2007年07月27日

レビュー:「燃えろ!熱血リズム魂 押忍!闘え!応援団2」


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タイトル画面タイトル:燃えろ!熱血リズム魂 押忍!闘え!応援団2
発売:任天堂
開発:iNiS
発売日:2007年5月17日
価格:4,800円

「押忍!闘え!応援団2」ではなく「燃えろ!熱血リズム魂」

前作「押忍!闘え!応援団(おす!たたかえ!おうえんだん)」は2005年7月28日に発売されたニンテンドーDS用リズムアクションゲームで、開発はiNiS(イニス)が行っている。最終的な売り上げは5万本程度と見られており、ネット上での熱狂的な支持と比較すると驚くほど低い売り上げとなっている。普及の妨げとなったのは、続編ではないこと、発売当時は現在ほどニンテンドーDSの勢いがなかったこと、キャラクタデザインが万人受けするものではなかったことなど、ファンの間で複数の要因が挙げられていた。どの要因も、確かにそうだと納得できるものであるが、一番の要因はこのゲームのコンセプトがうまく伝わっていなかったことにある。

今作では、その反省を踏まえてか、評価の割に結果を出せなかった前作の続編であることよりも、ゲーム内容を前面に押し出したタイトル「燃えろ!熱血リズム魂」をメインとし、「押忍!闘え!応援団2」をサブタイトル扱いとしている。パッケージやタイトル画面では応援団ロゴよりも「燃えろ!熱血リズム魂」が大きく描かれている。

この応援団シリーズは、国内のみで発売された2作品のほかに、国内未発売の海外用タイトル「Elite Beat Agents」があり、現在3作品リリースされている。多少改善された部分はあるが、基本的に同じシステム。今作を十分に楽しんだ後は、Elite Beat Agentsに手を出してみるのもいいだろう。メッセージは英語だが、まったく読めなくてもプレイに支障はない。収録されている楽曲も洋楽の有名な楽曲ばかり。詳しくは後述するが、第1作である「押忍!闘え!応援団」はシステム面での不備がありプレイ時にストレスがたまりやすいので、あまりお勧めはできない。こちらを買うぐらいならElite Beat Agentsのほうがオススメ。輸入品になるので若干高く付くが。Elite Beat Agentsについては以前書いたレビューがあるので今回のレビューとあわせて目を通していただきたい。

ゲーム内容
このゲームのシステムは非常にシンプル。タッチスクリーンに小さな丸(ヒットマーカー)をタイミングよくタッチするだけ。ヒットマーカーが画面に出現すると同時にマーカーを囲う円が表示され、その円が次第に小さくなりヒットマーカーと重なる瞬間にタッチすればいい。ヒットマーカーのほかに、動くボールをペンのスライド操作で追いかけるフレーズマーカー、ひたすらペンで円を描くロールマーカーがある。これらのマーカーの配置や出現タイミングには一切ランダム性はなく、ボーカル付きのBGMのリズムに合わせてマーカーをタッチできるようになっている。さらに3作品とも、親切なチュートリアルステージが用意されており、ほんの数分でゲームシステムを理解できるようになっているので、操作法でとまどうことはないだろう。

このシリーズは、ゲームにランダム性がなく、音楽に合わせてタイミングよく操作するという特徴を持ち、ビートマニアや太鼓の達人といったソフトに代表される「音楽シミュレーションゲーム」というジャンルに当てはまる。旧来の音楽シミュレーションゲームとはいくつかの点で隔たりがあるのだが、それについては後述する。

今回の収録楽曲は下記の通り。VISTAとサムライブルーのみ本人歌唱となっている。

曲名 アーティスト
全力少年 スキマスイッチ
リルラ リルハ 木村カエラ
贈る言葉 海援隊/FLOW
POP STAR 平井堅
Go my way 矢井田瞳
ジュリアに傷心 チェッカーズ
VISTA GOING UNDER GROUND
少年ハート HOME MADE 家族
気分上々↑↑ mihimaru GT
バンビーナ 布袋寅泰
BANG! BANG! バカンス SMAP
Believe AI
氣志團
ミュージック・アワー ポルノグラフィティ
COUNTDOWN HYDE
世界はそれを愛と呼ぶんだぜ サンボマスター
MONKEY MAGIC ゴダイゴ/ORANGE RANGE
GLAMOROUS SKY NANA starring MIKA NAKASHIMA
サムライブルー ZZ
ちなみに前作とEBAの収録楽曲は以下のとおり

