2018年06月29日

任天堂株主総会レポート2018


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毎年6月下旬恒例の株主総会レポートをお届けする。

私が参加するようになって、6回目の株主総会である。
この6回の議長は、岩田、竹田(代打)、岩田、君島、君島、君島となっていて、君島社長としての株主総会は今回がラスト。次回からは古川新社長による株主総会となる。

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6回目ともなると、こういうアイキャッチ用の写真も変化がなくなり、去年の記事とほぼ同じ感じになってしまった。

毎年梅雨の季節で、今回も傘を用意していたが雨はふらず、この日の京都はひたすら蒸し暑かった。
例年、ニンテンドー3DSを持ってきて、すれちがい通信を楽しむ株主が多かったのだが、今年はほとんど見られず、自分も3DSを持ってくるのを忘れていた。

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株価動向としては、品薄になるほどのSwitchの好調っぷりを背景に5万円近い株価をつけていたものの、直近のE3でのサプライズなしという部分で急激に値を下げ、昨年同時期と同じ水準に戻ってきている状態。

事業報告

毎年のお約束事項だが、現地での不正確なメモを元に記事を書いており、聞き間違いや誤解が含まれる可能性があるため、正確な情報を知りたい方は後日任天堂のサイトに議事録が掲載されるのを待つことを強くお勧めする(去年の文章コピペ)

事業報告については、総会前に株主に送られる招集通知にほぼ同一の内容の文章が掲載されている。実際の総会では、あらかじめ用意された動画で、ソフトのパッケージ写真等とともにナレーションで読み上げられた。

要点としては以下のような感じ。
・Switchの販売は好調で1505万台が売れた。
・マリオオデッセイを筆頭に他社ソフトを含めミリオンが12タイトル、全ソフト合計で6351万本売れた。
・ニンテンドー3DSも継続して売れていて640万台上乗せ
・ソフトは751万本売れたポケモンウルトラサン/ムーンが好調で、合計3564万本売れた
・デジタル売上高(ダウンロード版、追加コンテンツ)は、608億円で昨年比+87%
・ニンテンドークラシックミニ・スーパーファミコンは528万台
・amiiboはフィギュア1030万体、カード580万枚
・スマートデバイスアプリ+IP関連収入は393億円で昨年比+62%
・売上高は1兆556億円で昨年比+115.8%
・設備投資に130億5800万円投入
・9月からSwitch Onlineを有料化
・Switchは有力タイトルを次々投入
・3DSは定番タイトルの販売拡大を狙う

昨年は、追加コンテンツのある有力タイトルがなくてダウンロード販売が大きく減少という話だったが、今年は大幅に売上を伸ばしている。
任天堂はなぜかスマホアプリの売上とキャラグッズのライセンス等のIP関連収入をまとめた数字を出してくるので、このあたりの動向が分かりづらい。別々に開示してほしいものだ。

以下、質疑応答タイムの主なやり取り。
すべての質問や細かい内容は後日任天堂のサイトでご確認ください。

株価の下落

株主「株価が急激に下がっているが、なにか案はないのか」

君島「株価は、市場の需給や期待感で決まっていく。我々がどういう取り組みをしているかということについては、先日E3が開催されたのでその映像を見てほしい」

(E3会場のビデオが流れる。Splatoon2やスマブラの大会、展示の様子が映っている)

高橋伸也「入場者数が非常に多かった。任天堂のブースも好評でスマブラの試遊台は予約制にした。他社ソフトではあるが、フォートナイトは他のプラットフォームでも出ているが、Switchでも出るということでお客様に喜んでいただけた。E3とは別に開催したSplatoon2とスマブラの大会で熱いユーザに支えられていることを実感した」

君島「E3前後でSwitchの勢いが変わってきている。最近発売したマリオテニスエースも支持されている。こういったことが事業の評価につながって、ひいては企業価値の向上につながっていけばと思っている」

毎回、E3直後に株主総会が行われるのでこのようにビデオを用意して、質疑応答時に流すのだが、この質問に対してE3の映像を出すのはおかしいのでは。E3がサプライズなしという理由で市場が落胆して大幅な下落をしているわけで、E3がだめだったから、何か別のところで株価を戻す努力をしなきゃいけないんじゃないの…と株主としては思うのだが、基本的に任天堂は株式市場から資金調達を必要とする企業ではなく、株価に興味がなさそうではある。東証が求める基準より単価が相当高いのに何度指摘されても株式分割しないし。

2019年の目標の進捗

株主「2019年3月期は、Switch本体2000万台・ソフト1億本野目標を掲げているが、まもなく第1四半期が終わるこのタイミングでの状況を知りたい。また、株価の低下は、E3の期待はずれ、Nintendo Laboの不振が指摘されている」

