2012年03月10日

父親にメールを送りながら亡くなった気仙沼の女の子はいなかった


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フェイスブックやTwitterで感動話として出回っているイラストについて、ひとこと言ってやろうかと思ったが、すでに他のblogで散々言われていた。
今回はスルーでもいいかなと思っていたが、気になることがあったので自分なりにまとめ直すことにした。

そもそも何が起きたのか?

そもそもの発端はこれ。瀧本 光静さんのフォトアルバム | Facebook
フェイスブックのアカウントがなくても読めるはず。
本人のblogにも同じ画像が掲載されている。最後のメール :: 一番短いお説法

念のためこちらでも引用
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このメールについて、懐疑的な意見が複数出ている。

震災姉妹 最後のメールはデマ!? - Hagex-day.info
Gerologue: ???被災者姉妹の最後のメール
「気仙沼で発見された携帯に残された最後のメール」の真偽についてのまとめ - NAVER まとめ

メールの内容を鵜呑みのするのも、批判意見を鵜呑みにするのも同じぐらい危険な行為なので、私の方でも再検証してみることにした。

事実関係の整理

このメールが100%真実だと仮定し、イラストや解説文からわかることを列挙してみよう。

・当時、父親は48歳で埼玉にいた
・姉は17歳で死亡した
・妹は14歳で姉より先に死亡した
・姉も妹も即死ではない
・妹は死亡する前に姉に痛みを訴えた
・姉は妹の死を声の有無だけで判定している
・姉は妹死亡時に携帯電話を操作する事が可能であった
・携帯電話発見後、父親はを瀧本光静さんに携帯電話を見せた

事実関係を整理した上で、疑問点をあげてみる。

被災したのはどこか?

学校で被災した児童が多くいることはニュースなどでさんざん流れているので、周知の事実だが、地震発生は金曜の昼すぎであり学校では授業が行われていた。
つまり、年齢的に中学生である妹は、当時中学校にいた可能性が非常に高い。

年齢的に姉が妹と同じ中学校にいた可能性はほぼゼロだろう。

地震発生時に別々の場所にいた家族が合流して、その後津波に流された可能性もあるだろうが、津波に流されてあのメールのシチュエーションにはならないだろう。

そうなると、たまたま学校を休んでいたか、「地震発生後に帰宅し、そこで姉妹が合流したうえで津波以外の死に至るような出来事が発生した」といった筋書きを考えないといけなくなる。もちろん他の可能性もあるが、少なくとも地震直後に建物の下敷きになったのではない。

死亡者リストに存在しない?

警察発表の宮城県での死亡者リストを表計算ソフトに取り込んで、年齢と住所でソートしてみたが、気仙沼もしくは埼玉に住所がある14歳と17歳の同姓の姉妹は存在しなかった。離婚等の理由により姉妹で別姓になっている可能性も考慮しても同様である。年齢や地域が間違っている可能性を考慮し、12~20歳まで範囲を広げたが該当者は見つからなかった。

余談だが、このリストは警察が調べた信ぴょう性の高い事実の塊なので、冒頭のイラストなんかよりもダイレクトに心に響いた。例えば年齢でソートすると一番上に0歳が出てくるし、住所と名前でソートすると家族がひとかたまりになって出てくる。

死因は?

前述のように、水死であのようなメールを残すことはできないだろう。
圧死、餓死、低体温症あたりが考えられるが、前述の所在地問題を考えると圧死は考えにくい。状況的に餓死もないか。

推測になってしまうが、妹が死んだ可能性があるにもかかわらず心拍や呼吸の確認すらしないのは、姉が物理的に移動不可の状況にある事が考えられる。非常に特殊なシチュエーションだ。

さらに、東日本大震災における死因は9割が水死である。検死が間に合わず、原因が特定できない遺体を水死と判断した部分は少なからずあるだろうが、水死以外は非常に少ない。

今回の震災で大勢の人が亡くなったが、「家族がそばにいるのに、死んだかどうかを声だけで判定している」という状況はほぼゼロじゃないだろうか?

メールの内容が不自然では?