押忍! 闘え! 応援団(15曲)

曲名
アーティスト
ループ&ループ
ASIAN KUNG-FU GENERATION
恋のダンスサイト
モーニング娘。
ガッツだぜ!!
ウルフルズ
メロディー
175R
リンダ リンダ
THE BLUE HEARTS
ココロオドル
nobodyknows+
熱き鼓動の果て
B'z
スリル
布袋寅泰
大切なもの
ロードオブメジャー
狙いうち
山本リンダ
One Night Carnival
氣志團
Over The Distance
矢井田瞳
太陽が燃えている
THE YELLOW MONKEY
上海ハニー
ORANGE RANGE
READY STEADY GO
L'Arc~en~Ciel

Elite Beat Agents(19曲)

曲名
アーティスト
Walkie Talkie Man
Steriogram
Makes No Difference
Sum 41
Sk8er Boi
Avril Lavigne
I Was Born to Love You Freddie
Mercury/Queen
Rock This Town
Stray Cats
Highway Star
Deep Purple
Y.M.C.A.
Village People
September
Earth, Wind and Fire
Canned Heat
Jamiroquai
Material Girl
Madonna
La La
Ashlee Simpson
You're the Inspiration
Chicago
Let's Dance
David Bowie
The Anthem
Good Charlotte
Without a Fight
Hoobastank
Jumpin' Jack Flash
The Rolling Stones
Believe
Cher
ABC
Jackson Five
Survivor
Destiny's Child


前作からの進化

当然のごとく、作品ごとに収録楽曲が違うのだが、それ以外の進歩もある。
一番の変更点は、前奏がスキップできるようになったこと。第一作のラストステージ「READY STEADY GO」は一番最初のマーカーが出てくるまでの前奏が30秒ほどある。最終面で非常に難度が高いので、何度も何度も繰り返しプレイする必要があるが、この前奏にものすごくイライラしてしまう。ここで前奏スキップが役に立つ。すぐに最初のマーカーの直前まで早送りが出来る。この前奏スキップはElite Beat Agentsの時点で追加された機能だが、応援団2では一度クリアしたステージで、最終マーカーが終わった後の演奏がスキップできるようになった。これで繰り返しプレイしてスコアアタックをするのが楽になった。

自分のプレイ内容(リプレイ)が保存できるようになったことも大きい。フルコンボを決めたり高得点を取ったプレイをあとでじっくり眺めることができる。リプレイ保存はElite Beat Agentsで実装されたが、1曲1リプレイの縛りがあった。応援団2では同じ曲も複数保存できるようになり、全体で20件保存できる。

ouendan2_02.jpg

他にも振動カートリッジに対応したり、対戦モードが充実したりと細かく相違点はあるが、基本的には第1作から何も変わっていない。それは、第1作の完成度が高く、すでにシリーズ作品としてのテンプレート化されていることを意味する。それが良いことか悪いことかの判断は置いといて、テンプレート化されているのであれば、「Elite Beat Agents2」や「押忍!闘え!応援団3」が発売されることを期待しても良いだろう。

絶妙な難易度曲線

3作品とも共通することだが、最初のほうのステージはマーカーの数が非常に少なく、難度が低く設定されている。リズムアクションなのだが、曲の拍にあわせて耳でタイミングを合わせるのではなく、マーカーを見て目でタイミングを合わせる必要があり、逆に難しく感じてしまう。少し触っただけだと、このあたりで詰まってしまい、あまり面白くないゲームに見られてしまうかもしれない。

だが、ある程度先に進むと、8分音符、16分音符のタイミングでマーカーが出現し、出現した順番と配置だけ見れば、耳で取ったリズムできれいにタッチできるようになる。このあたりになってくると、だんだんと楽しさが理解できるようになってくるのではないだろうか。何曲かクリアいくうちに、さくさくとクリア出来るようになり、初めて見る曲でもある程度はこなせるようになる。

