2006年06月09日

任天堂経営方針説明会 テキスト起こし1


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テキスト起こし目次

・岩田氏の挨拶
・ニンテンドーDSの快進撃
・脳トレの異常な売れ方に任天堂自身もビックリ
・ユーザ層の変化

--任天堂経営方針説明会 テキスト起こし1 ここから--
(冒頭の司会者挨拶/出席役員紹介は省略・司会は任天堂東京支店長)

(岩田社長挨拶)
えー、本日はお忙しい中、当社の経営方針説明会におこしいただき、ありがとうございます。社長の岩田でございます。今日は、先ほどご紹介ありましたように、まず私からお話しをさせていただいて、そのあとで皆様からご質問をお受けしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。(※質疑応答は今回のビデオに含まれない)

えー、ちょうど一年前の事になりますが、私はここで、えー、経営方針説明会をいたしたわけですが、その際に冒頭にですね「みなさんは最近、ゲームで遊ばれているでしょうか?」という、問いかけをさせていただきました。

もちろん、この一年間でそれが少し変わったのではないかということを実感しているんですけれども、まぁ、一年前の時点では「昔は遊んでいたけれども、今は忙しくてとてもそんな時間はない」あるいは「近頃のゲームはどうも小難しくて、ついていけない」というような方が、多かったのではないかと思いますし、また、みなさんの回りでも、日常的にゲームの…ゲームを遊ぶ習慣を持っていらっしゃる同年代の方というのは、それほど多くはなかったのではないか、というふうに感じております。

任天堂はこのような環境を変え、世界中の一人でも多くの人たちにゲームの楽しさを味わっていただきたい─という考えのもとに、過去3年、一貫して、任天堂の基本戦略は、年齢、性別、そしてゲーム経験の有無を問わず、誰もが楽しめるように…そういう商品を提案することで、ゲーム人口を拡大することで(一人でも多くにゲームを楽しんで貰いたい)、ということを繰り返しお伝えしておりました。

そして、その目標のもとに私たちが発売した最初のゲーム機が、2004年末に発売した『ニンテンドーDS』であり、そして、2006年3月。えー、DSの発売後に「お客様からお寄せいただいた様々な声を出来る限り反映する」ということを目指して、上位モデルとして『ニンテンドーDS Lite』を投入しました。


(ニンテンドーDSの成果について)
まず始めに、我々がニンテンドーDSで取り組んだゲーム人口拡大ということへのチャレンジが、どのように成果を上げたか─ということからお話しさせていただきたいと思います。

まず、日本のゲーム市場の現状についてです。これはいつもお見せしているCESAが発表している日本のゲーム市場の推移です。ごらんいただいているように、日本の市場では長年にわたり、いわゆる「ゲーム離れ」による市場縮小が続いてきましたが、昨年、ついにその流れに歯止めがかかり、国内市場は成長に転じました

ただし、このようにハードとソフトを分離したグラフにいたしますと、昨年の市場の成長は、ハードの販売が増えたことによるものであることがよく分かります。この伸びは、新しい携帯型のハードがよく売れたことによるものですが、DSの圧倒的普及、そしてそれに伴うソフト市場の急拡大は、昨年の11月後半以降のことでしたから、ソフト市場の成長というのは、まだ、この統計に十分に現れているとは言えません。そこで、直近の半年、すなわち12月から5月までを比較対象として、メディアクリエイトさんのデータを使って、同じ期間を3年にわたり比較してみました。

ごらんいただいているように、当社のニンテンドーDS、あるいはSONYさんの『PSP』が発売された2004年の12月以降、携帯ハードの販売が大きく伸びています…この黄色い部分ですね。そして、昨年末以降、DSが圧倒的普及期に入ってからは、携帯ソフトの市場…緑色の部分です。これが急拡大しております。さらに、年明け以降だけを比較してみますと、DSが爆発的に普及する状況に入ってから、いかに携帯市場が拡大しているか…ということは、さらに鮮明に現れてまいります。

ちなみに今年の3月には、『ファイナルファンタジー12』が発売されています。ですから、その分が…えー、据置のソフト、えー赤い色の所ですね…この部分に反映されているはずなんですが、それにもかかわらず、据置型の市場規模は昨年とほとんど変わりません。それに対して、携帯型は全体として91%のアップ。特に、ソフトについては昨年の2倍以上になっています。日本の市場は全体として、据置型から携帯型へのシフトが進んでいると言えるデータです。この中で、携帯型のハードの73%、ソフトの78%がDSで占められています。この、市場の拡大はDSを中心に進んでいるということが言えると思います。

また、DS市場の変化というのを、少し違う角度でごらんいただきます。これは日本のビデオゲーム市場のソフトの販売数の中で、DS用のソフトの占める割合の推移です。一番左側が、DSが発売された週です。一番右側の週が…えー先週のデータはまだ出ておりませんので…先々週のデータになりますが、ちょうど『Newスーパーマリオ(ブラザーズ)』という新しいソフトが発売されたときのデータです。特に、昨年後半以降、その割合(DSの市場占有率)が急激に高まってきているというのがおわかりいただけると思います。

