・ルイージマンション
・ウェーブレースブルーストーム
・スーパーモンキーボール
・ピクミン
ルイージマンション
発売元 | 任天堂 | 開発元 | 任天堂情報開発部 |
価格 | 6800円 | 使用メモリーカード容量 | 3ブロック |
発売日 | 2001年9月14日 | ジャンル | アクションアドベンチャー |
ルイージマンションはゲームキューブと同時発売のタイトルであり、その中でも看板となるタイトルとして発売された。任天堂の過去の据え置き型ハードにおける同時発売ソフトを思い返すとスーパーファミコンでは「スーパーマリオワールド」、NINTENDO64では「スーパーマリオ64」があった。それぞれ名作と言われる良質なソフトで、新ハードの性能の高さを見せつけるのと同時に、ハード立ち上げ時のソフト不足を1本でまかなえるだけのボリュームを備えていた。マリオに代って初期タイトルの看板を背負ったルイージは十分にその役目を果たせたのだろうか。
結論から言えば、同時発売タイトルとしてはルイージマンションは弱かったと言わざるをえない。まずボリュームを考えると少し物足りなく感じる。1回クリアするのに要するのは10時間強ほど。数十時間を必要とする大作ソフトと比較すると短いのは明らかだ。また、ゲーム内容を見ても開放感あふれる広い空間を走り飛び回ったマリオ64と比較して、狭苦しい洋館でほぼ1本道の謎を解いて回るシステムではインパクトがない。半透明処理を多用した綺麗なグラフィックも、それだけを見せるために前面に押し出してアピールしているようなものでもないため、はっきりと印象に残る物ではない。それはそれで控えめで良いのだが。
ハードを一緒に購入させる魅力を必要とする同時発売ソフトとしてのインパクトはないが、このソフト単体で評価すると決して悪いソフトではない。6800円の価値は十分にある。コントロールスティックでルイージ自身を操作し、Cスティックで所持する道具の方向を操作する。最初は結構難しいのだが、慣れてくると新感覚のアクションが心地よい。2軸スティックを用いるのでボタン操作はアナログのLRトリガーボタン主体となるが、ちゃんとアナログ仕様になっており、例えばRボタンを軽く押すとオバキュームの吸引力は小さく、Lボタンを一気に押し込むとエレメントが弾丸となって飛び出す。ただ、完全にアナログを生かし切ったかというとそうでもない。基本的にオバキュームは完全に押し込んで吸うのでトリガーのストロークが深い分、必要以上に指に力が入って感触が悪い。
内容はともかくとして、このゲームで最も特筆すべきなのはロード時間が皆無に等しいことではないだろうか。もちろんゲームキューブのハードの仕様に因る部分もあるのだろうが、特にこのソフトはロード時間が短い。リセットを押せばすぐにタイトル画面に戻るし、部屋から部屋に移動するときのドアを開ける仕草も軽々と飛ばせる。最初はメモリ内に全てのデータを読み込んでおり、それでロード時間を感じさせないのかと思ったが随時ディスクのシーク音聞こえるし、普通に廊下を歩いているときにディスクカバーを開けると、しばらくは普通に動くのだがある程度歩くと画面上にカバーを閉めるよう指示が出る。要するにプログラム的な部分で随時先読みさせる工夫をすることで極力アクセス時間を削る工夫しているのだが、このROMカセットと変わらない感覚は任天堂は光ディスクメディアでもいけると感じさせるには十分に思える。
99年のスペースワールド後のゲームボーイアドバンス発表の時だったか、ゲームの重厚長大化はダメだ、これからは軽薄短小路線だと山内社長が公言した。ゲームボーイアドバンスに関してそのように語ったのだが、このルイージマンションもまさに軽薄短小な新機軸のソフトなのではないだろうか。軽薄短小路線ではソフトがすぐに消費され次のソフトが売れる、開発費が抑えられるなどのメーカー側のメリットばかりが注目されるが、ユーザー側としても短い時間でより密度の高い満足が得られるし色んなソフトを楽しめるメリットがある。つまり、コスト/プレイ時間の比率は高くなるが、満足度/時間も高くなるのである。これによりゲームはより一層質の高いエンターテインメントとなり、長時間拘束されてクリアしたあとで「クソゲー」だと分かり時間と金を無駄にしたことに気が付いて落胆するというゲーム特有の悲劇も回避できる。
しかし、まだユーザーはこの新機軸には慣れていないため過剰な期待をされて「短すぎる」と文句を言われるかもしれない。それ故のルイージの起用だったのではないだろうか。任天堂のハード同時発売ソフトでマリオが主人公となればユーザーは否応なく期待をし、さぞかし超大作だろうと想像してしまう。ルイージが主人公ならそれを逃げ道に出来る。もちろん、関係者がインタビューで答えているように走り回ったりジャンプしない、洋館の暗いイメージはマリオとそぐわないと言うのも理由の1つだろう。マリオが主人公のゲームも当然発売されるがこちらは何とも明るいイメージの「マリオサンシャイン」愉快な対比だがルイージがあまりに可愛そうな気がしてならない。
