毎週の出荷するニンテンドーDS Liteは、ほぼすべてが、えー、日曜日までに売り切れてしまいます。200万台以上を出荷したにもかかわらず、このような状況が続いている。しかも、出ている台数も、毎週1万や2万ではなくて、毎週10万以上…15万台。えー、スーパーマリオを出した週(2006年5月第4週)に至っては30万台をまとめて市場に出しているわけです。それにもかかわらず、まだ、品不足が解消できない…というのが今の状況でございます。
(※その、30万台が1週間で売れてしまった週のファミ通集計)

ちなみに5月の製造台数は160万台強でした。えー、私どもは、6月からアメリカやヨーロッパでDS Liteを発売しますので、そのための準備も必要だったんですが、この(海外向け出荷予定分の)約半数を日本市場に投入しております。ですから、今でも日本の受給の問題をかい…、日本の需給バランスの回復が重要な課題であるという位置づけのもとに、優先的に日本市場への商品供給は続けているつもりでございます。しかしながら、えー、まだ、えー、それが解決できていないというのが現状です。

まぁ今後、えー、DS Liteが海外で発売されていく中で、えー、今後作るものもですね、海外と日本で分け合わなければならないんですが、国内のじゅ…供給量が今後、大きく減ることがないようにいきたいと考えております。

ちなみに、現在は夏以降ですね、月産200万台を超える体制を作ろうということで、色々準備に向けて動いておりまして、月産220万台ぐらいまでは目処が付いております。
(※GAMEWATCHによると、これはニンテンドーDS Liteだけの台数ではなく、ニンテンドーDSを含めた2機種の生産台数)

(海外市場でのDSの強化)
次に、海外市場におけるDSの強化というものがございます。先ほどごらんいただいたように、日本の市場で先にDSが爆発しました。爆発…「この、爆発的普及の勢いを海外にも広げていきたい」と当然任天堂は考えております。

特に、北米において、まだゲームボーイアドバンスが中心であるという状況の中からですね、私どもとしてはDSのポテンシャルをもっと刈り取りにいきたいというふうに考えております。特に、日本で実現できたようにユニークな商品ラインナップで、競争のない「ブルーオーシャン市場」(ライバルが存在しない、まるで真っ青な大海原のような無競争市場という意味)というものを確立していきたいと考えております。そして、それが普段ゲームをされない方にまで伝わっていくと、過去の市場では説明できないような爆発的な普及現象が起こります。

もちろんこれは、簡単に実現できるものではないと思っておりますし、おそらく相当にエネルギーの要ることだと思っておりますが、一方で、『nintendogs』は実は海外で、日本を超える実績をあげております。ですから、「今までゲームとされなかったようなソフトが海外では受け入れられないんだ」と決めてかかる必要は全然ないわけです。こういう背景がございますので、Touch!Generationシリーズの投入を、これから海外でも加速していくと同時に、えー、出来れば欧米独自のテーマのタイトルの追加投入しようと色々な準備をいま進めております。

ちなみにnintendogsですが、日本で100万本強売れております。しかし、実は海外の方がはるかに売れておりまして、出荷ベースではアメリカで230万本、そして驚くべき事にヨーロッパでは300万本を超えております。

えー、ヨーロッパはまだ日本のようにハードの普及は進んでおりません。言い換えますと、ハードの普及台数の2/3ほどのnintendogsが売れているということになります。ハードを買う方が3人に2人、nintendogsを遊んでくださっていると。ですから、日本で「DSってのは脳を鍛える機械ですね」って言葉があるとすれば、ヨーロッパでは「DSってのは犬を飼う機械ですね」っていうふうに認識されるぐらいに、この欧州でのnintendogsの人気は凄まじいものがあります。

そして、そのnintendogsのお客様はそのままどうぶつの森に興味を持って遊んでくれるという流れが出来つつあります。実は、あの、ヨーロッパではローカライズの関係で昨年は発売できずに、今年の3月に発売しました。ちょうど、2ヶ月経ったところです。えー、年末に発売したアメリカ以上の勢いで今のところ売れていますので、これからまた、広がっていくんじゃないかというふうに思います。

まあ、このようにnintendogsの成功というものは、Touch!Generationsのようなまったく新しいソフトにも市場性があるということを証明しております。

次に、先日行われた…ロサンゼルスで行われたE3(エレクトロニックエンターテインメントエキスポ、ゲーム業界の見本市)で我々がTouch!Generationsのソフトをお見せしましたので、そのTouch!Generationsのソフトを楽しんでいる来場者のみなさんの様子をちょっとごらんいただこうかと思います
(映像がE3の会場に切り替わる)

(映像を見ながら)
…脳年齢出たんですかね、いまのこの人。ねえ。
(『Brain Age』で計算ゲームをする男性などが映し出される)
えー、例年携帯型ゲーム機のコーナーというのは、わりとすいていてしまうんですけども、今年は熱気がありました。そして常に人が付いている状態で、たくさんの人が興味を持って(Touch!Generationsのソフトに)触ってくださいました。ですから、私自身はこういう姿を見ていると、北米でもそしてヨーロッパでもこういうソフトの市場性に可能性はある、ということを確信しております。
(映像終わり)

(海外版の脳トレについて)
ちなみに、海外版の脳トレは『Brain Age』という名前で発売しています。これは4月17日にアメリカで売りました。ヨーロッパはこれからです。これまで発売7週間で20万個ちょっと売れてます。で、ごらんいただいているように、アメリカのマーケットというものは平均的に日本のマーケットと比べると、販売の減衰が少ない、商品が長く売れるマーケットなんですけれども、そしてまた、DSのソフトの中で長く売れるものが多いというのは日本と同じ傾向なんですけれども、その標準と比べても、かなり減衰が違うというのがお分かりいただけます。

これも日本の初期の売れ方とちょっと似ているんですね、ただ、状況は大きく違います。それは日本ではもともと、(『脳を鍛える大人のDSトレーニング』の監修者の)川島先生の本『脳を鍛える大人のドリル』が大ヒットしていて、200万部以上売れているという下地があったところに私どもがソフトを出したわけですけれども、アメリカでは川島先生の本が事前にヒットしているということはない状況で、「日本でこういうゲームがものすごくヒットしたよ」ということが話題になって、アメリカに入っていったわけですね。

ですから、一概に同じように比較は出来ません。しかし、そういう状況であることを考えると、もちろん日本と同じような状況になるかどうかというのは誰にもわかりませんし、また、日本の結果が出来すぎであることは私たちも感じているところですが、しかし、今後に十分に期待の出来る推移になっているんじゃないかなというふうに思います。

--任天堂経営方針説明会 テキスト起こし2 ここまで--

続いて、相変わらず長いタイトルのTouch!Generationsシリーズ新作、コアゲーマーへの対応、ポケモン新作について
任天堂経営方針説明会 テキスト起こし3に続く


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この記事の前後の記事
2006年06月09日:任天堂経営方針説明会 テキスト起こし3
2006年06月09日:任天堂経営方針説明会 テキスト起こし1

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コメント

「DSが週に50万台出ている」というのを読んで、身震いしました。
「どうぶつの森」などで思ったのですが、DSのソフトは息が長いですね。
「最近のゲーマーは、1つのゲームを大事にしない」と思ってたので意外でした。
しかし実際は、「ゲーマーが…」というより、それだけ長い間遊べるゲームが、ついに出た、ということですよね。
クリエイターの夢をかなえるハードがついに出た、とも言えるかもしれません。


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