ここに、SONYさんの『プレイステーション2』の市場占有率を重ね合わせてみますと、昨年前半の時点では、ビデオゲーム市場というのはあくまで据置型のソフトが中心であり、また、その中でPS2のソフトが圧倒的な市場占有率を占めていた、ということがよく分かると思います。しかし、既に状況は大きく変わっております。

昨年の年末商戦は、日本のゲームの歴史の中で初めて、「携帯型ゲームソフトの市場占有率が据置型ゲームソフトの市場占有率を上回る」という事態がおこりました。そして、年が明けてからも、この流れはそのまま続いております。

まあ…例年、「年末商戦には強いんだけども、年が明けると静かになる」と任天堂は評されるわけですけども、今年に関しては1年前とまったく違う状況になっているということが、よくおわかりいただけると思います。この色を付けた部分は、それぞれ、年明け以降ですね。えー、この5月の末までの部分に当たるんですが、この1年間の大きな変化というのがおわかりいただけると思います。

(ニンテンドーDSソフト市場の特徴)
もう一つ、DSのソフト市場の特徴は、商品寿命が長いことにあります。日本のゲームソフト市場がやや不健全な状況になってしまった中にはですね、非常にソフトが短期間しか売れない…最初はたくさん売れる物が、すぐに商品寿命が尽きてしまうという問題にございました。

このグラフは日本の市場において、PS2の主要なヒット作、えー、歴代のTOP30をとりまして、その毎週の販売量がどのように推移するかということの平均を取ったものです。まあ、我々ゲームソフトを作る立場の者にとっては大変不健全なことなんですが、やはり、商品寿命がきわめて短いということがおわかりいただけるかと思います。

しかし、DSの場合は長寿命商品がいくつもあることが影響しまして、商品が長い間売れる傾向というのがはっきり出てまいります。このような市場の変化を生み出す上で、ゲーム人口拡大を目指して開発した『Touch! Generations』と呼んだソフト群が果たした役割が、非常に大きかったと思っております。

かつては、「犬をかわいがる」とか「脳を鍛える」とか「頭をやわらかくする」とか「楽しみながら英語を学ぶ」とかいうようなことは、ゲームの定義には含まれていなかったかもしれませんが、今では立派にゲームの仲間入りしたのではないかと思います。その中でも「脳トレーニングブーム」を生み出した2つのソフトが、ゲーム人口の拡大に大きな役割を果たしました。

『脳を鍛える大人のDSトレーニング』、通称「脳トレ」は、累計出荷がすでに250万本を突破して、まだまだ需要の底が見えない…きわめて異常な売れ方をしております。発売週からの週間販売推移を見てみると、このソフト、いかに異常な増え方をしているかが、よく分かると思いますので、ご覧ください。

先ほどのグラフ(PS2とDSの週ごとの販売数推移)と、縦のスケール(尺度)が違うのですが、ピンク色の線は、先ほどごらんいただいた、「相対的には長寿命です」と申し上げたDSソフト全体の、週間販売の推移です。赤い線は「脳トレ」の販売推移です。……もう、まったく見たことのない形になっています。

中央の大きな山は、昨年の年末商戦の時のものです。発売週の3.5倍ぐらい売れています。えー、ちなみにこれはシリーズ第2弾の『もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング』が発売された週でもあります。そして、今年に入ってからは、コンスタントに発売週の実績を超えるという、怪現象が起こっております。えー、実際にこの販売数の増減を分析しますと、毎週の増減というのは実質的に、その週のDSハード、DS Liteハードの出荷数に依存しています。言い換えると、「ハードが売れるとそれに応じて1年前に発売されたソフトが売れている」という、業界にとって前代未聞の出来事が起こっているわけです。

そして、昨年末に発売した『もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング』は驚異的なペースで、前作を抜き去り、すでに270万本を超える出荷となっています。

これは、発売からの累計販売数の伸びを示しているグラフです。ほとんどのソフトが、「発売後、短期間で伸びが止まる」というのが日本のゲーム市場の常識だったわけですけれども、まったく伸びの衰えが見えない推移になっています。まぁ、正直申し上げて、任天堂の…えー…中でも、ですね「一体このソフトがどこまで伸びるか?」ということは、まったく分からなくなりました。…というのは、過去の常識が一切通用しないからです。…で、この、ここしばらくはその週にハードの出荷が何台あった…ということが、この2つの脳トレソフトの販売数を左右しております。

このソフトは…もう一つ、このソフトはTouch!Generationsではないんですが、「2つの脳トレソフトを超えて売れているソフト」があります。それが、『おいでよ どうぶつの森』というソフトです。これは『NINTENDO64』や『ゲームキューブ』で発売されて、シリーズ3作でも60万本強が販売の最高でした。そういうソフトが、どこにでも持ち運びが出来るというDSとの相性がよかったこと、また、遠くにいる友達との交流が楽しめる『NINTENDO Wi-Fi Connection』というものによる話題の広がりがあったことなどもあって、誰もが予想しない形で"大化け"いたしました。そして、累計300万本を超えて、まだ伸び続けています。どうぶつの森は現時点で、日本のDSで最も売れているソフトになりました。