君島「目標達成に向けて力を入れている。売れるタイトルが後半に偏っているので、単純に第1四半期だけを見ると成績が悪いように見えるかもしれないが、予定通り。Laboに関しては"買う理由"が必要となる。他のソフトと異なり、すぐに買うものではなく、夏休み・クリスマスなどの理由が必要となる。普通のソフトは発売直後に売れて、それから下がっていく傾向があるが、ラボは時間がかかると思っている。E3については、映像で見てもらったように、現場での関心が高い。その後にSwitchの売れ方も変わっている」

Laboを売ることに苦心しているようだ。長い間売れ続けるタイトルだとは思うが、パッケージが大きいので店舗が在庫を持ちたくないと思うし、うまくやっていかないと、欲しいと思ったタイミングで手に入れられないことになりかねない。
E3が株価的に見ると失敗だったことは認めたくない様子。そりゃ会場に来る人達は盛り上がるだろうけど、世界的に見れば映像だけでE3を見る人たちのほうが圧倒的に多数だ。
これは、どうも今回のE3で発売日が決まっていない数年先のタイトルを露出することがNGになっているようで、今までのようにソフトラインナップを大量に出すプレゼンができなかった部分が大きいように思える。

半導体部品の調達

株主「世界的に半導体需要が増えていて、価格が上がり調達が難しくなっている。Switchへの影響は?」

進士仁一「ここ数年たしかに厳しい状況ではあるが、長い時間をかけてメーカーさんと交渉は行っていて、協力してもらっている。しっかり対話を続けていて、2000万台の目標達成は可能。不安に感じなくてもいいと思う」

これは割と心配な部分なのだが、進士氏の自信のある回答で安心できた。
2000万台の製造は可能。あとは、それを売るだけだ。

ユニバーサルパークアンドリゾートとの協業

株主「2年後のUSJでのアトラクションができることで、アトラクションで満足してソフトの売れ行きが下がるようなことはないか」

宮本「USJで発表したので誤解されがちだが、日本だけではなく、ハリウッドやオーランドでも任天堂のアトラクションを展開していく予定。マリオで遊んで育ったお父さんお母さんが子どもたちと一緒に遊んでいるという家庭が世界中にいる。そういう家族がパークに行って任天堂の世界を体験して相乗効果が出てくる」

2世代に渡って支持される長期コンテンツを保有している任天堂だからこそ、家族連れで体験できるテーマーパークとの相乗効果は大きいのではないかという回答。

インディーゲーム

株主「日本は少子高齢化でゲーム人口は減少していくから、世界戦略が必要。インディーゲームへの取り組みについて聞きたい」

君島「任天堂は自社でソフトを作り、ソフト・ハード一体化ビジネスをやっていくわけだが、Switchで遊べるゲームを作る開発者が増えることも必要。インディーゲームが作りやすいように手続きを簡素化するなどの取り組みをしている」

高橋「Switchの開発時にインディでの開発がしやすい環境を作り、それが実ってインディーゲームが多く作られた。特に欧米で多く作られている」

田中晋「以前からインディーへの取り組みはしており、Wii Uはハード自体があまり売れなくて目立たなかったが、Switchでは多数参入してもらっている。開発環境についてはスマートフォンでも使われているUnityというミドルウェアに対応したり、京都で開催されているビットサミットで働きかけたりしている。Switchで1000タイトル以上、毎週20タイトル以上出ている。世界販売数がミリオンに達しているタイトルもある」

インディーゲームの専用紹介ページもできていて、しっかり取り組んでいることがよく分かる。
ゲーマーも年をとると、クリアまで100時間かかるようなタイトルを複数プレイするのがしんどくなってくるので、1000-2000円程度で気軽に買えて数時間遊んで満足するようなゲームも魅力的に感じられる。OVERCOOKEDとか4人でわいわい騒ぎながら遊ぶと超楽しい。

株主向け体験台

株主「株主総会では毎回E3で試遊台の映像が流れるが、同じように総会後に体験会をやってほしい」

君島「ご意見として承ります」

今回の質疑応答で最も短い回答。バッサリ。
まあ、そりゃやってほしいに決まってるけど、会場のキャパ的に無理でしょ。

スマホのガチャ課金

株主「買い切りモデルのスーパーマリオランよりも、ガチャ課金のファイアーエムブレムヒーローズのほうが売上が大きいと聞いた。今後ガチャ課金で収益を上げていくのか」

君島「ゲームタイトルごとに個別に課金方式を決めている。ファイアーエムブレムは、20-30代の支持が多く、13歳以上対象として課金額を抑える工夫もしている。お客様の支持があってビジネスとして成り立つので、どのゲームでも同じやり方をするわけではない。マリオは、2億ダウンロードされた。スマホアプリで遊んでマリオを知ってもらい、コンシューマビジネスにも相乗効果が出ることを期待している」

熱心なファンが居るから、いつも新ビジネスの実験場のようにされているファイアーエムブレム…。
あれだけガチャ課金ゲームに否定的だったのに、じわじわと外堀を埋めていっているような気がしないでもない。

