2005年09月26日

レビュー:悪魔城ドラキュラ 蒼月の十字架


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悪魔城ドラキュラ 蒼月の十字架
発売:コナミ
発売日:2005年08月25日
価格:5,229円(税込み)
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今作「悪魔城ドラキュラ 蒼月の十字架」は2035年の日本を舞台とした作品「キャッスルヴァニア 暁の円舞曲(あかつきのメヌエット)」(ゲームボーイアドバンス)の1年後を描いた続編だ。主人公も同じ、ストーリ上も完全につながりのある作品でタイトルが異なるという奇妙な状態になっているが、これはマーケティング的な要因によるものだ。もともと、国内版は悪魔城ドラキュラとして発売、海外移植版はCastlevaniaとして作っていた。それを暁の円舞曲の一つ前の作品、「キャッスルヴァニア 白夜の協奏曲(びゃくやのコンチェルト)」(ゲームボーイアドバンス)から全世界的に名称を統一すると意気込んで国内版もキャッスルヴァニアにしたのはいいものの、プレイステーション2版の「キャッスルヴァニア」を出したあとで何らかの事情で元の名前に戻す英断をしたようだ。まあ、普通に考えれば「思ったより売れなかった」ということなのだろうが。

また、暁の円舞曲までの嘆美なキャラクタデザインが蒼月の十字架になると急にアニメ調になってしまっていて、タイトルも見た目も違うというとんでもないことになっているが、それもきっと消費者がうかがい知れぬ事情があるのだろう。年齢層の問題もあるし、PS2版の悪魔城ドラキュラと別物だと主張したいのかもしれない。こういった大人の事情で前作との接点があらゆる意味でなくなってしまっている上に供給ハードまで違うため、前作の知識がなくても楽しめるよう多方面で配慮している。というわけで、今作だけプレイしてもまったく問題はない。ありがたいことだ。
というわけで、蒼月の十字架は2001年の「悪魔城年代記 悪魔城ドラキュラ」(プレイステーション)以来、久しぶりの悪魔城ドラキュラだ。

悪魔城ドラキュラは、20年近くに渡って20作品以上を発売してきたコナミの看板タイトルの一つで、「悪魔城ドラキュラ黙示録」(NINTENDO64)以降は3D作品も作っているが、基本的には硬派な2Dアクションが魅力の作品群である。タッチペンやマイク、無線通信機能など独特のハード機能を前面に押し出したニンテンドーDSで、悪魔城ドラキュラを一体どう料理するのか?と正直言うと、発表当時は不安に感じていた。しかし、これは杞憂だったようだ。DSのもう一つの特徴である2画面をとことん活用して、その他の機能は無視、もしくはスパイス程度にしか使用しないことで悪魔城ドラキュラの硬派な2DアクションをDSで見事に表現してくれている。ただ、タッチペンを使った仕掛けもある。これは完全に蛇足だろう。

最近の悪魔城ドラキュラシリーズでは探索と収集が定番となっており、ステータス画面やマップをかなり頻繁に見るゲームになっている。いくら画面上のインタフェイスを洗練させたとしても、メイン画面上にあれこれとステータス表示を付ければごちゃごちゃして見づらくなるし、マップ表示で画面が切り替わってしまったらゲームの流れがそこで断ち切られてしまう。そこで2画面が非常に役に立つ。このゲームは下画面がメインとなっており、主人公や敵キャラはそこに表示される。上画面にはマップが表示されており、現在位置やすでに到達した部屋、ワープ部屋、セーブ部屋、開けていない扉などが色分けされた状態で表示される。さらにSELECTボタンを推すことによって上画面がステータス画面に早変わりする。この切り替えはゲームの進行とはまったく無関係に行えるので、敵を攻撃している間やダメージを食らった瞬間でもマップ←→ステータスの切り替えが瞬時に行える。

たとえば体力が限界に近づき、回復が行えるセーブ部屋を探すとき、従来のゲームであればどうなるか?頻繁にメニューを呼び出してマップ上の位置を確認するしかない。そこでプレイヤにゆったりと安心して考える時間を与えてしまっている。緊張感がそこで失われてしまう可能性もある。常にマップが表示されていればゲームを一切止めずにセーブ部屋まで突き進むだろう。意図的にポーズしたりメニューを開いたりしない限り、立ち止まることなく目的地に向かうことが出来る。切れそうで切れないぐらいにピンピンに張りつめた糸が、ふっとゆるめられるような感覚が心地よい。