オバキュームで紙幣を吸いまくるときの気持ちよさがこのゲームの全てかも知れない。
ウェーブレース ブルーストーム
発売元 | 任天堂 | 開発元 | NST |
価格 | 6800円 | 使用メモリーカード容量 | 12ブロック |
発売日 | 2001年9月14日 | ジャンル | レース |
このソフトはNINTENDO64で発売された「ウェーブレース64」の続編である。64版は情報開発部が開発したが、ブルーストームはNSTが開発を担当している。NSTは自らは開発部署を持たないNINTENDO OF AMERICAの敷地内にある開発会社でNINTENDO SOFTWARE TECHNOLOGYという。日本向けのソフトは作らず、もっぱら海外向けにソフトの移植を行うのが主な仕事である。例えば「パネルでポン」の64版「Pokemon Puzzle League」や「Ridge Racer64」などを開発してきた。ゲームボーイカラー向けソフトなども多数扱っているようだ。
64版の完成度が高かったのと移植屋だからあまりいじれなかったというところもあるのだろうが、ブルーストームは64版とシステム的にはあまり変わりない。ブイを正しい方向に避けながらコースを3周する。ポイント制のチャンピオンシップがあり、タイムアタック、スタントを駆使してリングをくぐるスコアアタックがある。キャラクターも64版のキャラの流用と「1080°スノーボーディング」からのゲストキャラなどで構成される。練習用のコースはドルフィンパークで、周回ごとに水位が変異するサザンアイランドがある。64版との共通点はあまりにも多い。
しかし、64版と全く同じというわけではない。もちろんほとんどのコースは全然違うし、グラフィックも2段階ぐらい上をいっている。さらに最も重要な変更点は2つあり、「天候」と「ターボ」の導入である。チャンピオンシップモードではほぼランダムでその日の天候が決定され、その天候でどのコースを選ぶか決定することが出来る。64版でのチャンピオンシップモードが1コース目から順番にクリアするだけだったのと比べると戦略的に考える必要があり、天候によってダイナミックに変化するコースは非常に面白い。得意なコースも天候次第では難コースに変わってしまうし、邪魔な障害物が雨による増水で水没して走りやすくなったりもする。クラスによって変わるブイの位置と天候と合わせると何通りもの状況を楽しむことが出来る。
ターボはパワーメーターを消費することによって発動する。パワーメーターはブイを正確に通過することによって蓄積され、パワーメーターが上がっていくに従って最高速度などのマシン性能も向上する。64版ではわざとショートカットでブイを無視したりしない限りはパワーメーターを意識することはなく、ブイを無視したときのペナルティとしてパワーが減少する程度の位置づけだった。ターボの導入によりパワーメーターの増減が激しくなるため、新たにスタントを行うことでもパワーメーターが増えるようになった。一瞬の加速のためにパワーメーターを犠牲にするのか、それともマシン性能を持続させるのか、さらには危険を冒してスタントをすることでターボのチャンスを増やすかどうかなどレースの組み立て方がより一層複雑になった。スコアアタック以外ではアピール以外の意味がなかったスタントに必然性を持たせたのは非常に良いアレンジだと言えるだろう。
このゲームのメインのモードはチャンピオンシップモードなのだが、これが結構難しい。ノーマル、ハード、エキスパートと難易度がありノーマルはそれほどでもないのだが、難易度が高くなるにつれてブイの配置が意地悪になるし他のライダーもスピードが速くなる。1度ミスをしただけで7人に一気に抜き去られることもしばしばある。さらに、クリアすべきコース数も難易度ごとに1つずつ増えてきてそのコースが難しい。天候とコースの組み合わせをよく考えて、不得意なところで順位が伸びなくても他で補えるようにポイントを出来るだけ稼ぐなど工夫が必要になってくる。その分、タイムアタックモードでショートカットできる場所などを見つけて1位でフィニッシュできるようになると非常に気持ちが良い。