そして、先月末に発売されたばかりの『Newスーパーマリオ(ブラザーズ)』ですが、発売2週間で125万本を超える販売となりました。発売から最短でミリオンセラーになりましたし、また、これでDSには10本目のミリオンセラーが登場したことになります。…ちなみに、既に流通さんからの受注が270万本を超えております。

任天堂の新しい提案が、このようにお客様に支持をしていただくことが出来て、また、このようにミリオンセラーが連発される状況が、つづいて、早くも10本が生まれ、ダブルミリオンが3本、もうすぐ、このNewスーパーマリオも仲間にはいるでしょうから、もうすぐ4本になるという状況ですが、このような状況でハードウェアも史上最速のペースでの普及記録を更新しております。

これは過去に日本のマーケットにおいて、各プラットホームが発売後にどのように普及したのかということを示すグラフです。プレイステーション2と、ゲームボーイアドバンスは発売3年後の普及台数がほぼ同じ水準となっていることがおわかりいただけると思います。これが、主流プラットホームでのこれまでの最高のペースでした。

このグラフにDSやPSPを含めると、このようになります。ご覧の通り、昨年の年末から、爆発的な伸びを見せているDSが発売18ヶ月で843万台。…これは、先々週末までのメディアクリエイトさんのデータで、本日(2006年6月7日)現在、850万台を超えているはずですが…ここまで伸びており、そして史上最速のペースをさらに更新しております。そして、DS Liteを発売したあとの普及ペースは、これまでの主要プラットホームの年末商戦時の伸びを超えた爆発力になっております。

我々はこのような過去の歴史にない需要を事前に予想することが出来なかったために、長期にわたる品不足で多くのお客様─そして、流通関係の皆様にご迷惑をおかけしております。私たちとしても、この点を大いに反省しなければならないと思っております。

(ニンテンドーDSのユーザ層について)
つぎに、これは私たちが独自に調べた「DS購入者の方々が、購入時点でどのようにゲームに関与していたか」ということを調べた結果です。「アクティブユーザー」というのは、ここ1年間の間に、ゲーム機を遊んでいたという人たちです。その人達がだいたい8割を占めるのですが、「スリープユーザー」すなわち、「かつてはゲームを遊んでいたが、ここ1年はゲームを遊んでいなかった」という方が1割以上、そして、いままでまったく遊んでおられなかった方々(ノンユーザー)が6%、購入された方ご本人でさえ、購入時にはゲームを日常的に遊ぶ習慣がなかった方が、購入に動いていただいているということが分かっております。

これは私たちのゲーム人口拡大の取り組みの成果が現れているのではないかというふうに思っております。

さらに、Liteはまだデータ数が少ないので、これから少し変動があるかもしれませんが、スリープユーザーやノンユーザーの割合がさらに…大幅に高まっている傾向がございます。(※この時のスライドでは、DS Lite購入層の28%がスリープユーザー、17%がノンユーザーを占めている)

これを年齢構成別に見ますと─これは男性と女性のスリープユーザーをそれぞれ表しておりますが─とくに女性のスリープユーザーが、全年齢に渡って高く分布していることが分かります。65歳以上の方でスリープユーザーがゼロ(%)になっていますが、これは65歳以上の方で今までゲームを遊んでおられなかった方が多かったということなんでしょうね。ちなみにノンユーザーの方を、この上に重ねてみますと、このように年齢が上がるに従って、非常に割合が高くなります。言い換えれば、今までまったくゲームに縁のなかった方が…ゲームを始めてとおっしゃる方が、DSの遊びに参加していただいていると、そういうことではないかと思っております。

ちなみに、先日CESAが発表したですね、「2006年CESA一般生活者調査」というもので、「2005年にゲーム機で継続的に遊んだ人口が、約400万人増えた」と報告されておりますが、えー、これも2005年の調査ですから、現時点で測っていただくと、またさらにゲーム人口が増えているのではないかというふうに感じております。

まあ、このような取り組みと共に、日本のゲーム市場における任天堂のソフトシェアというのも大きく伸びました。これは先ほどと同じく、2005年の1月から5月と、2006年の1月から5月の比較です。えー、任天堂は「毎年年末商戦、そして夏休み商戦に強い」といわれておりますので、1月から5月というのは任天堂にとってはどちらかというとソフトシェアが伸びにくい時期でございます。

しかし、この1年間で状況は大きく変わり、DSが爆発してからは任天堂の不利な時期にもかかわらず、任天堂1社の、えー、ソフトシェアが44%にまでになりました。


--任天堂経営方針説明会 テキスト起こし1 ここまで--

続いて、北米市場でのDS苦戦の理由、ある意味日本以上に妙なことになっているヨーロッパ市場、そして、今後のDS Liteの出荷予定について
任天堂経営方針説明会 テキスト起こし2に続く


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この記事の前後の記事
2006年06月09日:任天堂経営方針説明会 テキスト起こし2
2006年06月09日:任天堂経営方針説明会 岩田社長発言全文テキスト起こし

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コメント

『異常』『爆発的』『怪現象』という言い方からしても、DSの売れ方のすごさが分かりますね!!


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