他の2Dアクションでも良くあることだが、今作では収集が重要になっている。敵を倒すとランダムで「ソウル」を入手することが出来る。ソウルには使い方が色々あるが主にサブウェポンとして機能する。ソウルを装備することで斜め上方に斧を投げたり、コウモリを召還して敵を襲わせたり、炎を吐いたり、多様な攻撃が可能となる。敵キャラは100種類以上におよび、攻撃するソウルとの相性も存在する。ソウル以外にも武器と防具、アクセサリーを装備することが可能で慎重にゲームを進めるのであれば、これらの装備を頻繁に変える必要がある。これはどうしてもメニュー画面を開く必要があり少し残念なところであはある。ただ、ゲーム中盤でドッペルンゲンガーというソウルを手に入れると装備品の組み合わせをA/Bの2組つくっておくことで、いつでもA装備とB装備を切り替えることが出来る。うまい具合に装備品をセットしておけばほとんどメニューを開かずにガンガン先に進めることが出来る。このバランス取りは素晴らしい。

ニンテンドーDSは3Dグラフィックを描くこともできるが、2Dのドット絵を表現するのも得意だ。今作のグラフィックは非常に素晴らしい。主人公が実に滑らかに動く。画面を注視すると一つ一つのモーションがものすごく細かく分割されて膨大な数のドット絵で描かれていることが分かる。敵キャラも主人公ほどではないが良く動く。そして何より背景がものすごく緻密で美しい。ただの地形の一部のように置かれている車の天井に主人公が乗ると、車が傾いて積もった雪が落ちる、なんて細かい描写もある。背景は基本的には多重スクロールのドット絵で、一部屋外のステージなどでは3Dポリゴンを背景にしているが違和感はない。

そして、このゲームの真髄はクリアした後にある。ネタバレになるので詳細は避けるが、クリア後にはいくつかのモードが追加される。そのうち一つはメインモードからあらゆる要素を排除した非常にシンプルなシステムでゲームをクリアしていくモードになっている。
・ソウルシステムなし
・武器防具類なし
・アイテムなし
・お金/ショップなし
・セーブ部屋以外の中断セーブなし
・一部を除いて台詞なし
・上画面はマップ画面で固定(ステータス画面なし)
メニュー画面なし
メニュー画面がないうえに中断セーブもないので、スタートボタンを押すと画面上に「PAUSE」と表示されて進行が止まるだけだ。なんと潔いことか!その代わりサブウェポンを複数装備しているので敵に応じて攻撃方法を変えることは可能だ。ただしメニュー画面すらないのでサブウェポンの切り替えはボタンを押して順番に切り替わるだけになっている。また、アイテムがない上に、敵を倒しても得られるのは経験値と魔力回復だけなので、セーブ部屋で全回復できるのと一部の例外を除いて体力の回復はできない。

先ほど2画面を活用することで立ち止まることなくゲームを楽しめると書いたが、これはそれどころではない。完全ノンストップの超硬派アクションだ。さらに、「この地形はこのボスを倒してこのソウルを手に入れないと進めません」といったストーリ上のお約束を無視して好きな順番で攻略できる。低いレベルで強い敵とぶち当たって右往左往したり、ガンガン先に進むとセーブ部屋まで後一歩というところでゲームオーバーになってしまうなんてことがしょっちゅうだ。メインモードで一度クリアしたマップなのに非常に新鮮に楽しめる。

ものすごく面白い。はっきり言って本編より面白い。煩わしいアイテム収集や装備の変更、フラグ立てから解放され、目的はボスを倒すことのみ!これだよ、これこそが昔のアクションゲームなんだよとノスタルジィな気分に浸れること請け合いである。


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コメント

なんか前作からの変更点を挙げてる部分にやたら作為的なトゲトゲしさを感じて、思わず噴いてしまいました。
もちろんネタとしてか、ファン故の苦言…な愛情なんでしょうけど。おもろい。

以前はバンダイほどでないにしろコナミに対するイメージは『地雷源』だったんですが、このソフトも同社のサバイバルキッズも歯応えがあって印象をあらたにしました。

とかいってても、バンダイブランドで今度出るガシャポンは当たりぽいんだけど。
まぁ、良作続きなのは消費者にとっては嬉しいコトです。

いやあ
せっかく面白いゲームを出してくれたのに
色々と不遇だなあって思ったんですよ
なんかもったいないというか報われないなあって。

サバイバルキッズも同時購入して現在進行形で
楽しんでおりますのでいずれレビュー書きます

タイトルを悪魔城ドラキュラに戻したのは日本ではキャッスルバニアという名称が根付かなかったから、と
プロデューサーのIGA氏が公式攻略本の中で語っていました。
キャラデザ変更についてはDSは子供向け機種なので低年齢層にも遊んで貰いたいという事だそうです。

ユリウスモードクリア後、前作プレイ始めましたが、蒼月って
ものすごい描画が進化してるんだなって感じました。
暁の時点で当時感動していたモノですが、次世代機って凄いんだナーと改めて思いました。
次回作も有るようですので楽しみですね。


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