水上バイクのシミュレーターではなくあくまでゲームとしての気持ちよさを追求しておりプレイ中は爽快感抜群なのだが、難点もある。メニューなどでのレスポンスの悪さ、インターフェイスの不親切さ、読み込み時間の長さなどがその爽快感をそぎ落としている。ゲームを始める前に決定する項目が多いのに1つ1つの項目を選ぶたびに無駄なエフェクトがかかって、次の項目に移るのに時間がかかるのは明らかに欠点だし、それぞれのマシンのカスタム仕様をセーブデータとして記憶してくれないのも不親切だ。読み込み時間に関しては一般的な光ディスクのゲームと比較して長すぎるわけでもなく、コースの地形データを全てメモリ上に展開しないといけないのでこれ以上短縮できないのだと思うが、ルイージマンションと比較すると長すぎる。
このゲームの最たる欠点をあげるとしたら1080°からのゲストキャラである速水あかりの声がアメリカンな感じになってしまったことだろう。俺のあかりを返せ。
スーパーモンキーボール
発売元 | セガ | 開発元 | アミューズメントビジョン |
価格 | 5800円 | 使用メモリーカード容量 | 3ブロック以上 |
発売日 | 2001年9月14日 | ジャンル | ボールプレイングゲーム |
このソフトはアーケードからの移植タイトルであり、セガの任天堂据え置きハード初のタイトルであり、ゲームキューブ初のサードパーティー製ソフトである。アーケードでのタイトルは「モンキーボール」であり、家庭用に移植するにあたって様々な付加要素が加えられて「スーパーモンキーボール」と名前が変わった。とは言っても、メインゲームの内容はほとんどアーケード版と変わらず、微妙な調整やグラフィック関係の強化のみが行われたようだ。アーケード版でこのソフトが最も特徴的だったのはその筐体にある。普通、アーケードのゲームでは1つのスティックと6つまでのボタン、スタートボタンなどが用意されているのだが、モンキーボールはスティックとスタートボタンのみという非常に単純化されたインターフェイスのゲームである。そのスティックも非常に目を引くバナナ型でゲーム内容もそのスティックのみでプレイできる非常に単純になっている。
様々なゲームが世の中に出るようになって、差別化を図るために色んな要素を詰め込んでいった結果、必要以上に複雑になってしまったゲームは少なくない。その中でスティックのみでプレイできるこのゲームは時代に逆行しているように見えるが、操作体系が単純であることはゲーム内容が単純であるという意味ではない。基本的にスティックでステージを傾けて落下させないように猿の入ったボールをゴールゲートまで連れて行くという内容なのだが、そのステージが実に多彩で後半のステージになるとどうやってクリアして良いのか分からないレベルにまで達する。クリアできることは分かっているし、操作体系が単純だから否応なしに何度も挑戦してクリアしようと繰り返し遊んでしまう。要するにはまっちゃうのだ。猿のように。
先ほど書いたように家庭用に移植されるに伴って変更されたのは、メインゲームのグラフィック強化とおまけの付加である。これでもかと言わんばかりに大量に詰め込まれている。おまけは大きく二つに大別され、最初からプレイできるパーティーゲームと、本編を繰り返し遊ぶことによって集まるポイントを使ってプレイ可能になるミニゲームがある。
ボリュームは盛りだくさんなのだが、所詮おまけ程度という印象がぬぐえない。どれもこれも悪くない出来なのだが、すごく良いと思えるほどのレベルではない。メインゲームと比較するとやる気のなさが明らかに伝わってくる。おまけでお茶を濁すよりもメインゲームをより一層充実させた方がよっぽど面白かったと思うのだが。色々調べてみると、一応上級コースを一定条件でクリアするとゲームキューブ版オリジナルコースがいくつか出るようだが、上級は難易度が高いのでそれを出すのはかなりの難関だ。初級、中級、上級、オリジナルといった感じに新コースが入っていたらどれだけうれしかったことか。
このレビューを書いている段階で発売されたゲームキューブソフトはこのページにある4本。つまり任天堂製3本にサードパーティー製1本である。このようにソフトを二つに区分けしたときに明らかに異なる点がある。リセットボタンを押したときの挙動である。最初にソフトを入れて電源を入れるとゲームキューブロゴが生成されたあとにそれぞれのソフトのタイトル画面に移行するのは両方とも同じ。任天堂製ソフトでプレイ中にリセットボタンを押すと、すぐにタイトルロゴに戻る。しかし、スーパーモンキーボールの場合はゲームキューブロゴまで戻ってしまうのだ。それにタイトル画面が出るまでに結構ロード時間があるのでストレスがたまる。
