任天堂は何をSWITCHするのか?
任天堂は、2017年3月に発売する新ゲームハード「Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)」を正式に発表した。(プレスリリース)
ニンテンドースイッチは液晶を搭載した持ち運び可能な本体、本体を挟み込むように配置された着脱可能な2つのコントローラ「ジョイコン」、本体充電機能とテレビとHDMI接続するための機能を持ったドックで構成される。
Wii U発売前の2012年5月に友人の同人誌に掲載するためのインタビューで「Wii Uの次のハードはどうなるのか」と問われて、「任天堂が携帯ゲーム機と据え置きゲーム機の2ラインを維持し続けるのは困難になって、どちらにも使える一体化したハードが出るのではないか」と答えた。(こちらに全文掲載されています)
4年前以上前にニンテンドースイッチの登場を予見していたことを自慢したいのではなく、当時から同様の予想をしていた人は多く、携帯ゲーム機と据え置きゲーム機が一つになることは、ある意味既定路線ではないかと考えている。
自分の予想としては、ドック側にもGPUを積むタイプだったが、実際はおそらくバッテリ稼働とAC電源稼働で性能が変わるような実装だろう。分離するコントローラに関しては全くの想定外だった。
今回初公開されたPVでは、持ち運びできる据え置きゲーム機というコンセプト中心であり、まだまだ隠している要素が多数あるだろうから、予想の答え合わせはもう少し情報が出てからでいいだろう。
それよりも、任天堂はこのPVで何を見せたかったのかを考えてみたい。
ターゲットのSWITCH
20-30代ぐらいの一人暮らしの男性が暗いリビングで「ゼルダの伝説 ブレス・オブ・ザ・ワイルド」をプレイしている。よくあるゲーマーの日常という感じだが、任天堂の新ハード発表でこの場面が出るのは意外だ。
任天堂は新しい遊び方を提案するときに、明るい部屋で家族が集って笑顔でプレイするイメージを伝えることが多い。
その後も、飛行機の中でSkyrimをプレイする男性、車の中でマリオカートの対戦をする男性(酔うぞ)、バスケットコートで4人対戦する男性、ホームパーティ会場で新作マリオをプレイする女性が登場する。
徹底して、20-30代を登場させている。子供たちも、家族もいない。
極めつけはラストのSplatoon新作だ。まさかのeスポーツ試合会場である。ゲーマーしかいないといっても過言ではない空間だ。
完全にターゲットをゲーマーに寄せてきている。
長い間、発表会や、ニンテンドーダイレクトや、株主総会で語られ続けているので改めて言う必要もないだろうが、任天堂は子供たちを非常に大切にしている。ニンテンドースイッチで子供たちを除け者にしようという考えはまったく持っていないだろう。
このPVに任天堂は、誰よりも早く、新しいゲーム機の情報を得ようと、ネットに張り付いている人たちに「我々は、子供たちだけではなくゲームが大好きな君たちのことも大切に思っているんだよ」というメッセージが込めたのではないだろうか。
ポケモンGOの初PVでも、ほとんど子供が登場していない。
これも、幼いころポケモンを愛していたかつての少年少女たちに贈ったメッセージだったのだと思う。「我々は、君たちが帰ってくるのをずっと待っていたよ」と。…結果として、想像以上にポケモンファンもそうでない人も飛びついて社会問題になったわけだが。
任天堂がターゲットを意図的に絞るとは思えない。ニンテンドースイッチは、すべての世代に向けたゲーム機だ。子供たちへのメッセージは、後ほど具体的なソフトラインナップが発表できる段階になって改めて届けるつもりだろう。そうでないと、今年のクリスマスにねだられてしまって、全世界のサンタさんたちが困ってしまう。より詳しい情報が出てくるのは年明け以降になるのだろうか。
ゲーマー向けにも力を注ぐというのは、Wii U発表時にも明言されていたが、今回はより強力にそのメッセージを発信してきた。
任天堂は、ターゲットをSWITCHした。
ゲーム体験のSWITCH
まだ、詳細なスペックが発表されていない以上、予想でしかないのだがニンテンドースイッチは、互換性を大幅に犠牲にしている。
独自のインタフェイスを活かしたゲーム体験ではなく、標準的な操作方法でゲームを楽しんでほしいという意図を感じる。
新機軸のハードであり、後継機ではないと主張しているが、ニンテンドースイッチは実質的にはWii Uとニンテンドー3DSの後を継ぐハードである。開発コストが増大化しているのに、携帯ゲームと据え置きゲームの他に新しいラインを増やすなんて馬鹿な話があるわけがない。さらに言えば、後継機なのに後継機だと言わないのは、互換性がほとんど残されてないことを示唆している。
