2004年11月26日

任天堂の20世紀、任天堂の21世紀 2章:NINTENDO64 1996年(1)


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NINTENDO64発売
1996年6月23日、NINTENDO64が発売された。本体にはコントローラ1つ、ACアダプタ、説明書のみが同梱された。テレビとの接続に必要なAVケーブルはスーパーファミコンのものがそのまま流用できたからである。本体の形状は曲線を多用し今までの無骨な任天堂のハードとはちょっと違う印象を受ける。NINTENDO64の名称は全世界で共通の名称として用いられ、デザインも同じものを世界中で発売したのが原因だろうか。それまでは日本と海外では別のデザイン、名称で販売していた。例えばファミリーコンピューターは海外でNES(NINTENDO ENTERTAINMENT SYSTEM)という名で発売され、形状も日本のものとは異なっていた。余談だが、MOTHER2の主人公ネスの名はこの海外版ファミコンの名称から名付けられたものだ。

少数精鋭
本体と同時発売ソフトはわずか3本。強大な勢力を誇っていたスーパーファミコンの後続機種である事を考えるとあまりにも寂しい。同時発売のソフト以降のスケジュールも未定のものが多く、ほとんどが任天堂発売のソフトになっていた。それにはある思惑があった。NINTENDO64発売にあたって任天堂は「少数精鋭」を唱えている。それはスーパーファミコン末期にゲーム業界の利益を得ようと多数の企業が大量の粗悪なソフトを発売し、市場に完成度の低いソフトが出回ったことを反省してのことである。娯楽業界において"質より量"であってはならない。それが任天堂の考えであった。

高いハードルを設け、それを乗り越えることが出来た企業とそのソフトのみが発売されればいい。それが任天堂の考えだ。多数のメーカーが参入することで、たくさんのソフトが出るようになり、結果、駄目なソフトばかりが集まるのを嫌っていた。それは劣悪なソフトを遊んだユーザーがゲームそのものから離れてしまうことを恐れたからである。

また、優秀なソフトばかりが揃えばそのハードを購入したユーザーが新しいソフトを安心して次々と買うことが出来る。ゲーム機というものは本体が売れても利益にはならない。本体は利益を無視してとにかくたくさん市場に出し、ソフトを売ることによって利益を得るのがこの業界の常識である。ソフトの価格にはライセンス料が加算され、ハードメーカーにフィードバックされる。本体1台あたりの、ソフトの売れた本数が多ければ多いほど利益は大きくなるのである。逆に門戸を広げて多数のソフトを発売すれば、ソフトがたくさん遊べるハードとしてハードがより売れるだろう。そういう道もあった。だが、任天堂はそれよりも限られたシェアの中でソフトをたくさん売るための少数精鋭を選んだ。


完成されすぎたソフト
NINTENDO64と同時発売の3本のソフトは任天堂の「スーパーマリオ64」「パイロットウィングス64」、それとセタの「最強羽生将棋」である。スーパーファミコン用ソフトがまだ発売され続け、店舗で陳列されている状態であったため識別のために箱のサイズは一回り大きく、タイトルに"64"がついている。パイロットウィングス64と最強羽生将棋は、もちろんゲームとしての体裁を整えてはいたが、それぞれ3D性能とCPUの処理速度をアピールする意味合いが若干強く、商業的にみれば少し弱い。一方、スーパーマリオ64はNINTENDO64のデモ的な雰囲気を持ちつつも任天堂の看板キャラであるマリオを使用しNINTENDO64を牽引するキラーソフトと呼べる存在である。

スーパーマリオ64は驚異的なソフトだ。ゲームを始めるとまずその完璧な3D空間に驚かされる。それまでの3Dゲームでは空間を構築する部品を構成するポリゴンと呼ばれる三角形同士の間に隙間が見えたり、角張っていたり、そのポリゴンの表面に描かれた画像がギザギザで非常に見にくい状態のものがほとんどだった。しかし、スーパーマリオ64ではポリゴンの継ぎ目など見えず、表面もなめらか。特に水の表現が素晴らしく、霧や雲まできちんと描かれており、遠景はちゃんと霞んでいる。見た目だけではない。その3D空間の中で複雑なアクションをプレイヤが好きなように実行できる。3Dスティックによる操作で味わう一体感、必要なボタンは基本的にAボタンだけという単純さ、歩く、走る、ジャンプする。スーパーマリオの世界観を継承しつつ、躍動的な3Dアクションという新ジャンルを完璧なまでに確立した。

しかし、このソフトが完璧であるが故に、"NINTENDO64=スーパーマリオ64"という図式を作り出してしまう。それは、ユーザーがマリオ並の完成度を開発者に求めることを意味し、メーカーは開発中の自社ソフトをマリオと比較してしまうこととなる。だが、NINTENDO64が持つ特有のソフトの作りにくさのため、サードパーティーにそれを求めるのは不可能なことだった。

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スーパーマリオ64

ピーチ姫に誘われたマリオがキノコ城に来てみると、ピーチ姫はクッパにさらわれていた。マリオは城の中の絵に飛び込んでクッパに奪われたパワースターを取り戻し、ピーチ姫を救う。マリオの弟、ルイージは一切登場しない。

15の絵の中の世界があり、それぞれ7つのスターが隠されている。ボスを倒す、謎を解く、コインを集めるなど様々なイベントをこなすとスターを手に入れることが出来る。手に入れたスターの数によって入れる絵が増えてくる。順番は決まっていないので苦手なイベントは後に残せる。クッパを倒せばエンディングが見られるが、120個のスターを手に入れるのが最終目的となる。120個のスターを手に入れることでピーチ城の屋上にいるヨッシーと出会うことが出来るという心憎いギミックも盛り込んでいた。はじめは難解な操作も慣れれば自分の手足のようにマリオを操れる。そうなってしまえばただ走り回るだけで面白い。

CESA大賞(現在の日本ゲーム大賞)の最優秀賞など様々な賞を受賞している。

2004年12月2日、様々な要素を追加した「スーパーマリオ64DS」がNINTENDO DSの同時発売ソフトとして発売される。


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この記事の前後の記事
2004年11月27日:DSにTouchしてきたぜ
2004年11月26日:任天堂の20世紀、任天堂の21世紀 1章:NINTENDO64 発売前夜

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