疑問点が多すぎるので箇条書き。

・父に送るメールで妹のことを「妹」と書くはずがない
・携帯電話には予測変換があるから「ありが」で止まるのはおかしい
・妹が死んだのに顔文字使うのはおかしい
・「ありが」まで打って送信(もしくは保存)ボタンを押すのは不自然
・そもそも文体が年齢に合っていない

記憶を頼りに書いているので内容が変わっているとか、プライバシーを考慮して書き換えたとか、父親と名乗る男の悪質なジョークにハメられたとか、いくらでも言い訳はできるが…。

結論

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画像を再度見て欲しい。
上に羅列した疑問点を頭に入れた状態でもう一度読んで、それでもこれが感動実話に見えるだろうか?

断言する。
このメールは完全な捏造、もしくは根本的な部分で内容が大幅に改変されている。

完全オリジナルストーリーとは考えにくいので、災害映画等で定番の被災者同士が励まし合うシーンと、日航ジャンボの墜落地点で発見された遺書などがミックスされたのではないだろうか?
少なくとも今回の震災で、あの状況はまず起こりえない。

「嘘を付くのが上手い人は、あえてディテールは語らない。嘘を付くのが下手な人は細部まで語ってしまう」という話を聞いたことがある。今回はまさに後者だろう。余計な情報が多いせいでウソがバレバレだ。

事実と称された捏造話を広める罪

さて、ここからが本題。

他の方が検証済みなのに、あえてこの話を持ちだしたのは、事あるごとに「可能性はゼロではない」とか言って変な方向に話を持って行こうとする人がいて辟易したから。
そりゃ可能性はゼロではないと言われればそうですねとしか言えないけどさ。
「存在しない」を証明するのは「悪魔の証明」といって、非常に難しいものだ。だから、一つ一つ疑問点を上げて検証して、状況証拠とあわせてウソだと判定しなくてはいけない。
そもそも、そうまでして肯定したくなる話か?これ。

また、こういうデマ検証があると必ず、「感動できる話だし考えさせられるからデマでもいいじゃないですか」みたいな人が湧いて出る。
それじゃダメなんだ。

クオリティの低いストーリーだから事実だという色付けをしちゃっているだけの話で、これが最初からフィクションだとわかっていたら、これほど陳腐な話はない。少なくとも、震災についてまじめに考えていた人なら、ああいう災害時の状況に反した筋書きにはしないだろう。

仮に、瀧本光静さんが「これは震災をもとにしたフィクションです。この原稿を宗教新聞の連載に載せて、ゆくゆくは単行本化して売るつもりですし、似たような本もすでに出していますので興味がおありの方はご購入ください」と正直に書いていたら、なんの問題もないが、その場合、ここまでシェアされたりRTされたりして広まっただろうか?

こういうデマを許容するということは、フィクションとして通用しないレベルの作品に事実だと味付けすることを認めることになる。それでいいの?

万が一、メールの件が事実(もしくは悪意のない誤解)だとしても、死者のメールを商売のネタとして第三者が利用するのは最低の行為だし、そんなゲスにわざわざ加担して宣伝を手伝ってやる必要はない。

デマにもいろんな性質のものがある。
病院の輸血用血液不足や、捨て犬の里親探し、古くは銀行の取り付け騒ぎなど、関係各所に実害が出るものや、今回のように特に被害者が出たりしないものがある。

たしかに、今回のメールが事実かどうかはあまり重要ではないかもしれない。
しかし、それでは情報の取捨選択において「情報の真贋」よりも「刺激の強さ」が重要ということになってしまう。
大量の情報が流れる中で、その話が本当かどうかよりも「感動を生むもの」「正義感を刺激するもの」が優先的に選択され、拡散されていったらどうなるか?重大事件の加害者と誤解され、誹謗中傷を受けたスマイリーキクチさんのようなデマの被害者が、次々と生まれることになってしまうのではないだろうか?

シンプルでわかりやすく感動や正義感を刺激するストーリーが目に入ったときは、それを広める前にちょっと立ち止まって欲しい。本当にそれが事実かどうか調べる時間がない場合は、せめて拡散せずに自分の所で拡散の連鎖を止めるだけでいい。


あと、ちょっと調べてみたら、瀧本光静さんや所属する新興宗教団体についてもいろいろ出てきたけど、まあ、それは今回はそこが本題ではないので別にどうでもいいや。個人的には彼女の本を買うぐらいなら、そのお金を被災地に寄付することを強く推奨します。

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