Wii Uゲームパッドの液晶の上に搭載されていたセンサーバーはニンテンドースイッチには搭載されていないようにみえる。つまり、Wiiリモコンには対応しない。そもそも、屋外でWiiリモコンを使うのは無理があるだろう。
また、テレビにゲーム画面を映し出すためにドックに格納すると本体の液晶は見えなくなる。2画面表示も廃止したと考えるべきだろう。
そもそも光学ドライブも、3DS用のゲームカードスロットも用意されていないのだから物理的に刺さらない。ダウンロード版で対応する可能性はゼロではないが、少なくとも3D表示は無理だろうし、そもそもニンテンドースイッチ本体の液晶がタッチパネルかどうかもわからない。
互換性維持のために、Wii Uゲームパッドを単体販売して、ニンテンドースイッチと接続できる可能性はゼロではない。だが、任天堂としては大ヒットしたWiiやニンテンドーDSのときと違って、Wii Uにしても3DSにしても切り捨ててもかまわないと考えているのではないだろうか。
WiiとニンテンドーDSで入力インタフェイスの革新という舵を切った。10数年の時を経て任天堂は逆方向にSWITCHした。
穿った見方をすれば、タッチパネル操作はスマートホンに勝てるわけがないし、2画面や体を動かす操作体系は、全視界を覆って全身で操作するVRに勝てるわけがない。任天堂はインタフェイスの革新という勝負の舞台から降りたのだ。
任天堂が向かう先は、ゲームプレイの快適さの追求だろうか。
ゲーム機で遊ばなくなる理由でよく聞くのが、「起動するのが面倒くさい」だ。
ニンテンドースイッチは、据え置き型ゲーム機の手軽さとしては、今まで存在してきたどのゲーム機よりも上だろう。携帯ゲーム機並みの手軽さで、テレビにも簡単につながる。屋外に持ち出して、あれほどかんたんに二人プレイができるゲーム機は、今まで見たことがない。
ドックが充電器を兼ねているので、いつの間にかバッテリを切らしているという心配もない。
特定のソフト目的でハードを買って、それ以外のソフトに手を出さずにいつの間にか起動しなくなるという話もよく聞く。何かのきっかけで、ニンテンドースイッチを買ってもらえれば、その快適さに馴染み、ずっと遊び続けられる。そんなコンセプトなのではないだろうか。
コントローラがSWITCH?
新作マリオをプレイする女性の家に、amiiboがたくさん並んでいる。
任天堂キャラとはいえ、無関係なものをこれ見よがしに置く必要はない。きっと、NFCリーダー機能も搭載され、amiiboも読み込めるのだろう。
NFCリーダーはニンテンドースイッチ本体に搭載されているのだろうか?
もしかすると、ジョイコンのかわりに別売りのNFCリーダーを本体に取り付けられるのではないか?と予想している。
本体に内蔵しても別にいいのだけど、せっかく合体機能ついているんだから、いろんなもの取り付けたいじゃない。
ガンコンとか、釣りコンとか、ネジコンとか、トラックボールとか。いっそヘッドセットに本体を取り付けてVRマシンにしちゃうとか。
本体の左右のどちらかに取り付ける程度の単純な入力インタフェイスなら1000円程度でソフトにバンドルしても良さそうでしょ。
さっきは入力インタフェイスでの革新を諦めてシンプルにしたと書いたが、あのPVはフェイクで、ものすごい量のアタッチメントを用意していたらワクワクするじゃない。
どっちかというとその方向にSWITCHしてほしいなあ。
新しい任天堂が見せてくれる未来を、首を長くして待っている。
2016年11月28日:FF15を楽しむために走る
2016年10月20日:ローストホースはおいしい。
最新記事
2024年07月10日:任天堂とアクセシビリティ
2024年06月28日:任天堂株主総会レポート2024
2024年06月16日:10年ぶりにテレビ周りを刷新した話
2024年05月01日:次世代Switchの現実味のある予測(2024年5月現在)
2024年02月20日:3万アカウントの凍結を見届けた 趣味としてのTwitter(X)スパム報告
2023年06月25日:任天堂株主総会レポート2023
2023年06月21日:レビュー:ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム
2022年06月30日:任天堂株主総会レポート2022
2022年03月15日:Hue Sync Boxで映像とゲームを画面の外から強化する
2021年03月11日:シンエヴァを鑑賞した人たちを鑑賞した[ややネタバレあり]