2007年04月02日

レビュー:「くるくるトンズラン」


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タイトル:くるくるトンズラン
開発:任天堂ゲームセミナー2006(Bチーム)
配布期間:2007年3月22日~4月4日
価格:無料

前回レビューした「あっというまに?えかきうた」に続く、2006年度生徒作品第2弾。

このゲームは…なんというか、どうにもコメントしづらい出来の作品だ。
対価を支払って購入するソフトではなく、無料で配信される作品であること、プロではなくセミナー参加者が実習として作成した作品であることを差し引いても、出来の良い作品とは言えない。

ゲームの内容は、タッチペンでぐるぐると円を描くことにより鉄球を振り回して上へ上へと進んでいくという単純なものだが、様々な味付けがなされている。

ゲームの根幹を成す、ぐるぐると円を描き続けるというシステム、それを補うための味付け、その両方が明らかにユーザーを楽しませるために作用していない。



※スクリーンショットはシャッタースピードが遅すぎたため、ブレています。

主人公を囲むように円を描き続けることで、主人公は加速する。また、円を描くことで鉄球が主人公の周りを旋回し、敵を蹴散らすことが出来る。ゲームの最終目的は画面右側のバー一番上で示されているゴールに到達すること。ゲームオーバー条件は、同じく右側のバーに表示される追っ手に追いつかれることである。

プレイヤーは常に秒間何回転もの早い速度でペンをまわし続けなくてはならない。クリアするか、ゲームオーバーになるまで、ずっとである。このゲームは3ステージ構成だが、3ステージクリアには、実に10分近くの時間を要する。その間、ずっとペンで円を描き続けることを強いるゲームシステム。これはどう考えてもおかしい。下手すれば手首を痛める。

ステージは一本道だが、途中には障害物もある。主人公を左右に動かして回避する場面もあるのだが、描く円の中心に主人公が移動するという性質を利用して動かさないといけない。要するに、画面の右側で円を描くか、左側で円を描くかで移動させるわけだ。画面端まで移動させようとすると、ペンが画面の端に引っかかり上手く操作できない。非常にストレスを感じる。

ゲーム中はずっと円を描き続けなくてはいけないかというと、必ずしもそうではなく、ペンを画面から話すことで前方に鉄球を飛ばして攻撃することが可能だ。しかし、その1,2秒後には再び円を描く運動に戻らないと速度が落ちてしまう。

そのほか、高速で前に進めるダッシュプレートがある。これはあらかじめステージ内に設置されているものと、前方鉄球を飛ばしたときに一度に5体以上の雑魚敵を倒したときに出現するものがある。

また、主人公を妨害する雑魚キャラと接触すると、主人公は足止めされ、通常以上にペンを激しく動かして円を描いて脱出する必要がある。左側の速度ゲージは、このとき0に戻る。

ステージの途中にボスキャラが出現するが、これがまずい。

ボスキャラは一定時間おきに、多数の雑魚キャラを画面に出す。鉄球を主人公の周りで回転させ続けていればほぼ無敵状態で雑魚に掴まることはないが、ボスを倒すためには鉄球を前方に飛ばす必要がある。その間、雑魚と接触すると前述のように足止めを食らってしまう。

道中であれば、特に問題にはならない。すぐに再加速すれば良いだけだ。だが、ボス戦で足止めを食らうと、その間もボスが雑魚敵を放出し続ける。放出間隔が主人公の移動距離ではなく、経過時間に依存しているため、足止めされる時間が長ければ長いほど、画面中が雑魚で埋め尽くされる。足止めを食らった直後は、急いで鉄球を回しても十分な速度が出ず、画面を埋め尽くした雑魚に再び掴まることもしばしばある。

科学用語に「負のフィードバック」というものがある。「負のフィードバック」は、何らかの変化が起きたときに、それを打ち消す方向に働く力が出てくることを指し示す。例えば、体温が低下したときに体が震えそれによって、発熱が起こり体温が正常に近づくような効果がそれだ。

良心的なアクションゲームでは、プレイヤーが窮地に陥ったときに、負のフィードバックが起こるようにデザインされている。いわゆる、救済措置というものだ。敵と接触後、一定時間プレイヤーが無敵になるのがその良い例といえる。

このゲームのデザインはその逆、「正のフィードバック」が目立つ。ミスをすればするほど、窮地に陥り、八方ふさがりになる。理不尽なリスクを負わされてもストレスが溜まるだけで、面白みがない。

そうなってくると、プレイヤーはどういう行動に出るか。なるべくリスクを負わないよう、常に主人公の周りで円を描き続けて前方に鉄球を飛ばさなくなる。こうなってしまうと、もはやゲームですらない。丸を描き続けるだけ。これでは、ただの作業ではないか。

「あっというまに?えかきうた」もゲーム内容についてはそれほど高く評価はしなかったが、ユーザビリティ(=使いやすさ)が非常に高く、チューニングに長い時間を掛けているように感じた。ところが、今作ではそれすら感じられない。コンティニューがなく、ミスをした場合は最初のチュートリアルから再開する必要がある。ソフトウェアリセットもない。クリア後にハードモードが遊べるが、そちらでもチュートリアルがついたままだ。

かなり酷評になってしまったが、実際にこのゲームに触れた人の多くが似たような感想を持つのではないだろうか。開発チームには、この失敗をバネにしてほしい。


3ステージをクリアすると結果が表示される。ウマ級もあった。

最後にスタッフ紹介
このスタッフロール、文字を鉄球で破壊できる仕掛けがある。

プログラム
 アオキ タカシ
 キタガワ ユウキ
 サトウ シンタロウ
 タチバナ ケイ
デザイン
 イベ マナ
 オカザキ タツロウ
 サカタ サトミ
 ナカモリ レイナ

サウンド
 キタガワ ユウキ
 アオキ マサヒロ
 アサヒ アツコ
 オカモト サヤカ
サブディレクター
 オカザキ タツロウ
ディレクター
 サトウ シンタロウ

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コメント

タイトルで利き腕を決められるとは
親切設定ですね

僕もこのゲームを何度かプレイしましたが、やはりボスキャラの所は倒すのと出てくる雑魚の排除に手こずりました。

やはりあの部分にはマリオみたいな無敵モードなどが無いと初心者などには難しいと恩います。


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