しかし、後半になってくるといわゆる裏拍でタイミングを外されたり、恐ろしい量の連打が続いたりして恐ろしく難易度が高くなっていく。しかし、前述のように、前奏スキップなどの配慮があるため、繰り返しプレイが容易なので、何度でも挑戦できる。少しずつ先に進められるようになり、無理だと思われた曲も突然すんなりとクリアできてしまう。その時の達成感が非常に高く、心地よい。高ければ高い壁の方が登ったとき気持ちいいもんだ。

始めたばかりではリズムが取りづらく、楽しさを味わいにくい。この特徴は音楽シミュレーションゲーム、通称「音ゲー」に共通しており、音ゲーは敷居が高いと言われることが多い。その敷居を取り除くための工夫がこのシリーズにはいろいろと用意されている。

シリーズ3作品"家庭用"の音ゲーとして

音ゲーはビートマニアがアーケードに登場してから広まり始めたもので、基本はアーケード主体のジャンルだ。ビートマニアでは鍵盤とターンテーブル、ギターフリークスではギター、ドラムマニアではドラムセットと、専用の筐体が用意され、インタフェイスの独自性がゲームの独自性を生んでいる。そのため、家庭用では専用コントローラでなんとか対応するしかない状況となっている。また、家庭用ハード独自の音ゲーにヒット作は少ない。

それらの既存の音ゲーに対して、応援団シリーズには、家庭用ならではの音ゲーのあり方を模索した様子が見て取れる。まず、ニンテンドーDSというプラットホームに最適化したこと。DSの下画面は操作インタフェイスであるのと同時に表示デバイスでもある。タッチする対象を液晶画面に置くことで、多様性を持たせるのと同時に直感的に捜査できるようになった。画面に出たマーカーをタイミングよくタッチするだけだが、マーカーの位置は2次元平面上に自由に配置できる。時間軸と押すボタンの種類という2軸しか持たなかった過去の音ゲーが2次元だとすると、応援団シリーズは時間軸と二次元平面、つまり、3次元の音ゲーに進化したと言える。

また、アーケードゲームは基本的に100円なり200円なりを投入して10分程度遊べる「時間貸し」のシステムであるがゆえに、ほとんどの楽曲の曲を無条件にいつでも自由に遊べるように作られている。これはゲームよりもカラオケに近い。どう楽しむのかはプレイヤに大きくゆだねられる。それに対し、応援団シリーズでは、いたるところに制約を用意している。最初は選べるステージが少ないし、最高難易度は選択できない。

制約があることはデメリットに感じられることもあるが、いきなり全部遊べるというのも考えもので、どこから手を付けて良いものかさっぱり分からなくなる。以前レビューで書いたが、もじぴったんDSがちょうどそんな感じ。初っぱなから390ステージが選べるという大盤振る舞いで、もてあます感じがあった。応援団シリーズでの制約は比較的厳しく、出現した曲をすべてクリアしないと次の曲が選べず、それも2,3曲程度ずつオープンされていくシステムとなっている。苦手な曲も必ずクリアしないといけないので、もどかしくも感じるが、最終ステージ付近の難度の急上昇を考えると、苦手なパターンも余すところなく練習できることで、最終的にはクリアしやすくなっているのではないだろうか。忍者が日々伸びていく麻を飛び越えていくようなもんか。

ouendan2_03.jpgストーリが鍵

応援団シリーズにはストーリが存在している。1曲1曲が1エピソードとなり、それらが緩やかに繋がって、全体の物語を形作っている。これはアーケードゲームでは見られない特徴であり、このシリーズが高い評価を受けている要因の一つともなっている。このストーリは家庭用ゲームとしての商品価値、キャラクタ性を高めるための存在であると同時に、前述の制約を持たせるための理由付けにもなっている。最終ステージに挑戦するには、隠しステージ以外のすべてのエピソードを見なくてはいけない。また、1曲のプレイ中にもストーリの一部がカットインされ、没入感を高めると同時に、指先を休めることが出来る。アーケードと違い、連続プレイの出来る家庭用ゲーム機でこの配慮はうれしい。