またセーブデータの取り扱いに関しても若干の違いがある。任天堂のソフトだと1つのセーブファイルが自動的に生成されて、それはソフト側から見ると内部で3つに分かれておりそれぞれ別のデータを保管できる。さらに、それらを総括するデータも存在するようで、クリアデータなどはそこに格納されるようだ。ゲームキューブのシステム画面から見るとそれらはまとめられて1本のソフトで1つのデータとして認識される。1つのメモリーカードで3つのファイルに限定されることは1つしか必要のない時には領域の無駄遣いになるし、4人以上でソフトを共有したければ別のカードが必要になると言う問題もあるが、取り扱いはROMカセットのセーブファイル並みに楽である。一方でスーパーモンキーボールはセーブファイルの数に制限はなく、リプレイデータファイルも別ファイルなので容量の許す限りいくらでもセーブデータが作れる。しかし、妙な仕様があってセーブ時にセーブに用いる3ブロック以外に、3ブロックの空き容量が必要なのである。データの予備を作っているのかよく分からないが、不親切に思える。また、説明書にも記述されていることだがセーブファイルを複数作ると上書きしてしまう危険性がある。
任天堂と他社でどうしてこのような差が生じるのか。今後発売されるソフトは良いとこ取りの仕様にして欲しいものだ。
ピクミン
発売元 | 任天堂 | 開発元 | 任天堂情報開発部 |
価格 | 6800円 | 使用メモリーカード容量 | 19ブロック |
発売日 | 2001年10月26日 | ジャンル | AIアクション |
このソフトに関して発表当時から色々情報を集めていたが、どんなゲームかサッパリ分からないし事前にプレイした記者の記事を読んでも面白さが伝わってこない。スペースワールドで初めて体験版に触れてやっとその面白さの片鱗に触れることが出来たが、これを他人に伝えようと思うとどう説明していいのかよく分からない。発売後、どっぷりとその世界に浸かって満喫したあとでも「ピクミンは面白いよ」としか言いようがない。実際、雑誌に掲載されたレビューなどを読んでも「なんか違うなあ」と思ってしまう。
何故そういうことになるのかというと、人が何かを伝えるときに一番わかりやすいのは良く知られている別の物と比較する方法だからだと思う。ピクミンはまったくの新しいゲームだ。だから「このソフトのこの部分とあのソフトのあの要素を組み合わせてグラフィックを綺麗にしたゲームだよ」なんていう安直なレビューを書くことが出来ないのだ。自分の文章作成能力でこのゲームの内容を面白さが伝わるように正確に記述するのは不可能なので単純に感じ取ったことを書いていこうと思う。
電源を入れる、ゲームをスタートさせる、ゲーム内容はわりと単純、一日が終わってセーブする。それの繰り返しなのだが非常に心地よい。いつの間にか感情移入してミスをすると思わず声を挙げ、うまくいくとガッツポーズが出る。最近、ゲーム機の性能が向上してゲームがリアルになったといわれる。一般にゲームがリアルというと我々の住むこの社会で見られる現象や風景に類似している、あるいは区別が付きにくいレベルに達していることを意味する。そういう意味ではピクミンは全然リアルじゃない。我々の社会と全く別の理で成り立つ全くの別世界だからだ。しかし、プレイしていると全く違和感を感じない。これもまた「リアル」なのではないだろうか。オリマーやピクミン達が冒険する世界は完全に無矛盾に構築されておりそこで全てが完結しているように感じられる。ピクミンの世界はあの8cmディスク内に全て格納され、それ以上でも以下でもない。それが全てだ。
とにかくピクミンはすごいゲームなのだ。他のエンターテインメントと比べてテレビゲームは歴史が浅いが、数々のクリエイターが自らが新しいと思う分野をどんどんと広げていき、最近は広がる方向を失い閉塞感を感じるようになってきた。もう新しい分野は構築できないんじゃないだろうか、既存の分野を高めるか組み合わせるしかないんじゃないか、そう思っていたときにピクミンが登場した。これで安心した。なんだ、まだまだゲームも捨てたもんじゃないなと。
このようにしてどっぷりとピクミンの世界に没頭すると知らず知らずのうちに洗脳されていくように思える。プレイ中はBGMはあくまで環境音楽のようにささやかに流れて印象に残らないのだが、効果音が非常に秀逸だ。敵にやられたりおぼれたりしてピクミンが死んでしまうときの断末魔、地面からピクミンを引き抜くときの音、オリマーがピクミンを投げるときの声、隊列を動かすときのマーチ。その全てが脳にインプットされてゲームをしていないときでもその音が聞こえるような気がしてくる。
外を歩いているときに道ばたに落ちている小さな石、路肩に生える雑草、小さく可愛らしい花、転がっているビン、そんなものが気になってしょうがなくなる。あの雑草を引き抜いたらピクミンになって付いてきてくれるだろうか。そんな白昼夢を見ている気分になる。
そして今夜もオリマーになって見知らぬ星でピクミンたちと冒険する。
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