2010年10月22日
衝撃の事実:初期のスーパーマリオは上ボタンでジャンプし、Aボタンでライフルを撃った
スーパーマリオブラザーズ25周年記念のWii用ソフト「スーパーマリオコレクション スペシャルパック」が発売された。スーパーファミコンで発売されたスーパーマリオコレクションと「スーパーマリオヒストリー」のブックレットとサントラCDがセットになった商品だ。
ゲーム自体はスーパーファミコン版のスーパーマリオコレクションと全く同一で、Wiiリモコン横持ちでプレイできるという要素はあるが、「バーチャルコンソールで売ればいいのに」と思える内容。サントラCDも10作品のメインテーマが各1曲ずつ収録され、さらに効果音が10個つくという寂しい内容。ちょっと残念だが、2500円という金額を考えれば十分すぎる感じだ。
このセットの中で一番うれしかったのがブックレット。
シリーズ各作品に対して、宮本茂氏、手塚卓志氏、近藤浩治氏が40文字程度でコメントを入れている程度で、やはり少々残念な内容ではあるのだが、宮本氏が作成し縦書きの企画書が数ページ分掲載されている。これは貴重だ。
「クリエイティブ課 係長 宮本」の(昭和)60年2月20日付けの捺印があるこの企画書は、「スーパーマリオ実験仕様」と書かれている。
パイポやパタパタで一部の文字を隠す微妙な嫌がらせが行われているが、内容は読める。
本ゲームはドンキーコング以来連作してきた"ジュニア"."マリオブラザーズ"のアスレチックとしての部分を利用し大型■マリオキャラクターによって再構成するゲームで■■
こ■■キャラクターのサイズを大きくするためBG画面■スクロールし、リフトなどの他に数種の仕掛けを追加するものとする。
文中の"ジュニア"は「ドンキーコングJr.」の事だと思われる。ドンキーコングJr.は、島やリフトをジャンプで渡り歩いたり、ツタを上下するなど、確かにスーパーマリオに通じるものがある。
マリオは左から右へ走る。スク■■■スタート位置に来るとマリオは止まり、その時のスピード■スクロールが開始される
減速するとスクロールが遅くなり、停止と同時にマリオが左へ走りだす。
スクロールは右方向へは進まず、マリオは画面の左端までしか戻れない
実験仕様の段階で、スクロールが一方向で、マリオが左に戻れないことが明示されている。
この仕様書は昭和60年2月20日に書かれたものだが、スーパーマリオブラザーズの発売は昭和60年9月13日、わずか7ヶ月後のことである。1本のソフト発売まで何年もかかる現在では考えられないが、当時は数カ月程度でゲームソフトを開発することはふつうの事だった。
このページは発売されたスーパーマリオブラザーズと相違がないが、次ページの「操作方法」は、実際の製品と大きな違いがある。
<操作方法>
左ボタン:WALK-L
右ボタン:WALK-R
上ボタン:JUMP
下ボタン:未定(しゃがむ)
Bボタン:RUN(加速)(ロケット→噴射)
Aボタン:ATTCK(道具による)(・素手→キック ・ライフル ・ビーム銃)
何かおかしい、というよりも何もかもが違う。キック?ライフル?ビーム銃?いやいや、それよりジャンプが上ボタンだって?!
・十字ボタンの左右でマリオは2段階のスピードで歩く その時、Bボタンを押していると早く加速しながらより高速で走ることができる。・十字ボタンの上方でジャンプする。ジャンプする高さはボタンの入力されている時間と、その時の左右速度で決定する
・Bボタンは、マリオがロケットを手に入れた時は、空中での左右方向への加速に利用する
・Aボタンは、その時マリオが持っている道具を使う。
ライフルやビーム銃を持ったマリオが空中を左右に飛びまわる。そんなスーパーマリオもちょっと見てみたい気がするが、結局製品版では仕様変更となっている。
当時のファミコンソフトで、上ボタンがジャンプになっているものはあったが、マリオに慣れたあとでプレイすると非常に難しく感じた。もし、この仕様のまま発売されていたら、売れ行きはずいぶん変わっていたことだろう。
Aボタンをジャンプ専用に割り当てて、Bボタンをファイアを加速の共用にしたのは良い判断だったと思えるが、どの時点で誰が仕様を変更したのか、そのあたりのエピソードもいつか披露してくれないだろうか。