さて、この応援団シリーズ、なぜプレイヤは「応援団」の一員なのだろうか?
1曲ごとに用意された個々のエピソードの中で、登場人物は苦境に立たされ、「おうえんだーん!」と叫ぶ。プレイヤはペンを振るい演舞を行うことで、登場人物を陰ながら応援する。画面の中で行われているエピソードと応援団の接点は希薄だ。また、プレイヤもペン先とタッチスクリーンのわずかな接点でしか介入できない。応援に失敗すれば、登場人物は目的が達成できず、倒れ込んでしまう。それはちょうど、高校野球の応援団が、自分たちの応援したチームの敗北を見るとの同じ感覚を味わうことになる。応援する以外何も出来ないというもどかしさと、もっとしっかり応援できていれば…という悔しさだ。途中でミスをした時のもどかしさ、悔しさを応援団のイメージとダブらせることで巧みに表現しているのではないだろうか。

感動を呼ぶ音ゲー

このシリーズをプレイした人によく見られるが「感動した」という感想。音ゲーで、感動?たしかに苦境を克服するストーリは、よく描けていれば感動もするだろう。しかし、描かれているストーリは使い古された陳腐なものばかり。同じストーリを別のメディアで披露したら小馬鹿にされるレベルのシロモノだろう。

しかし、実際、自分自身3作品をプレイして感動した。「ジーンときた」というよりも「ガツンときた」感じだ。率直に表現すると「えー、そうくるのかよ!マジかよ!すげえ!」といった感じだ。何を言ってるか分からないと思うが、私自身も何があったのか分からなかった。お涙ちょうだいの話だとか大ドンデン返しなんてチャチなものじゃ断じてない、もっと恐ろしいものの片鱗を味わった気分だ。

冷静に振り返ると、忙しいプレイ時に複雑なストーリが頭にはいるわけがなく、シンプルで陳腐なお話のほうが心に響くのだろうと推測できる。そして、プレイ時に感じる難度の壁、繰り返しプレイすることでのいらだちなど、様々な感情が登場人物ととけ込み、同化してしまう。最終的に、達成感から異常な感情の高揚が起こると同時に、視覚情報としてチープなストーリがハッピーエンドを迎える。はっきり言えば錯覚。吊り橋効果といえよう。しかし、これはやってみたものしか分からない感情だと思う。なんせ、上画面に出てくるストーリの部分ではなく、タッチスクリーンに表示されるマーカーの配置だけで感動してしまうのだから。大げさに書いていると思われるかもしれないが、本当だ。第1作の「Over The Distance」が特に秀逸。最後のロールマーカーには誰しも心臓を打ち抜かれるはずだ。


少しでも興味を持ったのなら、まずは応援団2を手にして欲しい。クリアして物足りないと感じたら、次はElite Beat Agentsを、完全にはまりこんだのなら第一作にも手を伸ばして、その次は多くの応援団ファンと一緒に次の作品が出るのを待って欲しい。


燃えろ!熱血リズム魂 押忍! 闘え! 応援団2燃えろ!熱血リズム魂 押忍! 闘え! 応援団2
発売日:2007/05/17
発売元:任天堂
定価:¥4,800
価格:¥3,970(17%OFF)


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コメント

確かにOver The Distanceはジーンときましたねw

最終面後編のオープニング演出見ながらタイトル変更したヤツ猛省しろ!!と。
んなコト考えてました。

で、下請けの弱みで『だが断る』できないiNiSの必死の抵抗に感じたワケです。
それこそロボステージの百マス計算やJINJINなんかも、
「脳トレてwタチジェネてw」とかに感じました。

ゲーム自体は文句なく面白いのに(今作からの短いフレーズマーカー連発がまた脳汁あふれさせるワケでして)。

ヌルい動画広告うつぐらいなら、いっそ宣伝媒体は書き下ろしマンガにしてほしーです。

心臓を打ち抜かれたのは、フレーズマーカーの間違いでは?

私は最近DSステーションでオマケ要素をダウンロードしてきました。
「Elite Beat Agents」のキャラが応援団の振り付けで踊っているのには違和感を感じましたw

 タイトルが変わっているのに最終面でああ言ってくれるから燃えるんじゃないですかー
 Over The Distanceはプレイ前の漫画ですでに泣いていたんですが…

BANG! BANG! バカンスがある意味一番衝撃的だった。
とくに原曲聞いたら・・・

確かに抑えられない感情の盛り上がりがこのゲームの醍醐味ですね。音ゲーでストーリーを付けてここまで感動できる作品を作り上げたのはある意味革命的だと思います。


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