サウンドトラックの配信

株主「iTunesで星のカービィロボボプラネットのサントラ配信が行われた。過去のサントラも配信されないのか?入手困難で、プレミアが付いているCDも多い。去年質問したアニメ版カービィの映像ソフト化もお待ちしています」

高橋「積極活用は考えているが、様々な事情で出せないものもある。」

宮本「キャラクタIPについては、いろいろ考えていて、サウンドも大事なコンテンツ。ミニオンズなどを作っているIllumination Entertainmentのクリス・メレランドリさんというプロデューサーとユニバーサルスタジオ絡みで親しくなって、現在スーパーマリオのアニメ化を進めている。」

去年、アニメカービィの映像ソフト化の質問をした株主。2年連続の指名おめでとうございます。
個人的な話だが、この方とは妙な縁があって佐賀県とSplatoonのコラボが開催された呼子に行った際に、ご夫婦で同じ船に乗っていて、その後抽選の皿が当選した縁で奥様の方とその後交流がある。熱心なカービィファンである奥様からの司令で質問しにきているようだ。アニメカービィの映像ソフト化、実現するといいですね。

マリカー訴訟

株主「任天堂のブランディング戦略について。マリオカートを模したカートを走らせている会社との裁判で負けた。なぜなのか」

君島「係争中なので詳細は控える。地裁判決はまだ出ておらず、マリカーの商標登録について当社が異議申し立てしたが特許庁が却下して商標を維持すると決定したことを、誤解されている記事があるのでは。交通事故も起きているので、裁判は全力を尽くす。」

裁判といえば、コロプラとの白猫裁判もあるのだが、そちらに関する質問は出なかった。
出たところで「係争中なのでコメントは控える」で終わりの話だけど。

社長交代のごあいさつ

株主総会後の、取締役会で君島社長の退任、古川俊太郎氏の新社長就任が決まるとのこと。
ふたりとも割と早口で、ちゃんとメモが取れなかったのでテキスト化は省く。

君島氏は、急逝を受けての社長就任だったが多くの人たちからの支援のものとでSwitchを発売し、軌道に乗せたいいタイミングで引き継ぎができたと語っていた。

古川氏は、山内氏の「失意冷然、得意泰然」の言葉を引用し生活必需品ではなく娯楽を作っているのだから面白いと思われなければ忘れ去られるので一喜一憂しないと語る。時代の流れに合わせて変えるべきところは変える、独創性と柔軟性を取り入れながら取り組む、"人々を笑顔にする"会社を目指すと、岩田氏がよく語っていた内容を踏まえた抱負を語っていた。

総括

去年以上に、ソフトウェア部門の回答は高橋氏が請け負い、宮本氏はライセンスビジネスにおける海外とのやり取りの部分でのみ回答していた。
おそらく、任天堂の社内において宮本氏はソフトウェア開発への関与をほとんど行わなくなり、海外との大型のライセンス取引における顔役として世界中を飛び回る仕事をしているのではないだろうか。顔を知られていない任天堂の海外担当者と話をするよりも、あの宮本茂が会いに来てくれたというだけで、スムーズに契約できるようになるのではないだろうか。

新社長である古川氏の様子をもっと見たかったのだが、最後のあいさつ以外では一言も発しなかった。
まあ、社長就任前の君島氏も表に出るタイプではなかったのでそんなものか。

おみやげ

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タオル、お茶、ポケモンセンターで買えるお菓子。毎年同じパターンだ。
配布されているCSRレポートの冊子はpdf版がWebで読める

余談

週の頭から精神的に疲弊する出来事があり(一つ前の記事参照)、疲労が溜まっている状態で寝不足のまま始発の新幹線に乗り、よせばいいのに総会後にちょっと京都観光しようと思って蒸し暑い中歩いたらどんどん体力を消耗し、途中で観光を諦めて京都駅でダラダラして、帰りの新幹線で少し寝たものの、小倉駅で乗ってた新幹線の車両点検で長時間待たされ、結局新幹線が動かず別の便に乗り換えて博多についたものの、点検に入った車両に株主総会でもらったお土産を置き忘れていることに気づき、少したって動き出した新幹線が博多駅に戻ってくるのを待ってお土産を回収し、疲労困憊の状態でようやく帰宅してよーし記事を書くぞ、でも眠いからちょっと仮眠してから、と思ったらガッツリ3度寝ぐらいしてしまい、本来当日のうちに上げるはずだった記事の掲載が遅れたことをお詫び申し上げます。

過去記事

任天堂株主総会レポート2017 | N-Styles
任天堂株主総会レポート2016 | N-Styles
任天堂株主総会レポート2015 | N-Styles
任天堂株主総会レポート2014 | N-Styles
任天堂株主総会レポート2013 | N-Styles


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